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勇者の称号を剥奪された最強の元勇者、今は便利屋を開業し平和に暮らしたい。~押しかけ弟子のせいで平和には暮らせないようです~  作者: 暁輝
【03】陽は沈み、幕は上がる。

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【03】明日はちゃんと山賊業やれ!【07】



 俺の師匠曰く『少しほったらかした方が、弟子はよく育つのだ』そうだ。

 だからと言って、当時の俺を武器無し防具無しで真冬の雪山に置いて行ったことは、ほったらかしの限度を超えているし、今でも許してはいないが。


 さて、『少しほったからした方が、弟子はよく育つ』の件だが。


今回、ハルルは護衛依頼で西方北部にある山間の町(ヤイマーノ)へ行く。


 俺も別の依頼で西方南部の森の近くの町(リーモニア)へ行く予定だ。

 南部と北部の町。もちろん、距離が離れている。

 ハルルたちとは、王都を出て最初の拠点である、通称大交差点(クロスロード・ポート)で別れる予定となっている。


 北部は比較的に治安がいい、とは言う。

 だが、今朝方の新聞で西部は今、山賊が多い、とも載っていた。




 ──ハルルとポムッハが眠りについた深夜一時。

 俺は音を立てずに扉を閉めて、外に出た。




 この世界の生物は、所謂(いわゆる)、魔力を持っている。


 その魔力を磨き、自分の特性に合わせた物に強化していくと、それは術技(スキル)と呼ばれる物となる。

 自分だけの固有魔法、と解釈してくれて構わないだろう。

 術技(スキル)は、生まれた瞬間から使える者もいれば、訓練を積まなければ使えない者も居るし、一つしか持たない者もいれば、少数だが、複数所持する者もいる。


 魔法との違いは、再現性の有無だ。


 魔法は、発動の仕方を覚えれば誰でも使える。

 詠唱なり媒介なりアイテムなりで、簡単に使える。


 術技(スキル)は、発動の仕方を知っても他の奴には使えない。

 もちろん、似通った術技(スキル)やほぼ同一効果のものもある。


 だが、基本的に、その術技(スキル)を会得した人物の歩んできた生き方や経験が反映される為、厳密に同一の術技(スキル)なんて存在しないのである。


 

 さて、俺の有する術技(スキル)は、【迅雷】。

 自身の体の一部を、雷に変質させる術技(スキル)である。

 ちょっとした制限もあるが、基本的には自由に発動できる。


 全身雷化も可能だが、体力的にもやれる時間が極端に短く、平たく言えば、コスパが悪い。

 その為、長距離移動をするなら、脚部雷化で十分なのだ。

 まぁ、それでもコスパは悪いんだが……。

 

 で、なんで、深夜にコソコソと脚部雷化を行っているのか。

 まぁ、なんだ。散歩……いや、ゴミ拾い(・・・・)、ってところか?


 雷化し、空気を蹴飛ばし音を超え、雲ばかりの夜を走って飛ぶ。


◆ ◆ ◆


 高速で空を駆け、着地した場所は通称大交差点(クロスロード・ポート)から、北部へ向かう道。

 迅雷解除。久々に使うとだいぶ疲れるな。


 続けて、今度は両手を雷化する。

 両手の人差し指を合わせてから、広げる。


雷域索敵(ソナーボルト)


 雷化と索敵の魔法の合わせ技で、半径三キロの屋外にいる生物を索敵する。

 街道周辺には、小型の獣型魔物が眠っている。これくらいは脅威ではないか。

 まぁ、当たり前か。大交差点(クロスロード・ポート)には西側最大の勇者ギルドがある。

 この辺に山賊がいたら、そりゃ即捕まるだろうからな。


 やはり、もうちょっと北側か。

 脚部雷化で一気に森の入口まで移動する。

 ん。気になる場所が見えた。

 あの森の中腹。何か光ったぞ。それに、不自然に開けた場所がある。


 空中へ飛ぶ。ビンゴ。山賊のアジトだな、あれ。



 そう。俺は今、ハルルたちが行く先に出るであろう脅威を、先に排除しに来たのである。



 空中から雷の上位魔法をぶち込んでしまうのが一番手っ取り早いが……それではハルルの成長が出来ない。

 排除しには来たが、それは、今のハルルが倒せないであろう敵の排除であって、全ての障害の排除ではない。


 念の為、顔を見られないように──獅子の兜の癖か、戦闘時は顔を見られたくないのだ──こいつ(・・・)を被る



 では、厳選を開始する。





 垂直落下。砂埃が舞う。





「っ! な、なんだっ! どうした!」

「けほけほっ、くそ、勇者の襲撃かっ!」

「ん!? なんだあいつ!? なんで頭に紙袋なんか被ってやがるんだ!?」


 目の所にだけ穴をあけた紙袋は、流石に変だったか?


 いや、買い出しの時のこれしか被れそうな物はなかったし、仕方ないのである。

 いささかシュールだが……いいんだ、これで!


「この中で一番強い奴は誰だ」


 俺が問うとざわつく。

 すると、奥の横穴から、(たっぱ)高い(ある)、がっちりとした体躯の男が、人間ほどの大きさの斧を構えて出てきた。


「そいつぁ俺さ。この山賊団の頭であるこ──がふぉ!?」


 雷化した右手で頭の頭を掴み、地面に突っ込む。


「か、頭ぁ!?」


 まず一番強い奴は多分倒せないだろうから、完全麻痺状態にしよう。

 そのまま電撃を放ち、意識を奪い取った。

 さて。


 うちのハルルのレベルを10と仮定して……。今の山賊の頭は、14くらいだったな。


HLv(ハルレベ) 9以上の奴だけ殲滅する」

「は、ハルレべ!? ハルレべってなんだ!?」

「知らんのか。今さっき俺が作った単位だ」

「ハァ!?」

「いいから、一列に並べ」


 質問してきた山賊も地面に埋めながら、そう呟く。

 こいつはHLv4くらいだったが、なんか質問とかしてきて面倒だから埋めておこう。

 解析魔法を使えば厳密に攻撃や防御、戦闘能力を割り出せるが、発動するのが億劫だ。

 山賊くらいなら、今までの経験測でやらせてもらう。



 厳選に次ぐ厳選。



 チッ。丁寧に厳選しすぎたか。

 最初の拠点で二〇分も選別に使ってしまった。

 次からもっと効率よくやろう。

「いいか。残ったお前ら」

「は、はひっ。もう山賊から足を──」


「ばか言ってんじゃねえ!」


 一喝する。

 残った山賊たち五名はビビりまくって正座している。

「明日はちゃんと山賊業やれ! いいな。何があってもちゃんとやれよ!」

「え、ええ!?」

「馬車を襲え」

「そ、そんな、五人でなんて無理──よ、喜んでやらせてもらいますっ!!」


 拳を構えるだけですぐ頷けるとは、よく訓練された山賊たちだ。


「で、明日が過ぎたら、しっかり山賊はやめろよな」

「は、はい……え、ええ?」


 さて。次だ。

 次の拠点では、八人……いや、七人くらいにしておこうか。

 その後、多くても十人にして。いや、時々少数にした方が戦いやすいか。


 連戦だと疲れるだろうからな……二団体空けたら、次の団体は壊滅させて距離を取らせてやろう。

 まあ、これで少しは道中、いい訓練しながら目的地に向かえるはずだ。



◆ ◆ ◆



 その後、山賊拠点を潰し回り、ハルルでも倒せそうな山賊の厳選を行った。


 まぁ、おかげでそこそこ良い物が手に入ったからちょうどよかった。

 それは、最後の山賊を襲撃した時に見つけた。

 ハルルでも使えそうな長さの槍があったのだ。しかも未使用。

 伸ばした腕の長さ程の槍なので、短槍、というカテゴリの武器だろうか。

 使いやすそうだったので、奪ってきた。あとついでに鉄の剣も。


 そして、家に帰ったのは、深夜三時頃。

 俺のベッドの上でハルルはすやすや寝息を立てていた。


 ……ああ、余計なことしたのかもしれん。


 わずかな罪悪感もある。

 だが……そうだな。俺のエゴだ。

 万が一にも死んでは欲しくない。……はぁ。とはいえ、過保護か、流石に……。

 次回からは、やらんようにしよ。


 

 不意に、ハルルが寝返りを打つ。ししょー、といつもみたいに笑いながら寝言を吐いて、よだれも垂らして。



 まったく。

 ……まったく。幸せそうな寝顔だな、こいつ。

  

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