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【12】それぞれの行先②【51】


◆ ◆ ◆



「すみませんね。ガーさんにも洗濯物を運んでいただいて」


 頭が蛇で体が人間。表情は読み辛いがとても優しい爬虫人(リザードマン)のヴィーヘさんだ。

 川みたいに綺麗な水が流れている洗濯場。絞りに絞った衣類が山のように積まれている。

「いやいや、これくらいは手伝わせてください、ヴィーヘさん。

その、急に押しかけてしまったのに、ありがとうございます」

「はは。いいんですよ。手を取り合うのが半人(デミ)の生き方ですし、

それに怪我した人を放っておけないですよ」

「ほんとに、ありがとうございますっ……!」

「お気になさらずに。ただの世話焼きなんですよ、私たちの性分が。

それになにより人が多い方が賑やかで楽しいですから」

 神様かな……。


「よっと、ではこっちの衣類をお願いしますね」

「了解ッス! さっきと同じで、上の階に運べばいいんッスよね?」

 やべ、ッスが伝染(うつ)っちゃったよ。


「はい。ありがとうございます。助かります」

 弾んだ声と動かない表情の落差があるから、慣れない人からすれば妙な雰囲気に思えるかもしれない。

 とても優しく気さくな人で、聞けばこの爬虫人(リザードマン)の集落である『ロドラゴの樹』の自警団の隊長さんらしい。割と族長に意見出来るくらい偉い人だった。


 さて、オレは慣れない岩の階段を、洗濯物を持って上の階へと進んでいく。

「気を付けてくださいね」

「大丈夫ッス。あっ、大丈夫ですー!」

 本当に『ッス』が伝染(うつ)ってしまった……。

 『ッス』の毒を抜かねば……! ふと、『ッス』の元凶を思い返す。


 ……ハルルッス、大丈夫だったかな。


 雪禍嶺(せっかりょう)から転移し、ここに来てから、かれこれ二日経つ。


 狼先生たちは大変だったらしい。

 事の顛末は全部聞いた。12本の杖とかいう組織のイカレた魔族が大暴れしたこととか、それでオスちゃんが大怪我とか。

 退けた後、レッタちゃんと一緒に行動してた剣士がマジ強い人で、捕まりそうになったから、逃げる為に緊急で転移魔法を行ったとのこと。


 それで、狼先生の転移魔法で跳んだ先が……先日まで居たロドラゴの隠れ里、だった訳だ。


 ヴィーヘさんは急に押しかけたにも関わらず、受け入れてくれた。

 まぁオスちゃんとも面識あるし、大怪我してたから受け入れざるを得なかったのかもしれないけど……本当に優しい人たちだ、爬虫人(リザードマン)の方々……。


 で、転移する瞬間、オレたち(もとい、ハッチとルキさんがねっ!)は、ハルルッスを手当てしている最中だった。


 突然に体が見覚えのある黒い靄に巻き付かれ出して、ルキさんが転移魔法だ、と気付かせてくれた。

 少しの時間があったからハッチはとにかく薬品や包帯を置いてから転移したけども。


 少し、心配である。

 あんな右腕の火傷、治せるのかな。それともルキさんみたいに義手か?


 ハルルッス、つまりルッス。アイツは悪い奴じゃなかった。

 良い奴が怪我するのって、あんまり見たくないよな。


 階段を上りきる。ふぅー、眩しいぜ。

 地上よりも随分と明るい場所だ……。



「あ、ガー、持ってきてくれたのね。そこ置いといて」



 その部屋で、赤金髪を揺らしてハッチが洗濯物を干していた。

 ロドラゴの隠れ里──ここは、地下なのだ。

 で、オレたちが居るこの場所も、超デカい『ロドラゴ』っていう樹の中っていう訳です。

 え? こんな明るいのに地下な訳が無いって? 


 ははは、ロドラゴの樹というのは光を蓄えて発光する性質があるんだぜぇー! 

 そして触るとほんのり温かいのだ! 

 で、この部屋は特に光を放出する部屋で、メチャ温かいのだ!


 ……と、教わった。受け売りでした。


「あのさ、ガー」

「ん?」

「穴にアタシが落ちた時さ、……その、飛び込んでくれて──」


「やーぁ!」


 ぼふっ! と音がした。

 あ、向こう側にある乾いた方の洗濯物の山に、ちびっこいのが突撃した。


 おお、あれは一番下のアダラちゃんか? いや、あの服装は下から二番目のチオローか!

 まだ四歳の爬虫人(リザードマン)の子供。舌ったらずな活発な男の子だ。


「あったかーっ!」

 と、叫んだのに合わせ、その上の悪戯双子が突撃していく。

 そして最後に、レッタちゃんが突撃した。


「あったかいね!」「ねー!」

 双子ちゃんたちと笑い合うレッタちゃん。

 笑い合う、レッタちゃん、可愛いッ!!!



「ちょっと皆っ、洗濯物に飛び込まないの! レッタちゃん、皆連れて向こうで遊んできて」



「あーあ、怒られちゃったー! はぁ~い、チオロー、スネ、イク、いこー」


 ──あの爬虫人(リザードマン)の子供たちは、ヴィーヘさんの子供である。


 そう、ヴィーヘさん、大家族のパパだった!


 奥さんのナーさんと、息子娘は合わせて10人の大家族。

 上から順に、ペント、シュゲ、オピス、セルペ、スネ、イク、チオロー、アダラ……五男三女の大家族だ。

 しかも全員10歳以下。パワフル過ぎるぜ。


 四歳児のチオローは五男。スネとイクは双子で四男と次女。

 えーっと向こうで狼先生で遊んでるのが、一番下の4歳児アダラちゃんと、それから7歳児の長女オピスとセルペくん。

 いやー、狼先生、耳とか尻尾とか凄い引っ張られてる。楽しそうで何よりだな。


「しかし、子供、多過ぎてやべぇなっ!」

「アンタ、子供苦手?」

「いや? 割と好きだぜ? けどよ、ここまで多いと名前覚えるの大変だなぁと思っている」

「何それ」

 ハッチがあどけなく笑って見せた。


「ハッチは子供好きなのか?」

「何、その意外そうな目。言っとくけどアンタが子供好きって方が意外だからね??」

「ははは。まぁそーだよな。とりま洗濯サクっと終わらせようぜ」


 洗濯物をハッチの隣で一緒に干す。

 それから暫くしてヴィーヘさんの奥さんのナーさんが上がって来た。そういえば昼飯の時間か。


「簡素ですが、ちょっとしたものを持ってきました。お召し上がりください」

「あ、ありがとうございます!」

 おお、焼かれた丸いパン。それにジャム。こういうの好きだぜ。

 ナーさんは子供らを連れて下に降りて行った。ああ、お昼寝の時間か?



 ◆ ◆ ◆



『嵐のような時間だったな』

「狼先生大丈夫? まだ体、そんなに治ってないんでしょ?」

『まぁ子供らに遊ばれたくらいじゃ怪我は悪化しないさ』

「くすくす。(せんせー)は頑丈だもんね」

『まぁな』

「とりあえず、オスちゃんの怪我が治ったら出発するんだっけ?」

『ああ。雪禍嶺(せっかりょう)転移点(ワープポイント)も解放出来たし、

そこから詩人の島にいる聖女に会おうという考えだ』


「あ、(せんせー)、待って! 私、実はこの後に行きたい場所があるの」

 手をピンと上げて、はいはーい、とレッタちゃんが言う。


『何? 行きたい場所だと? どこだ?』

「えっとね。勇者ギルド」


「「はい??」」 オレとハッチがハモった。


『何? なんだ、どうした。何か気に食わない奴でもいたのか?』

「ううん。そうじゃなくてね。ジンと約束したからさ」

「約束?」




「うん。自首? してこよーと思う」




「……は?」「え?」『な……。なんだと?』


「うん? どしたの皆、目が白黒してるよ?」


 いや、白黒するって、明滅するって。


『……どういう意味か、分かって言ってるのか? 自首って』

「え? わかんないけど。自首する約束しちゃったから、自首してくる」

 レッタちゃんの言葉に、狼先生は頭……というか顔を抱えて蹲っていた。

 えーっと。なんだろ。つまり、こういうことか。



「オレたちの旅は……打ち切りエンド……ってコト!?」



 

 


 

 



 ◇ ◆ ◇


いつも読んで頂き、誠にありがとうございます!

章の切り替わりのタイミングとなりましたので、お礼をお伝えしたく後書きに書かせて頂いております!

評価を頂き、いいねまで押して頂いて……本当に本当に有難い限りです!

200部を超えて続けられたのは、皆様が読んでくださったお陰です。

皆様に支えられて、ここまで続けられています。そして、今後も続けていきます!


改めて、お礼を申し上げます。誠にありがとうございます!

今後とも、何卒よろしくお願い致します!


 ◇


※ 打ち切りエンドではございません。

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