表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

192/842

【12】ドクロ発光ムラサキ茸【14】


 ◆ ◆ ◆


「ハルルッス、強ぇえ」

 銀白の髪の少女が着地した時、オレは思わずそう呟いた。

 ハルルッス。ああ、ハルルっていうヤツなんだけど、ッスって語尾なんだよね。

 自己紹介でハルルッスって言っていたから愛称(いじり)でそう呼んでいる。

 いや、オレもレッタちゃんみたいにニックネームを付けて呼びたくなった、ってところだろうかね。へっ!


 爆発する槍をくるくるとバトンのように回す。

 それが合図みたいでどんどん小さくなって、ネックレスサイズになった。

 ハルルッスの後ろで、巨大な猪が崩れ落ちる。


「えへへ。まぁ岩猪(これくらい)なら余裕ッスよ! 

でも、うちの師匠はこの百億倍強いッス!」


「マジか……でもうちのレッタちゃんは千億倍強いけどな」


「じゃあ師匠は一兆倍ッスよ」「十兆」

「千兆ッス」「景」「垓ッス」「……無限」「無限億ッス」「んだその単位っ」

 譲らないなっ! こいつ!!


「あ、分かれ道ッスよ! 立札があるッス!」

「ほんとだな。えーっと。謎かけに正解すれば正しき道。誤れば岩に踏み潰されるだろう。

だってよ」


「謎かけってどこに書いてあるんスか?」

「……これか?」

 オレとハルルッスの足元。ボロボロになって腐った木くずがある。


「……直感二択と思って選びましょ!」

「そうだな! 頭使うより全然いいな!」


「せーの」「「左」」「おお……一致した」


 左の道へ入っていく。お、良い傾斜だな。遠くに光も見える。

「当たりか!」「そうッスね!」

 がこん。ごろっ……。



「「岩が当たった!」ッスね!」



 ぎゃーーーと絶叫の声を上げて走って戻る。


 息を荒くして、間一髪回避。

「いやぁ、怖かったッスねぇ!」

「なんか……ルッスは、楽しそうだけどな……」

「その略し方だと一文字しか名前になってないッス!」

「ははは」


「まぁ、楽しいッス。実際、雪禍嶺(せっかりょう)地下大迷宮(ダンジョン)は憧れッスから」

「え、憧れなの?」

「そうッスよ! 多くの冒険者が挑んだ超有名ダンジョンッスから!」

「へぇ。オレ、全然知らねぇわ」

「そうなんスかー……」


「まぁ。でも、来たかった場所なら、楽しんだ方が得だな。

なんか記念に砂でも持ち帰る?」

「ガーちゃんさん……。あ、でも、砂とかはいらないッス」

「あ、そ」



 そして、オレたちは進む訳だが……。

 オレたちのいる中層は東側ダンジョンという名称で、罠だらけのルートだそうだ。

 主に二択。左右のどっちかが正規ルートで片方が罠。


「「ぎゃああーーーーー!」」 岩の針が足元から生えたり。

「「ひぃいいいいいい!」」 両壁から矢が飛び出たり。

「「やあああああああ!」」 ゾンビが襲い掛かってきたり。


「なんで二分の一を全部当てるんだよ! 奇跡かよ!!」


「ふぅ! 大変ッスね! このダンジョン!」

 良い笑顔じゃん?? 随分いい笑顔じゃん???

 疲れた……オレ、体を煙草に捧げてるようなもんだから、そんなに体力無いのよ……。


「ハルルッス……休憩を……煙草……吸っていいか……」

「えー、臭い付着(うつ)るんでパパっと済ませてくださいよ」

「はぁ……はぁ……。次こそ、安全な道を、だな」

 カシャンコ、とライターの蓋を開けて火を点ける。


 はぁああぁ……疲れたよ。煙草が染みる……。

 煙を目で追う。どれくらい吸ってなかったか。

 この地下に来てから何時間か吸わなかった。

 多分、半日吸ってない。すげぇ。禁煙大成功だな。


 ん……煙が! 煙が!! ……おお!


「ハルルッス! 煙、見てくれ!」

「なんスー? あ、煙が吸われてるッスね!」

 そう。片方の道に煙が吸われていく。風の道がある。


「煙追ったら安全じゃん!?」

「かもしれないッス?」

 煙草の煙の行く方に進む。

 お! 当たりじゃん!?

 いつもなら入ってすぐに罠が発動する。なのに、進めた!


「やったぜ、ハルルッス! ……あれ、ハルルッス?」

 振り返るとハルルッスが居ない。

 まさか、何か見落とした罠があって、分断され──



「ぎゃあああーーーーー!!」



「なんで隣の道からルッスの声がするんですかねええええ!?」


 引き返してみると、ずぶ濡れになったハルルッスが笑っていた。


「えへへ。水系の罠っした!」

「なんでワザワザ罠にかかりに行ってるの!?」

「え、いやぁー、せっかくダンジョン来ましたし、完全踏破を目指して!」

「罠に全部かかるのは完全踏破って言わなくね!? 

っつーか、まさか、さっきからの二分の一の罠を引きまくったのって……」

 ハルルッスは笑う。何言ってんスかー、と笑いながら──目が泳いでいる。



「ダンジョンクレイジー過ぎんだろ……!」

「えへへ。まぁ、それほどでも」



 それからしばらく歩くと……ハルルッスが、あっ! と声を上げた。

「安地ッスー!!」

「安地?」

「安全地帯ッスよ! ダンジョンにあるんスよー!」


 地下大迷宮(ダンジョン)には、安全地帯という場所があるそうだ。

 魔物が入り難い場所で、魔物が苦手な臭いの花とか、物理的に入れない場所とかを、安全地帯と呼ぶと説明された。

 ただ、安全地帯が必ずあるとは限らなく、安全地帯が無い場合は、見張りを立てて野営で休息をする。それが地下大迷宮(ダンジョン)の鉄則だそうだ。


「でも、ここ安地なのか?」


 紫色に発光する茸。よく見ればドクロっぽい模様も見受けられる。

「安地ッス! 『ドクロ発光ムラサキ(ダケ)』は魔物が苦手な臭いを出すんス」

「ドクロ発光ムラサキ(ダケ)。声に出して言いたくなる不思議な語感のキノコだなぁ……」


 紫色の灯りを放っている茸が群生している。ほんのりおばあちゃんちのタンスの匂い……。

「なんか、目が覚めたら体に寄生してるとかないよな。怖いんだけど」

「そしたら新種認定ッスね! 『ガーちゃんさん・マンドラダケさん』って名前にするッス!」

「不名誉っ!」


「実際はこの茸は安全ッスね。

本にも日誌にも安全って書いてありますし、何より魔物とかの足跡が見られないッス」

 横目で本と日誌をチラッと見る。


「なるほど。急に真面目な勇者っぽいじゃないか……。

さっきまでのぶっ飛びクレイジーっぷりは何だったのかと内心でオレはそんなことを呟きながら、腰掛けた」

「口に出てるんスよ、地の文(ひめたおもい)が」



 ◆ ◆ ◆



 ──そして、簡単な食事を済ませた。

 簡単すぎるけどな。緊急用の干しパンだけだから……。

 時間感覚が無くなるけど……もう夜のようだ。


 ハルルッスとオレは焚火を囲み、水が沸騰するのを待っていた。

 煮沸大切。蒸留水大切。


「ガーちゃんさん」

「ん?」



「魔王、復活させて、何がしたいんスか?」



 直球に、オレは固まった。

 どう、答えるのが正解か。頭が急にフル回転する。

「こういう時、上手く聞き出すのが本来の勇者なんでしょうけど……直球で聞こうと思いまして」

「……それは」


「ガーちゃんさんは、悪い奴には見えないッス」

「見た目、怪刻(ガーゴイル)の血が濃いけどな」

「それは気にならないッス。竜人(ドラゴニア)の子と友達ですし」

「そうか」

「……また、戦争を始めるつもりなんスか?」

 オレは、言葉に詰まる。

 どうするべきだろうか。何を、喋っていいんだろう。

 何も、語っちゃまずいよな?


   


 


 


 

◆ ◇没◇ ◆


 爆発する槍をくるくるとバトンのように回す。

 それが合図みたいでどんどん小さくなって、ネックレスサイズになった。

「逆封●解除(レリーズ)みてぇだな。それ」

「ほぇ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ