【12】おう。愛は覚悟だぜ。【15】
◇ ◇ ◇
『けっこー、遠くまで行くけど』
その言葉は。レッタちゃんと出会った日の言葉。
あ、厳密に言うと、出会った日の翌日か!
オレが死にかけた日に……レッタちゃんはオレの手当てをしてくれた。
なんで死にかけてたかって? 誰でも出来る気の利いた商売してて、逆恨みかな。
まぁ高級な薬の空き瓶に、市販の薬を詰め込んで激安で転売してたんだ。
高級薬が金貨一枚! お買い得! ってね。市販薬は銅貨数枚だから、まぁ相当粗利出たよ。
そしたら、それを使ったヤツの仲間だかがアレルギーだかで死んじゃったってさ。
それで復讐されてボコボコにされた。
見た目魔族だし、王国市民権も無いから殺されても文句言えないっていうね。ははは。
行っていい場所まで、一緒に行かせてくれるか?
その質問に対して。
『好きなだけ、一緒に居ていいよ』
そう答えてくれた。
そこから、レッタちゃんとずっと一緒に居る。
レッタちゃんの言葉だけは、オレ、忘れずに覚えてる。
あ、待って、先生の言葉も二割弱覚えてるからね?
『相手の名前を知ったら友達になれるの?』
レッタちゃんは名前なんか気にしない子だ。
いや、自分で名前を付けたがる。
まるで、手に入れたぬいぐるみに名前を付けるみたいな。そんな雰囲気で。
『顔を見たら分かる。その人の生き方の全てが、書いてあるから』
『私たちを『普通』なんて括りで語るのは、二度としないでよね』
そう。普通という括りをレッタちゃんは嫌っていた。
まるで、何かに……いや、『普通』という枠に弾かれたことがあるかのように。
そして、その時に、狼先生は言っていた。
『主にレアな術技を持った人物を探していて』
『『なんちゃら』を持つ『誰それ』。『ふんふふーん』を持つ森の『だれそれ』。
『なんだか』のルキ。それと術技を持たない人間の『だれだか』』
やべぇ。二割も覚えてねぇ。まぁレッタちゃんの言葉に脳のリソース全振りだからオレ……。
『臆さない。私は、決して、臆さない』
『臆したら、負け。死ぬしかない』
レッタちゃんは、狼先生の言葉を大切にしている。
そして、レッタちゃんの目標を……オレは聞いた。
『身長が違う』『声質が違う。もっと低い』『構えが違う』
『何より……何より!』『こんなに、弱いはずがない!』
ライヴェルグのことになると、彼女は感情をむき出しにしていた。
きっと……ただならぬ仲、なんだろう。
『生き返らせたいの』
勇者、ライヴェルグを生き返らせたい。
レッタちゃんは……いや待て、早計な考えは良くない。
ライヴェルグの彼女って決まった訳じゃない。そうだ、家族かも。
ライヴェルグの妹、とか。
ライヴェルグの……姉、とか、母とか、オレは馬鹿か???
いや馬鹿だけど。とりあえず……わかんないけど。
これ、考えると鬱になるから……もう考えるの辞めるね……。
『ずっと隣に居て、ガーちゃん』
『うん。ずっとだよ』『ガーちゃん』『情熱的?』
『手、大きいね。それに硬い』『似合ってる?』
『『私に敵対する者は、徹底的に殺す』』
『私は私の為に人を殺す。100%が私の意志だよ』
『むぅ』『くすくす』『──』(微笑んだ時の顔、忘れられないぜ!)
『友達らしくていいかな』『綺麗な花だね』
……オレさ。勉強、苦手でさ。
公式とか文法とか、何も理解出来なかったんだよね。
何で記号が急に数字面してんだよ。語学に帰れって思うし。
受け身ってなんだよ、武道かよって思っちゃうし。
自分のことを、『記憶力がない馬鹿』って思ってた。
でも。こうやって、思い返した時に、レッタちゃんの笑顔が、胸いっぱいに咲いていて。
ああ、人を好きになるって、こんなに記憶できるんだな。
人のことをここまで記憶したの、初めてだ。
マジで、もう無理なくらい、好きなんだよ。
好きって、意味わかんねぇのな。理由なんてねぇんだな。
ああ。……うん。
レッタちゃんが、この先、他の奴を好きだって、言っても。
一生、好きだわ。うん……覚悟、決まったよ。
◇ ◇ ◇
「ガーちゃんさん? どうしたんスか、ずっと空見上げて」
「覚悟決めてた。レッタちゃんと出会った日から、レッタちゃんの目的とか感情とかを全部教えて貰ってさ。オレ、あの子のことを大好きだって」
「あ、目的、やっぱり知ってるんスね」
「知ってる。だけど、言わないって、覚悟を決めた」
「……それは、言わないで隠し通せたんじゃ?」
「だろうな。でも、ハルルッスに負けた気がして嫌だって思った。
よくして貰ったしな。飯も美味しくなかったがくれたし。
だから、知ってるって伝えた上で、オレは一切、言わないぜ」
拷問されてもな。
目でそう伝える。あ、拷問するならやっぱり痛くない系でお願いします。
「……滅茶苦茶、覚悟決まった顔してるじゃないッスか」
「おう。愛は覚悟だぜ。オレは、ご、ごごご拷問されたって言わないぜ」
「拷問の時だけブレブレッスけどね」
「は、ははは」
ハルルッスは笑った。
「まぁ、でも、そうだな……戦争しよう、とかは思ってないと思うよ」
「そうッスか。それなら、まぁいいッス。あの子が、そういう意志がないなら、まぁ」
ハルルッスが少し落ち着いた顔をした。
それから少し間が空いた。
なんか気まずいな……。
「ハルルッスは、なんで勇者なったんだ?」
「え?」
「いや、別にただの興味本位で聞くだけだけど」
オレの質問に、ハルルッスは頬を掻いた。
「確かに、どうして勇者になったんでしょ」
「えぇ?」
「え、えへへ。まぁ、なるべくしてなった、という感じッスかね。昔から、勇者様には憧れてましたし。勇者熱狂者ッス!」
「ああ、そういうことか……」
「特に魔王討伐隊《雷の翼》は大ファンなんッス! 推しいます?」
「推しって……いや」
「ちなみに私の推しはライヴェルグ様です!」
「あ、ああ、そう……」
「……あっ、と。こんな話、魔王側の人にこういう話は良くないッスね。すみません」
「なんで謝るんだよ。別にオレ、魔王の腹心とかじゃねぇし気にしないけどな。
でもまぁ勇者にゃ興味ないけどさ」
「ますます魔王側の人の言葉とは思えないッスね」
「魔王側っつーか、まぁレッタちゃん側だからな」
「何ですかそれ?」
「んー……ああ。推し、かな」




