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勇者の称号を剥奪された最強の元勇者、今は便利屋を開業し平和に暮らしたい。~押しかけ弟子のせいで平和には暮らせないようです~  作者: 暁輝
【03】陽は沈み、幕は上がる。

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【03】この子、急に語り出してヤバいッス!!【05】

  


 肩まである銀色のふわふわした髪を揺らして、少女は、夕焼けの白煉瓦街(ホワイト・ストリート)を歩いていく。

 少女の名前はハルル。背中には訓練用の槍を背負う駆け出しの職業勇者である。


 白煉瓦街は、交易都市の最西端。

 民家は少なく、建物の殆どは、職業勇者関係の施設だ。

 見張りの職業勇者の駐屯用の建物。点在する訓練施設。それから、鍛冶屋や研究施設があるくらいだ。


 目的地は、更に、西側。

 防壁に近づけば近づくほど、研究施設は少なくなっていく。

 その為、その周囲に研究所は目的の場所にある一軒のみ、と、ハルルの持つ地図には書いてある。

 さて、地図に照らせば、目の前の建物の筈だが……ハルルは少し困惑する。


(あれ、本当に、学者さんの建物ッスかね……?)


 ここまで来る途中に見かけた、研究施設の多くは白膏石(コンクリート)で作られていた。

 だが、目の前にあるその建物は、木造だ。というか、研究所と呼んでいいのか分からない掘立小屋だ。


 ハルルは昔読んだ童話か何かを思い出した。狼に吹き飛ばされてしまう掘立小屋、あったなぁ、などと耽ってから首を振る。


(でも、この辺にある研究所は一つしかない、って書いてありますし……えーっと)


 恐る恐る小屋に近づき、入口に剣技道場のように板の立て看板が見た。

 随分と達筆な文字で『凄い研究所』と書かれている。

 自ら凄いと名前に付けてしまうあたり、中々のセンスだが、ここで間違いないらしい。


 中にも人の気配がする。

 こんこんこん、と扉をノック──





 したと同時に、爆発した。





 爆風でハルルは後方に飛ばされ、尻餅をつき、顔が煤けた。

 何が起こってるのか意味不明な現状に、呆然とする。

 なんの冗談か、ハルルが目を疑っていると、ボロボロの白衣の少女がよたよたと近づいてきた。


「今日は盛大にやらかしてしまったのだ。とはいえ、良い火力ではあったし、ある種の成功と言えるかもしれないのだ……」


 物理的に焦げた長い茶髪に、黒いゴーグルを付けた少女は、ふう、と一息ついて、ハルルの隣に座る。


「お師匠様も言っていたのだ。たくさんの失敗を経験することが大切で、失敗すれば成長につながるのだ、と」



(この子、急に語り出してヤバいッス!!)



 ハルルと少女の間に妙な沈黙が流れてから、少女は小首を傾げて、ゴーグルを外した。

 透き通った白く美しい目がハルルを覗いた。


「……で、お前は誰なのだ?」


 まったくのマイペースから繰り出された質問に面食らいながらも、確かに名乗っては無いッスね、とハルルは頷いた。


「え、えっと、勇者のハルルと申しますッス」

「おお! そうだ! そういえば、今日は勇者さんと会う約束をしてたのだ!」


 少女は立ち上がる。ハルルよりもかなり背が低い少女は、自分の足についた煤をパンパンと払った。


「前回の地竜の鱗、ありがとうなのだ! ポムの名前は、ポムッハ。ポムでいいのだ!」

「ポムさん、ッスね。よろしくお願いします!」

「とりあえず、ハルルにお願いしたいことがあるのだ」

「? なんッスか?」


「この瓦礫の中から、報酬の入ってるお財布、探して欲しいのだ……」

 研究所の、もはや跡地を前に、ポムは目を潤ませて懇願してきた。



◆ ◆ ◆



「なるほどッス。つまり、ポムさん自身は、学者さんとは少し違う職業なんスね」


 城壁に居た見張りの勇者が貸してくれたスコップで焼けた木材を退かしながら、ハルルとポムは会話していた。

 ちなみに、城壁に居る見張りの勇者たちは、研究施設爆発が日常茶飯事らしく、爆発事故にも関わらず左程質問もされなかった。


 ポムの研究所がどうしてこの一番端にあったのか。

 中心方面で爆発させすぎて、追い出されたんじゃないか、とハルルは内心で思っている。


「そうなのだ! ポムは、実際は発明家とカテゴライズしてもらって構わないのだ!」

「で、そのお師匠様? が学者さんで、ここはその方の別宅なんッスね」

「そうなのだ。まぁ、ポムがもう数百回と爆破してしまったので、掘立小屋しか建ってない状態なのだけども」


 瓦礫を退かしながら、ハルルはポムのことを色々聞いた。

 ポムの年齢は十五歳。ほぼハルルと同年代。

 一応、勇者ギルドにも加盟しているそうだ。

 クエストはほぼ行かないが、武器防具の作成貢献という特殊功績だけで、五級勇者という役職にあるそうだ。


(特殊功績だけで五級、って、やっぱり結構凄い人ッス……)


 勇者階級の五級は、決して高い数字ではない。

 だが、魔物を討伐せずに五級まで行くのは、実力無しでは上がれない。


「あと、地竜の鱗、とても助かったのだ」

「あ、いえいえ。あれは──まぁ、えへへ。よかったッス」


 あれは私が倒したのではなく、などと言いかけてしまい、慌てて口を噤む。

 地竜を退けたのが、師匠の力だった、なんてバレてはならない。

 ハルルはぐっとこらえて、ジンとの打合せを思い出す。


 思い出せないので、ハルルはポケットに入っているカンニングペーパーを取り出す。


「地竜にやられて、キャンプまで戻されたが、その後、念の為、交戦地域に戻ると、運よく鱗が落ちており、それを回収して、届けたまでのことです。ッス!」


「なんでそんな祝辞読み上げるみたいになってんのだ?」

 ポムは、まぁ鱗が届けばなんでもいいのだ。と続けた。


「あの鱗のお陰で、色々と調査も捗ったし、その上、新しい武器の作成も出来たし、いいこと尽くしだったのだ! ありがとうなのだ、ハルル!」


「いえいえッス!」


 スコップで瓦礫を退かすと、何か固い物に当たる。

 四角い鉄の箱。これは。


「それなのだー! その箱が、お財布なのだー!」


 曰く、いつも爆発を起こすので、貴重品は鋼鉄の箱に入れているそうだ。

 箱をポムが開ける。

 ハルルの目が見開かれた。

 なんという、大金。大量の金貨。それに銀行の鍵。見たことのない宝石たち。リアル宝箱に、ハルルは意識を失いそうになった。


「ありがとうなのだ! では報酬の金貨五枚なのだー!」

「あ、ありがとうございますッス!」


 ポムッハから金貨を受け取り、ハルルはそれをポケットへしまう。

 そして、引き続き、スコップで瓦礫を退かし始める。


「あ、ハルル、いいのだ! ここからはポムが一人でやるのだ!」

「いえいえ。別にいいッスよ。他にも貴重品あるッスよね?」

「それは、あるのだが……」

「ある程度、見つかるまで一緒に探すッスよ~」

「い、いいのだ?」

「いいのだッス~」

「うう……ハルル、良い奴なのだーっ」

「別に、勇者なら当たり前のことッスよ~。ほら、早く見つけちゃいましょ!」


 瓦礫を退かし、箱を並べていく。

 その後、見張りの仕事が終わった勇者たちまで手伝いに来てくれて、なんだかんだで日が沈み切った頃、瓦礫の片づけがようやく終わった。


 

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