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【18】8人【33】

 

 ◆ ◆ ◆


 ジンとハルル。

 それからヴィオレッタとガー、ハッチ、ヴァネシオス。

 忘れてはいけない王鴉(ノア)仔翼獅子(シャルまる)の愉快な8人組。


 彼らは城下町の第三層から第二層に入る関所を堂々と超えた。



 そして、あろうことか現在いるのは最も厳重に管理されている筈だった『第一層』である。



「作戦、大成功ッスね!」

「くすくす。本当に上手く行くんだねぇ」

「ルッスは流石知能犯だな!」

「だねぇ。ハルルちゃん凄い!」

「えへへ、照れるッス!」


「……」


「師匠? どうしたッス? 浮かない顔して」

「いや……割と本気で王国の警備体制の弱さに愕然としてる……」

「え? そうッスか? まぁ完璧な『変装』ッスからね!

師匠っぽく言えば『人は視覚に重きを置く生き物だぜ』ッス! 服装で騙される訳ッスよ!」


「俺はそう言う台詞言わないけどな」

「言いそうッス~」

 ハルルはそう言いながら、『くるりと跳ねた付け髭』を撫でて笑う。


 黒い儀礼服(タキシード)に白いシャツ。

 黒い蝶ネクタイがワンポイントあって、パリッとした印象を与えるフォーマルな服装。

 それに、シルクハットも面に艶がちゃんとある。上流貴族を髣髴とさせる。

 そして何故か『くるりと跳ねた付け髭』を装着している。


 タキシード姿のハルル。怪しいし、変装していると誰だって見破れそうだ。なのに。




「……まさか、この程度の変装で欺けるとは……」




「師匠! この程度の変装じゃないッスよ~!

【ホテル・ドレスアップドールズ】の術技(スキル)によるちゃんとした完璧な変装ッス!」

 ──ホテル・ドレスアップドールズ。それは今朝まで泊まっていたホテルの名前だ。

 そのホテルは、術技(スキル)が掛けられた特殊なホテルだった。

 そこの宿泊客には『相手を好きな衣装』に変更する特殊な『御札(カード)』が渡される。

 その『御札(カード)』に触れた場合、『触れた人間は強制的に衣装変更(コスプレ)させられる』という術技(スキル)である。


 そして、その『御札(カード)』は店舗外に持ち出しても使うまで消えることは無い。


 『貴族に変身して関所を突破しよう』というアイデアはハルルが出した物だった。

 そのアイデアの背中を押すように、【ホテル・DUD】のカードは、未使用が数枚あった。それを使い、相手を変身させていったのである。


「まぁ堂々としてればバレないもんだよ、意外とさ!」

 ガーは親指を立ててグッドのポーズを取った。

 頭の先から首元まで、肌の色でバレてしまわないようにガーは包帯ぐるぐる巻きになっている ガーが笑ったような明るい声で喋るのは、何だかシュールだなぁ、とジンは素直に苦笑いしていた。


「あれなんじゃない? ほら一度チェックはしてるからおざなりにしちゃえ、的な!」

 筋骨隆々なヴァネシオスが何故か爪先立ちで歩いていた。奴隷感を出しているのか新しい筋トレなのかジンには判断が出来ないが……ジンは苦く笑う。


「確かにそうかもしれない。王都には入都の手続きが終わった人間しかいない。

チェックは緩くなる。いや、分かってはいるんだが……まさか証明書も書類すら不要で第一層……貴族の居住区まで来れてしまうなんて……。

王都の防犯対策が心配になるぞ……」


「くすくす。だねぇ。悪人たち8人が堂々と侵入出来るって、国としてマズいもんね」

 ヴィオレッタは身体のラインが分かるくらい密着するドレスを身に付けている。

 そして、そのミニスカートからその細い足が大胆に出ていた。


「おい、悪人の頭数に俺とハルル含めるな。6人組だろお前ら」

「でも流石にお城は無理っぽいね。警備、厳重みたい」

 ヴィオレッタはジンをスルーして城の前──城門の警備隊を見ていた。


「目もいいなお前」

「そこそこだよ」

 歩きながら、王城の少し手前の路地に7人は隠れた。

 厳密には5人と2匹が息を潜めた。


 ──そこから、城門の警備状況を見る。状況を分析していた。

「勇者は両サイドに3名ずつの計6名みたいだね。くすくす。正面門にしては少ないねぇ」

「だが、見た感じ割と鍛えられた勇者だな。見て分かる」

「でも私なら余裕で倒せるよ」「俺も余裕で倒せるけどな」

 ジンとヴィオレッタが笑顔で火花を散らす。

「ただ、目的は倒すことじゃない。穏便かつ平和的にナズクルを説得だ。

または無力化だ。誰彼構わず戦闘する必要は無い」

「でも無力化って(ぼこ)って足と手を折れ、ってことでしょ?」

「ちげぇよ。勝てないから降伏しろって宣告するんだっての」

「じゃぁやっぱり正面から突破した方がよくない?」


「レッタちゃん。流石に行きはそれで行けるだろうけど、帰れなくなるんじゃないかな?」

 ガーが冷静に言うと、ヴァネシオスは頷いた。

「むぅー」


「正論よねぇ。突破は容易かもだけど、あーっという間に勇者たちが出てくるわよ、きっと」

「そうだ。戦闘より素直に魔法で抜けられないの?

レッタちゃん、ほら転移魔法とか使えるじゃん」

 ハッチの提案に、ジンは苦い顔をした。


「ああ、それなんだがハッチ。転移魔法は王都じゃ使えないんだよ」

「え? そうなの?」

「王都の壁の一つ一つに雪禍嶺で使われていた不響(ジャミング)の魔法が掛けられてるそうだ。王城だと更に強力だろうな」

 ジンはそう説明しながら、ルキの顔を思い出す。

 不響(ジャミング)を解除して転移する方法もある──という事実は流石に伝えなかった。


(ルキや魔王クラスの魔法使いなら何かしらの突破方法を知っているだろう。とはいえ、今ここにはいない)


 仕方ない。とため息を吐く。

「王城の出入り口で張ろう。まだ昼だし、ナズクルが中に居ようが外に居ようが、必ず鉢合わせる筈だ」


「そーだね。でもこの正門を必ず通るの? お城って3・4方向に出入口あるんでしょ?」

「ああ。あるにはある。だが、両脇は物資搬入専用。

裏口は基本的に開放厳禁だ。だからナズクルは正面門を使う筈だ」

「なるほど。あ、あとそれと、一つ良い?」

「なんだよ?」





「ハルル、何処行ったの?」





 ──あれ。

 ジンは後ろを振り返る。

 ヴィオレッタ、(ノア)、ガー、ハッチ、仔翼獅子(シャルまる)、ヴァネシオス……。自分を含めて計、7人。


「……おいおい、いつから居ないんだ」

「この場所に隠れる前に、何か大急ぎで逆走してったよ」

「はぁ!?」




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