表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

206/843

【12】こういう冒険、楽しいッスよね!【28】


 ◆ ◆ ◆



「……る、ルキさ~ん」

 恐る恐るハルルッスが声を掛ける。……返事がない。

「ルキさーん」「賢者ー?」

 ハッチとオレも声を掛けた。……返事がない。よし。


「酔っ払い地獄、終了だな……」

「はぁぁぁ……大変だったッス」

「まぁ、普段真面目な人ほど酔えば恐ろしいって言うしね……」


 賢者ルキ。ハルルッスが彼女を車椅子に運んで座らせる。

 えー……いや、酔っ払ってたけど酒を浴びるほど飲んだ訳じゃない。


 酩酊状態。

 これが、賢者ルキさんの魔法の『代償請求(バックラッシュ)』というヤツだったらしい。

 ……さっき、賢者さんが寝落ちする前に説明していた内容を要約すれば、『魔法を使った後の残り(かす)』が体にたまって、色々と身体に悪いことを及ぼすそうだ。

 ルキさんの場合は血管に直接アルコールをぶち込まれたように酩酊するとのこと。


 え? ルキさんの具体的な酔った姿の内容がないよう? って?

 ははははは。まぁ……うん。

 みんな、忘れようぜ。


「……起きたら暴れ出さないよな?」

 車椅子を押すハッチの隣でオレは訊ねた。

 さっきのが怖すぎてぐったりと眠っている賢者の横顔にすら怯えてしまう。


「……気付薬を作ろうかと思ってるわ。香辛料、山もりで」

「そうだな。頼む」


「る、ルキさんは普段はまともな人なので、本当に忘れてあげてくださいッス」

「ああ、うん。まぁ……あの感じは誰かに言えねぇわ」

 ちょっと引くレベルの酔い方でしたからね……。


「オレも魔法を使い過ぎたらぶっ倒れるのかな」

「アンタはああいう感じにならないでよね。マジで」

「あははは……マジね、気を付けたい。実際、酒も弱いし」

「それ、関係あるんスかね?」

「ははは、ないか」


「そういえば、ハルルちゃん、だったけ」

「はいッス! ハッチさん。なんでしょう?」

「いえ、昨日一日、このガーと居たんでしょ? 大丈夫、変なこととかされてない?」


「おい、ハッチ! オレはレッタちゃん一筋だから!!」

「大丈夫ッスよー! それに何かしようとしたら爆殺するんで!」

「爆殺とか怖い表現だなぁ! まぁ実際そうかっ!」




「んにゃぁ~~~……」




 全員が一瞬でビクッと固まる。

 よかった、酔っ払いが起きたわけじゃなかった。

 少し小声にしないとな。


 そして、分かれ道に来た。

 またあれだ。また、あれだ!


「わ、分かれ道ッスね! えへへ!!」

「どしたの? ハルルちゃん?」


「えへへ。分かれ道が好きなタイプの勇者でして」

「どんなタイプだ。……おい、ルッス。お前。分かってるよな」


「ええ、分かってるッスよ! 完全踏破ッスね!」


「違うよ!!? 今はルキさんも寝てるんだから安全な道を行かないとダメだからね!?」


「分かったッスよー……とはいえ、これ、どっちも罠の気配するッス」

 やっぱり罠の気配とか分かってたんじゃん!! 

 という今更のツッコミは止めておこう……。


「どっちが安全とかは分かるの?」

「うーん。よくわかんないッスね」

「ガチだろうな。嘘じゃないだろうな」


「流石に嘘じゃないッスよ!」

 ちょっと笑ってるように見えるんだよなぁああ。

 ……オレ、もう人を信じれない、ぜ☆

 よし、ルッスを罠に嵌めるか。


「……せっかく奇数人だ。右か左かで選ぼう」


「いいッスね! じゃぁせーので右か左か!」

「いいぞ。ハッチもいいな」「え、ええ? いいけど、なんで」

「「せーの」」


 瞬間、ハッチの口をふさぐ。


「左ッス!」


「よし、右行くぞ」

「! ガーちゃんさんッ!」

「え。いいの??」

「ハッチ! このハルルッスはな、ダンジョンクレイジーなんだよ!

昨日はずっと罠の方を選んでくれてな! マジで死にかけた瞬間もあったんだ!」


「な、なに言ってるんスか! 三、四回くらいしか無かったじゃないッスか!! マジで死にそうなのは!」


「三、四回もあったんだよ!! 危なかったからね!? 主にオレ!!

つーことで!!右の方が安全って訳だ!」


「な、なるほど? よくわかんないけど、まぁ、それでいいわよ。えっと右ね」

「つーことだ。諦めろ、ハルルッス」

「ううーっ。左の方が魔物の気配はいっぱいッスけどーーー」

「ほーら、やっぱりいっぱいなんじゃねぇか。もはやお前はあれか、ダンジョンの手先か?」


 ハルルッスの首根っこを掴んで右の道へ進む。

「違うんスよー! 左は弱い魔物がたくさんの気配で……」


 がこんっ、と音がした。

 振り返ると、道が塞がっている。



(こっち)のは一匹の気配だったから、こっちが『強いの一匹』かなぁって!」



 そして、背後に何かが『落ちて』きた。

 ……。


「そういうのさ……先に言わない?」

「ガー。アンタがハルルちゃんを信じてたら良かっただけじゃん?」

「そーッスよ?」

 やれやれという目を向けてきた。うう。だって前科があるじゃん。

 うう……。


「マジごめん……! ほんと、ごめんっ!!!」


「いえいえ、お気になさらず! 寧ろ……えへへ。よかったッス」

 え?


 そして、背後。

 しゅろろ、と音がする。

 巨大な……大蛇だ。


「黒い外皮に赤い目! 黒岩大蛇(ブラキード)と呼ばれる大蛇ッスね~! 

希少魔物(レアモンスター)ッス! 

近距離に近づくと毒とか撃ってくるんで、割と強いッスよ! 

槍とか魔法攻撃が弱点ッス! まさかお目に掛かれるとは!」


「……ちなみに、ハルル様お一人でお倒しになられたりでき申する?」

「あ、無理っスね。割とガチで強いんで」


 沈黙が走る。

 そして。


「賢者! 賢者起こせ!! ルキさんッ! 起きてくれぇえ!!」

「ばかっ! 無理無理、酩酊よっ! さっさと逃げるわよっ!!」

「えへへ! こういう冒険、楽しいッスよね!」

「楽しくねぇよ!?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ