【18】入都【18】
◆ ◆ ◆
「昨夜はお楽しみでしたね、とでも言えばいいんだろうか??」
オレの名前はガーちゃん! 甘すぎるチョコレートは苦手!
だからこの雰囲気の砂糖80%増量に耐えきれなかった男の一人!
「ななな、ななな」
「何にもしてねェし」
慌てる『ハルルッス』と、それなりに耳だけ赤いジンさん。ふぅむ。
「解説のハッチさん。どう思いますかね」
「アタシに振んなっ。まぁ、でも順当に考えたら……」
振ると順当に考えるハッチ。真面目だなぁ、って思う。
「反応的に、『恋のC』まで行ったらもっと違う感じだろうし、これは『恋のA』だね」
「っ、あのなっ!」 ジンさん顔少し赤いから当たりだな。
というかこの人、凄い実力者だっての見て分かるけど、顔に出やすいなぁ。ポーカー対決とかだったら超勝てそう。
「ふふふ~、良いことじゃん??」
女子ってこういう話題好きなんだなぁ。というか、恋のABCって……。
「……? A? ってなんスか?」
「ね。なんだろね、Aって?」
ハルルッスとレッタちゃんが小首を傾げる。
……ほら、沈黙が生まれた!!
「時代を感じるぜ。若い世代にABCなんて伝わんねぇだろ」
とはいえ、『Aがキッスで、Bが前戯、Cがファイト一発ヤックルヤックル』なんてレッタちゃんにオレの口から説明するのは恥ずかしくて嫌だぜ! だから言わないぜ!
今更ながらの年齢別として、オレは25歳。ジンさん26歳。ハッチ19歳(18だと思ったら誕生日来てたらしい。祝わないとね)。オスちゃんは秘密だそうだけど、30代前半とかかなぁ?
んで、レッタちゃんとハルルッスが16歳。
世代間のギャップはあるよねぇ。
「ちょっと。何で歳上たちと一緒にされなきゃいけないのよっ。絶対、下の世代よ、アタシっ」
「いやぁ、物腰っつーか、醸し出す雰囲気がもう30代のソレというか」
「っ~~~!!」
ちょっ、まっ、銃を抜くなっ!! 口だけで反撃してっ!
「……で、本題なんだが。ここで待ってるだけでどうやって入るんだ?」
ジンさんが咳払いしてから本題に戻した。
まぁ詳しくはまだ話してなかったもんな。
「昨日の夜中に手配はもうしてあるから大丈夫。あとは、ここで、業者を待つ」
「ここで業者を待つってなぁ……ガー」
「心配ですか? まぁ心配か」
「そりゃそうだろ。だって、ここ……『出口専用門』だぞ?
『王都から出る専用』。出口門からは、証明書持ってても入れないだろ」
ジンさんが心配するのも仕方ない。
今、オレたちが待ってる場所は王都北東の門の中でも『出口専用の門』。それも少し小さめの門だ。
しかもこっち側の道は雪禍嶺経由のルートだから道も入り組んだ山道だし、あんま好まれない。
まぁ、それがいいのであるが。
「ねぇ、ガー。アタシたち、王都に入りたいんだからね? 外国に行きたい訳じゃないわよ」
「んだよ、ハッチにも説明したろ? 分かってるから大丈夫だって」
お、来た来た。王都の中から馬車が出てきた。
あの馬車だ。
荷車は剥き出し。果物の箱や樽が積まれてる馬車だ。御者は一名。
「あ、ほら来たぜ。後は手筈通りに」
「大丈夫なのかよ」
門の勇者にチェックをされる。入念だ。申請した印書類と中身を確認。
一致しなければその場で書き直しと積載規定金を取られる。
『今回の王都はどうでしたか?』
『ええ。よく稼がせて貰いましたよ!』
『お祭りでしたからねぇ』
『ええ、毎回、この時期は稼ぎ時ですから』
『次は雪禍の都の方ですか?』
『そうです。一応残った果物は南方の珍しい物なので、雪江あたりまで行ってみようかと』
『なるほど。あちらは治安がいいとはいえ、山賊も出ますから気を付けてくださいね』
『ええ、ありがとうございます』
荷物もほとんどチェックされて、一切の問題が無かった馬車は王都から出て来た。
さて、この『北東出口門』から出ると、馬車はすぐに城壁沿いに進まないといけない。
そうなると、数十秒も行かない場所で門にいる勇者からは丁度、死角になる。
御者に扮した『王都に入らせ屋』と目が合う。顎を三度触った、合図だ。
「さ、スピード勝負だっ、ほら!」
すぐに俺たちは荷馬車の積み荷の中へと隠れる。
それぞれ別の、空樽や空木箱の中へ。
その数瞬後、馬車は転進する。ここだけ唯一大回りできる道だってのもミソだ。
樽の中から声だけ聞こえる。
馬車は門へ戻った。ほんの数分以内で。
『すみません、勇者さん。どうしてもお腹が』
『大丈夫ですか? どうぞ中へ』
◆ ◆ ◆
「……昔から、王国勇者は防御が甘いって言われるけどよ……ここまでとは。
王都の防衛が心配になってきたよ、俺は」
王都の中央商店街を歩きながら、ジンさんは少し頭を押さえていた。
「くすくす。そーだね。ほんとに簡単だったねぇ」
門の内部で、馬車は所定の場所に繋がれる。
あの狭い出口専用の門だと、入り組んだ場所に停車させるしかない。
それでササッと出て降りて、すぐに通行人に紛れるだけで終了。
「受け売りだけど、一度チェックしたって事実が盲点になるらしいぜ。チェックした荷物だから絶対に大丈夫って思っちゃうそうだ!」
「悪いこと考える人間ってのは、ほんと、もっと違う所で才能を活かして欲しいもんだ」
ジンさんは苦笑いを浮かべた。
「まぁ、どんな場所にもグレーゾーンがあるってことで、許してくれよ。そーしねぇと、オレらみたいな奴らは商売も出来なかったりするしな」
「まぁ……別に俺がとやかく言うことでもないしな」
「でも、あれだね、ガーちゃん」
「レッタちゃん?」
「くすくす。何だか悪いことしてるみたで、ドキドキするね」
してるんだけどね、悪いこと!!




