【12】これが今あるボクの手札だ【24】
※ 謝罪 ※
作中に誤用を行っていたことが、昨日(5/3)に明らかになりました。
確実な作者の誤用であり、正式な意味を理解しておらず誠に申し訳ございません。
5/3夜に差し替えさせていただきました。詳細は後書きに記載させて頂きます。
先に、前書きには、修正内容の記載をさせて頂きます。
この度は、適切な用語を用いれず、誠に申し訳ございませんでした。
※ 修正内容 ※
代償請求 フリガナ:ノックバック → バックラッシュ
◇ ◇ ◇
魔法や術技を、二通りに分別出来る。
限界になると一切発動出来なくなるか、限界を超えて発動出来るか。
そして、後者は限界を超えて発動した時、術者には代償請求が返ってくる。
代償請求。
魔法や術技において良く使われる言葉であり、平たく言えば反動だ。
自分の使える魔力以上の魔力を使った時に跳ね返ってくる肉体や精神への反動。
術技の制約を破った時に返って来る代償。
その揺り返しのことを、代償請求と呼ぶ。
代償の内容は強弱様々。軽度の筋肉痛や頭痛だったり、一時的に視界を失ったり、重い物では命を落とすこともある。
◇ ◇ ◇
(くそっ、追いつけるはずがないけどっ!)
ガーは大穴に飛び込んだ。
(馬鹿なオレでも知ってるっ! 物が落ちる速度は全部同じなんだよなっ!)
(でも、飛び込まずにいられないだろっ!)
包丁を落とした時、慌てて掴もうとするような、ただの危険な反射。
ガーは勢いを穴の壁を蹴って勢いをつける。
(壁を走って──いやもう落ちてるか!)
跳んだ──が、届かない。
それでも、手を伸ばした姿は、ハッチの目には焼き付いただろう。
ルキが動いたのは、ガーが飛び込んだのを横目で目視してからだった。
ギリっと奥歯を噛んでから、眼前の鵺竜を睨みつける。
(どんなに思っても負け惜しみで……仕方のないことだが、悔しいモノだな。右手がまともなら)
右手の義手が忌々し気に握り締められる。
ルキの魔法のショートカットは、自分の指に魔法や属性を登録する。
魔力動力の機械の義手。その指は『自分の指』ではない。
右腕を失った日から、ルキの発動できる魔法は半分になった。
両脚が義足になった日から、ルキの戦える範囲は僅かになった。
手が無い分、同時に発動できる魔法も、そのコントロールも半減それ以下になった。
足が無い分、地面を経由した設置型の罠魔法や地面を操る魔法も上手く扱えなくなった。
だが。
(それがどうした。これが今あるボクの手札だ。この程度の竜種、この程度の危機を乗り切れないで、何が勇者だ)
──竜種と、いや、敵と対峙する時の基本。目線を外してはいけない。
だが、目線を外して大穴に落ちた二人を『目視』しなければ、二人を救う魔法を発動てない。
(目視、発動魔法種類選択、落下中の二人に衝撃を与えないように捕まえて、引き上げる。十、いや二十秒)
人面の竜、鵺竜は溶けたような笑みを浮かべると同時にルキの四方八方から何かを飛ばした。
風を圧縮したそれは、風景の歪みから見て、槍のような形をしている。
ルキは決断する。
「岩盤に指示する、ボクを守り続けろ!」
賢者ルキは魔法の名前を呼ぶことは滅多にない。
彼女は自分の左手五指に属性を割り当てており、その組み合わせで魔法を使う。またその属性も自由に変更が出来る。
それをせず、詠唱したのは、この後の工程──救出に複数の魔法を使うと判断したからだ。
ルキの周りの岩盤が外れ──盾として浮かぶ。
秒で破壊されていく岩盤。その間に、大穴を見る。
(見つけた。遠い。風で包む。風の糸を編んで、それから……ッ)
ルキは唇を噛む──背後の岩盤が全て壊れた。
(おいおい。振り返らなくても、分かる)
音、振動。
(直接来たのか。頭、いいじゃないか、この竜ッ)
竜の尾が背後から迫っていた。
だが──
ふっ、とルキの脳裏には一人の男の姿が映っていた。
──問題ない。
(ライ……いや、今はジンか。彼も、よく背中を守ってくれた。流石──弟子だね)
風の魔法は落ちた二人を正確に捕らえ浮かす。
ルキの背後に迫った竜の尾は──
「爆機槍ッ!」
──爆発した。
「ルキさん! 大丈夫ッスか!」
「ああ。ハルルが守ってくれたおかげでね」
「えへ、えへへへ」
銀白の髪を靡かせて、自分の背よりも長い騎乗槍のような形の槍を構える少女、ハルル。
その翡翠色の目は、竜種から一切目を離さない。
彼女は爆発機構が仕込まれた爆発する槍をまっすぐに構えた。
鵺竜の尻尾は鉄のような鱗で出来ている。だが、爆発で血を僅かに流しながら、壁に上っていった。
「むぅ! 鉄の人面ヤモリ竜ッスね!! 厄介ッス!」
「ああ、あれは、色々な種の特性を持てるからね」
「そーなんすね。まぁ、やっぱ結局は戦う運命ッスね!」
「ん? なんのことだい?」
「最初、あれから逃げたんで! でも、やっぱり勇者は逃げ隠れせず、真正面から倒してこそッスよね!」
「ふふ。でもまあ、本当ならあのレベルの害竜、逃げることを推奨するけどね」
ルキが指を振り、浮かせたガーとハッチを下ろす。
ハッチは気絶しているようだ。ガーは尻をついて痛がった。
ルキは車椅子に深く掛ける。
(鵺竜の、大きい奴は……ダメだ。
ハルルだけでは倒せないだろうし、ハッチの銃も聞かない。
その男は、いや、そもそも単独であれを倒せるヤツなんてそうそう居ないだろう)
ルキは頭を少し抑える。
「ルキさん?」
「ハルル。足場の悪い、ここじゃ──」
瞬間、また何かを飛ばしてきた。
次は、岩だ。上から幾つも落としてきた。
爆発。そして、拳。
槍を突き上げるハルルと、その隣に拳を掲げたガー。
「お、ガーちゃんさんは拳なんスね」
「いや、まぁ、本来は非戦闘員なんだけどね」
「またまた~」
「えっと、それより。さっきは助けてくれてありがとうございました……って大丈夫ですか?
顔少し赤くないですか?」
「え、ほんとッス! ルキさん大丈夫ッスか?」
「ああ……今は、大丈夫だ」
(これは、ボクの明確な弱点の一つ。ボクが無限のように使える魔法は、水の魔法のみ。
他の種類には使用制限がある。そして制限を超えたら来る代償請求は……少々、厄介なのだ)
(体が熱い。もう、使用制限が超えてるか。なら……一気にやるしかない)
鵺竜がまた何かを飛ばしてきた。
「少々エグい技で、あまりやらない魔法なのだが」
指を振る。ただそれだけで空気が震え、向かって来た風の槍が砕け散る。
あわせて、手を伸ばす。
「水が無ければボクは得意な水魔法を使えない。その為、」
ぽたぽたと、竜の尾から血は流れる。
「その血、いい水だね──では」
ぐっと手を握ったと同時。
鵺竜の体が、ぼこぼこと動く。皮膚の下で、まるで何か別の生き物が動いているかのように。
「ズタズタに斬り裂け」
風船のように膨らみ──斬り裂かれるように破裂した。
血肉が霧散し、当たりに飛び散る。
倒したことを見送り、ルキは車椅子に体をゆだねた。
(このくらいでへばるなんて、最悪だ)
「ルキさん! 大丈夫ッスか?」
ハルルがルキの顔を覗き込む。
顔が、真っ赤だ。
そして呼吸も荒い。
※ 謝罪と御礼 ※
上部前書きにも記載させて頂きましたが、作中に誤用がありました。
説明とお詫びをさせて頂きます。
また、本編とは関わりませんので、読み飛ばしていただいて大丈夫です。
当該箇所
【代償請求】という作中用語に対するルビの間違い。
誤:ノックバック
作者の誤認識【ノックバック:攻撃を行った自身が身動きが取れなくなること】
正当な意味合い【ノックバック:攻撃を受けた相手が身動きが取れなくなること】
大きく意味が違い、直ちに修正とお詫びをさせて頂こうという運びなりました。
作中で改めて代償請求に触れる場面での再調べで発覚し、以前までに使用された場所は
遡って『バックラッシュ(揺り返し、反動)』に変更させて頂きました。
この度は作者の調べ不足と誤った認識により適切ではないルビを振ってしまい、
誠に申し訳ございませんでした。
また、まだ章途中ではありますが、重ねてお礼させて頂きたいと思います。
いいねや評価をくださり、本当にありがとうございます!
時折、書いていて不安になる時がありますが、いいねや評価を貰うと、
嬉しい気持ちが込み上げて励まされると同時に、応援してくださる方に、
どうにか面白い、楽しいと思ってもらえるように全力を尽くさねばと身が引き締まる思いです!
未熟者ではありますが、今後とも細心の注意を払いながら、頑張らせて頂きたいと思います!
何卒、よろしくお願い致します!




