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【番外】オカマ湯【04】【18 - 14.5】


 

 湯船に桃が浮いてるわ。

 果物の桃よ、ケツのことじゃないわよ。


 こんな綺麗な湯船に、あんな桃が浮いてるのよ。


 誰だって『異物だ』って分かるわよねって言いたいだけ。

 本当に湯船に桃が浮いてるなんて、結構、違和感よねぇ。

 なんか、あれかしらね。桃の香りを移す為に入れてるのかもね。

 まぁ、違和感はあるわよね。風呂に桃ってねぇ。



 身体を伸ばして、まず全身の筋肉を動かすわ。キてるわね。いい具合よ。

 ざぱんと湯船に入って、ふぅと息を吐く。



 (あたい)の名前はヴァネシオス。

 今日も上腕二頭筋(バイセップス)の艶が輝かしいでしょう?

 (あたい)は治体の魔女と呼ばれているわ。

 人体のことを知り尽くした筋骨隆々(うつくしき)魔女男(マッヂョ・メェン)。それが(あたい)


 一人で湯に入るなんて……いつぶりかしら。

 誰かと入ったことあるの? って聞かれたら思わせぶりな笑顔を浮かべるだけにするけどね。

 良い女は思わせぶりなものよん。


 こうやって、一人で考え事に耽るって、たまには良いわね。

 あと耽るって言葉、エロくて良いわね。


 (あたい)は、名前が幾つかあるわ。ふふっ、(あたい)だけじゃないわね、レッタちゃんも、ガーちゃんもハッチもみんな、本名は別にあるもんね。

 だから、類に漏れず、って言うべきね。


 オスちゃん、ヴァネシオスは、人から付けてもらった名前。

 本当の名前は、もう名乗ることはないし、捨てちゃったわ。


 乱波透波(らっぱすっぱ)って知ってる?

 隠者(しのび)って言ったら分かるかしら。

 その中でも、特殊な衆……異波(いば)って言う衆団が(あたい)の……なんて言うのかしらね、郷里? 家? 里って言うのがしっくりくるんだけど。まぁともかく、所属、かしらね。


 隠者(しのび)の中でも暗殺──特に素手での暗殺に長けた衆。

 市井の民に紛れて標的に近づき、凶器という証拠を残さない暗殺者。

 特に戦時は魔族人族の両方のお偉いさんから引く手数多。重宝されていたのよ。


 異波では、生まれた時から暗殺術を仕込まれる。

 そして、確実な暗殺の為に、人体の構造を徹底的に学ぶの。

 人間を生きたまま剥いだりしてね。


 ……悪趣味ではあったけど、お陰で人体の理解は早かったわ。

 それで、人体理解においては(あたい)は、優秀だった。

 次代里長補佐にまで名前が上がったりした。すっごいことなんだから。

 まー、里長補佐になってたらここには居ないし、そうならなかったんだけど。

 なんなら、(あたい)の仕事実働も数回だけ。それも、里の近くの敵撃退とか。




 その隠者の湯船(さと)の中で(あたい)は桃だったのよ。



 

 (あたい)が男しか愛せないって分かった日から。




 (あたい)はね、男が好き。出来たら女になりたい。

 それで女の人の服を着て歩きたい。そういう性自認(かんがえ)よ。

 あ、でも体はバキバキに鍛えたいわ。そういう価値観よ。


 でもね。そういう(あたい)は否定された。

 仕方ないわよね。だって異波衆は、市井に紛れて生きて暗殺を生業にする隠者よ?


 木を隠すなら森の中、人を隠すなら村の中。

 でも枯れ木は森には隠せないし、『(あたい)』は村には隠せなかった。

 『同性愛』なんて目立ちすぎるそうよ。そんな存在は邪魔で仕方なかったらしいわ。


 いかに人間らしく、いかに平均的な考えを持てるか。それが『普通』だそうよ。

 どうにか『普通にしてあげよう』って、矯正されたわ。ほんと、偉いわよね、彼ら。




 普通ではない異常な者は、自分より下って考え方、本当に嫌だったわ。




 まぁ、治ったフリして我慢して合わせて泣きそうになった日もあったわ。

 でも嫌で作った嘘なのが滲み出てたんでしょうね。

 それで、(あたい)は任務に向かう途中に……。


 これ以上は止めておこうかしら。

 一人で耽るにしても、背中の深い傷のことまで思い出したら不快じゃない? 

 深い傷だけにね!




 ほんとなら、誰が何を好きでも構わない筈なのにね。

 なんで、好きに対して別の誰かにとやかく言われなきゃいけないのかしらね。




 肩にポンと桃が当たった。

 慰めてくれてるのかしらね。可愛らしい桃だこと。


 桃を軽く撫でて湯船の真ん中の方へ転がす。くるくる水をかいて転がるのは、なんだか可愛らしい。


 あら、脱衣場の方から声がするわね。男二人、なんだか賑やかな掛け合いじゃない。

 ガーとジンさんね。


 あの二人は変なペアよね。全然、似ても似つかないのに、どこか風が似てる。


 さて、あの二人が入るならそろそろ上がろうかしらね。いいお湯だった。


「あれ。オスちゃん、入ってたのか」


 ガラッと扉が開き、前をタオルで隠したガーちゃんと目が合う。


「ええ、今出る所! でも、まだ入ってようかしらッ!」

「目がガンギマリじゃないですかねぇ!?」

「あー、ヴァネシオス。あんまり長湯してると上せるぞ。適度にな」


 その隣のジンから苦笑いで声を掛けられ、ふふっと(あたい)は笑顔を作る。


「そーね、そーするわ」


 二人の隣を通り抜けて脱衣場へ向かう。

 不思議ね。勇者と指名手配犯でお風呂入ってるなんて。

 ……魔族と人間の集団から弾かれた混血のガーちゃん。

 ……守るべき民衆たちから拒絶された勇者のジンさん。


 二人とも。そうね。二人とも。





「いい桃じゃあない」





「「どこ見て喋ってんだっ!!」」



 


  ◆ ◇ ◆


いつもいいねやブックマーク、更には評価まで、本当にありがとうございます!


そして、すみません。体調が戻らず、もう一度休載期間を取らせて頂きます。

病院で検査をして貰った所、流行中の感染症ではないとのことなのですが、

どうにも長時間座ることが出来ない状態となってしまっております。


本編の内容がトンでもない場所で切れてしまっている為、早く続きを書きたいのですが

身体が言うことを利かない状態であり……何卒、ご容赦頂けると幸いです。


大事を取って、12/5(火)までお休みをいただきたいと思います。

12/5(火)7時に投稿出来ればと考えております。また容態や状態が変わったら、

その都度、報告させて頂きます。

誠に申し訳ございません。


 

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