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【12】私は止めないぞ【19】

 


「魔王様。ヴィオレッタちゃんを見つけて来てくれたことには感謝しかありません! 

あんな芸術的な子、そうそういませんからねぇ。ぶひゅひゅ」


 頭をぼりぼりと掻きながら、脂ぎった顔でにたにたと笑顔を浮かべる太り過ぎの男、パバト・グッピ。

 肥えすぎた豚男パバトは、よだれを垂らしながら笑う。

 

『ほう。あの子のことが好みなのか』

 鎖に繋がれた狼先生は鼻を鳴らす。


「ええ! 強気な顔がいいじゃないですか! 

特に目が良い! 

瞳に映る意思は自分の目的の為には手段を択ばないという決意のある真っ直ぐさ! 

そして華奢な四肢に発育途中の小さな胸! 

脹脛の柔らかそうな膨らみっ! どれをとっても芸術のように美しいです!」

『へぇ、そうか』


「そんな目が、絶望に歪んで! 泣きながら懇願する! 

もうやめてと! 甲高い声でっ……ああ。

想像しただけで、ぐしょぐしょになってしまうぅ。

あの細い体、浮いたあばらと細い腰。

その背筋のラインを舌で弄って、それからワキも舐めたい。

ああ、その感触が気持ち悪くて泣くでしょうから、その涙も舐めとってあげたい」


『大した想像力だな』

「っと。きっもち悪い変態ねっ!」

「……お前の方が変態だろうに。そんな恰好で」

 筋肉ムキムキで上半身裸。乳首に星のシールを張ったヴァネシオス。

 なるほど、確かにこいつの方が変態だ、と狼先生も納得である。

「キーっ!! ぶっ殺してやるぅっ!」

 ヴァネシオスは暴れるが、鎖で縛られて身動きが取れない。


「そうだ。魔王様。取引しません? 

あの少女、ヴィオレッタを僕朕(ぼくちん)のモノにしたいので、協力してくれるなら。

貴方が魔王に戻ってもいいですよ」


「ファッ!? 何を言ってるんですパバト!?」


「魔王様なら知ってるでしょ。僕朕(ぼくちん)は性欲に忠実。

だから、あの子をくれるなら、僕朕(ぼくちん)はスカイランナーを裏切って貴方を助けても全然問題ないよ──いや、逆に」

 にたにたと脂肪分ある笑顔を浮かべた。


「逆に、あの子を守りたいなら、僕朕(ぼくちん)たちに従うべきかもしれないねぇえ。

このままだったら、僕朕(ぼくちん)、あの子の身も心も、尊厳すらもぐちょぐちょにしちゃうからさぁ?」


 唾液の付いた指で狼先生の頬を撫でる。べちょべちょと汚れていく。

 狼先生は真顔だった。

 そして、ふっ、と笑った。


『あの子を組み伏して犯したいなら、私は止めないぞ』


「先生!?」

 ヴァネシオスが大声を上げた。


「ほおおお! ぶ、ぶひゅひゅ!! 

やった! 僕朕(ぼくちん)があの子をしゃぶり尽くすのに協力してくれるなんて、話が分か──」


『勘違いするな。やれるものならやってみろ、という意味だ』


「ぶひゅ?」

『あの子と正面から戦って倒せばいいだろう。あの子は負けたならどんな運命でも受け止める』

「ほう。……器の性格まで知っているようで」


『ああ。あの子の(せんせー)だからな』


「ぶひゅひゅっ! じゃぁヴィオレッタを倒して!

先生の前で僕朕(ぼくちん)が個人授業を見せつけてあげなきゃなりませんねぇ!

泣きながら助けを求めてる姿を想像してください! 痣だらけになった白い肌もご一緒に!

甲高い声で嬌声と悲鳴を繰り広げながら、貴方を先生と慕う少女が真っ黒に朽ちていく様を!」


『パバト。悪いが、一ついいか?』

「ぶひゅ! 止めて欲しいと懇願ですか!」


『いいや。悪いな、と思ってな。私は、お前が期待するような反応をしてやれない』


「……ハァ?」

『どうにも私には想像力が欠如しているらしい。

そもそも……お前じゃあの子を手に入れられない』


「手に入れられない?」

『ああ。あの子がお前に負ける所、想像が出来ないものでね』


「……ほう。僕朕(ぼくちん)より、強いと?」

『そうだ。あの子は私の弟子だからな』


「……じゃぁ、現実で捕まえて……嬲って、すりおろす所、見せてあげますよ」



 ◆ ◆ ◆



 パバトとスカイランナーが部屋を出ていってから、しばらく経った。


「魔王様なのね、狼先生って」

『ああ、そうだな』

「……レッタちゃんとはどういう関係なの?」

『師弟だ』

「そうなの。じゃぁ、レッタちゃんが次の魔王になるってこと?」

『そういうのではない。あくまで、戦い方や生き方を教えているだけだからな』


「そっか……。じゃぁ、あのさ。レッタちゃんを器って、あの変態男が言ってたわよね」

『言っていたか?』


「……言ってたわよ。その、断片的な情報を繋いだだけ、だけどね。

レッタちゃんが器。狼先生はその姿が仮の姿って言ってた。

つまり……レッタちゃんに乗り移って魔王として復活する、とかなのかな、って?」


『……だとしたら?』


 沈黙が流れた。

 そして、ヴァネシオスはため息を吐いた。


「いいえ、違うわね。狼先生がレッタちゃんを殺してまで生きようって思わないでしょ」

『……何故、そう思うんだ?』

「え、そりゃ一緒に居たら分かるでしょ」

『ふ。そうなのか』

「なぁに、その良い顔」

『いいや。……さてとりあえず、結局どうするか。お前まで捕まってしまったしな』

 ──パバトの乱入で薄れてしまったが、ヴァネシオスは捕まった後、さらに鎖に巻かれて狼先生の隣に吊るされている。


 というのも、パバトの乱入直前に、部屋に入ったスカイランナーにヴァネシオスは襲い掛かったのだ。返り討ちにされたが。

 そして、スカイランナーはヴァネシオスも拷問するつもりで吊るした。

結果、スカイランナーがそれどころじゃなくなったので、今はただぶら下がっているだけになっていた。

 パバトのご機嫌を取る為に、何か『気持ち悪いこと』を探しに行ったのだろう。


『しかし……ダメだったのか?』

「ええ。持ってなかったわよ。定番なのにね。『鍵はワタスシが持っているので、欲しくば倒すのですよ、すふふふっ!』ってね」

 そう。スカイランナーを襲って捕まったのは作戦だった。

 狼先生の鎖は壊せない。なら、鍵を見つけ出そうと考えた。

 だが、作戦は失敗。鍵を彼は持っていなかった。

 鍵はどこかに保管されている。可能性が高いのはスカイランナーの部屋の中、だろうか。


『しかし……作戦失敗となると、二人とも救出待ちになってしまったな』

「え、どうして?」

『どうしてって、お前な。私たちは拘束されて──』


 じゃらじゃら。


 鎖が地面に落ちて、同時にヴァネシオスが地面に着地する。


「ふぅ。ちょっと厄介だったわね」

 狼先生は目が点になった。

 ヴァネシオスは鎖から抜けて、立っている。


『ふぅ。じゃない。どうやったんだ、え??』

「え。狼先生、お忘れかしら? (あたい)、肉体のプロ。治体の魔女よぉ?」


『いや、え? どういうことだ?』

 にこぉおと劇画のような迫力のある笑顔をヴァネシオスは浮かべ、左腕を見せた。


 ぐだんとあらぬ方向を向いた、その左腕。


「関節や筋肉を外して、骨の位置もずらす。

ちょっと痛いけどこうすれば素人のやった捕縛術なんて秒で解けるわよ」


『……お前、凄い奴だったんだな。ただの面白枠(いろもの)かと思っていた……』

「過去一酷いわね!? ま、これで、(あたい)は自由に動けるわ。

で、狼先生。(あたい)、どうするのが一番いいかしら?」

『どうするって、鍵を探すのが』


「それでいい? もう一つ選択肢がある様に見えたけど」

『何?』




「──マフラーの子。攫っちゃう、っていう選択肢、どうかしら?」






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