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勇者の称号を剥奪された最強の元勇者、今は便利屋を開業し平和に暮らしたい。~押しかけ弟子のせいで平和には暮らせないようです~  作者: 暁輝
【06】春の微笑み

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【06】みょ、妙な声を上げるなよ【03】


◆ ◆ ◆


 ハルルが熱を出したのが、昨日。

 その日の夕方に、医療術師の婆ちゃんに来てもらってハルルを診てもらった。

 一応、変な病気じゃないか、確認する為だ。


『うん。普通の風邪だね。薬、飲んでしっかり寝れば大丈夫だね』

 とのことで、普通の風邪でした。

 解熱薬と風邪薬を貰い、飲ませた。

 やはり、薬というものは効くようで、


 で、今。日も傾き始めた夕方。

 買い物も終えて、部屋でゆっくり本を読んでいる最中、ハルルはぱちりと目を醒ました。


「ちょっと元気になったッス」


「昨日は、もう死ぬッス、今までありがとうございました、なんて言っていた奴とは思えないな」

「し、ししょぉ」


 まぁ、言葉の末尾に『!』(はき)が無いから、元気は無いんだろうな。

 昨日よりかは、随分、元気になった。


「何か、食べるか飲むか?」

「んぅ。まだ食欲はそんなに。あ、でも、甘い物が欲しいッス」

「はいはい……じゃあ、ミルクでも温めようかね」

「えへへ。ありがとうございます」


 キッチンへ行く。冷蔵庫を開ける。

 一人用の冷蔵庫に食材が詰められている。

 もう少し大きい冷蔵庫にしないと、二人分の食材は入らなさそうだな……。


 それに、冷蔵庫の奥がちょっと生ぬるい。

 詰め込みすぎて食材を冷蔵する氷魔法の許容限界なのかもしれない。

 いや、単純に寿命か?


 などと考えながら、冷蔵庫から瓶のミルクを取り出す。

 小鍋にミルクを入れ、火をくべ、木べらで少し混ぜながら、温めていく。


 熱すぎてもすぐ飲めないだろうから、人肌より熱い程度がいいな。

 ……まぁ、これくらいか?


 適当に火を止め、マグカップに移す。

 それから、蜂蜜を、一匙、いや、二匙ほど入れて、スプーンで混ぜる。


 よし。出来た。蜂蜜入りホットミルク。寒い冬とかはよくこれを飲む。

 風邪引いた時も、こういうのが良いだろう。多分。


「凄く美味しそうな匂いッス……。あ、ありがとうございまス!」

 上半身を起こして、ハルルはマグカップを両手で持った。

 こくこく、と少し飲む。

「優しい味ッス……」


「それはよかった」

「蜂蜜入り、って珍しいッスよね」

「そうか? 割とよく飲むけどな」

「あ、我が家だと、ジンジャー入れるッスよ。ホットミルクに」

「そっちの方がレアだと思うけどな」

「美味しいんスよー?」

「よし、やってみるか。確か、ジンジャー、まだ冷蔵庫にあったような」


 立ち上がり、冷蔵庫を物色する。

「確か買い置きの野菜たちの一番下に?」

「ああ。いたいた。あったわ」


「あ、そうッス。それなら、蜂蜜とジンジャーを合わせたら美味しいんじゃないか?」

「確かに、合いそうだな」


 一応、今日の買い出しでミルクを多めに買っておいてよかった。

 風邪引いたらホットミルクだしな。


 小鍋にミルクを入れ、火にくべる。木べらで混ぜる。

 沸騰しない程度で。これくらいかな。

 ジンジャーを細かく刻んで、ミルクへ入れる。

 蜂蜜も、二匙。


「出来たぞ。ホットミルク、蜂蜜ジンジャー」

「凄い、売れそうな名前ッス」

「俺たちが知らないだけで、既に商品化されてそうだけどな」

「確かにそうッスね」


「まぁ……美味しければ、だが」

 ごくり、と二人で顔を見合わせる。

 いざ、実食、ならぬ実飲。


「……」

「……」


 思ったより。いや、想像以上の。


「圧倒的ジンジャー味……。ちょっとジンジャーのパンチ力、高いな」


「そッスね。この少量でこの火力……今の半分以下でよかったんスかね」

「分かった。作ってくる」

「あ、師匠、飲み切れてないんで、まだ平気ッス」

「ああ、そうだな。悪い悪い」

「えへへ……でも、なんか師匠を顎で使って、申し訳ないッス」


「ん? 気にするなよ。お前が病気の時くらい、何でもしてやるよ。だから安心して無茶ぶりしてくれよな」


 ハルルの頭を撫でていた。


 そういえば。二人でいる時は、ずっと喋っていられる気がする。

 俺は、本来はそんなに喋れる性質ではないが。

 ……ん? ハルルの顔が赤い。


「大丈夫か? 急に食べたから具合、変か?」

「い、いえ。全然平気ッス。その……師匠の、そういう、笑顔、初めて見た気がして」


 ん? 俺の笑顔? そういう笑顔ってなんだ?

 あれ。俺、笑ったのか?


「お前と居る時は、なんか自然に笑ってることが多くなったな」


「そ、そうなんスか?」


「ああ。いつも、ありがとうな」


 ハルルが、赤い顔でこちらを見ていた。

 なんだ。俺が礼を言うのが殊勝すぎたか?

 割とお礼はちゃんと言える方だと思っているんだが。


 少し沈黙が続いた。

 潤んだ目のハルルと俺は向き合いながら数分、静かだった。

 俺の返事、何か、変だったんだろうか。


「あの。師匠?」

「ん? なんだ?」


「背」

「背?」


「背中、汗を。かいてしまったみたいなんで、拭いて貰えないッスか?」

「え。えっと」


 ハルルは背を向けて、パジャマの背を少し捲った。

 ウェストの細いラインがちらりと見える。


「なんでもしてくれるんスよね?」


「そ、そりゃ。する、けど」

 乾いたタオルを、背中に当てる。


「んっ……ぁ」

「みょ、妙な声を上げるなよ」

「だって、くすぐったいんスもん」

「お前から言い出しておいて」

「そのまま、肩の方までお願いするッス」


 肩、って。肩の方って。

「っ、ぁ……ん」


 いや、でも、これ。

 俺が、手を肩の方へ動かすと、パジャマがどんどん、たくしあがっていく。

「んぅ」


 腰が、見える。背の半分も、見えている。

 タオルごしに、ハルルの背中、体温が伝わってくる。

 やばい。心音が、凄いことになってる。

 それもこれも。ハルルが、時々、艶っぽい声を出すせいだ。

 その声さえなければ。


「師匠」

「な、なんだ」

「そのまま、前側も、お願いするッス」


 くたっと、ハルルが、俺に寄りかかってきた。

 前。

 前……。前!?

 第二ボタンまで外れたパジャマ。

 赤く色づいた頬で俺を見るハルル。

 お互いの呼吸が、荒く速い。

 前って、それは。その。


「さ、鎖骨の辺り」

「あ、ああ」


 ハルルの匂いがする。

 同じ石鹸使ってるはずなのに、なんで女子らしい匂いがするんだろう。

 心音がずっと轟音を立てている。耳に張り付いているみたいだ。


「そのまま。ちょっと下、ッス」

「ちょ、っちょっと下って」

 

 鎖骨の下には、柔らかそうな、その。えっと。

 え。えち。



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