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【09】一つ違えていたら、負けていたかもね【21】


 ◆ ◆ ◆



 ──そして、今、ルキは指を振る。


 浮遊の魔法で体を起こす。

 足では立てない。何故なら、その両脚の義足はヴィオレッタによって破壊されたからだ。


 ヴィオレッタは、今倒れている。

 その右腕は、内部から爆発したように骨折している。

 ルキの拘束の魔法を無理矢理に突破する時、犠牲にした。


 そして、左腕は爛れている。

 靄舞に何かしらの属性を持たせることが出来ることをルキは覚えていた。

 一体、何の属性を付加して殴りかかってきたのか。


 ともかく、今すぐに立ち上がることは無い。

 ルキはそう判断し、銃を構える黒髪黒目の女──外見が変わったハッチと相対する。


 ボロの衣を上から羽織っているが、彼女の足元に血だまりがある。

 何か怪我か。血を流しているようだ。


「この子の仲間か?」


「……」

 彼女は言葉を発さず、頷いた。


「なら、キミごと拘束する。拒否権は無い」

 指でくるりと円を描く。ただそれだけの所作で黒髪黒目のハッチの足元が沼に変わる。


「っ!?」

 ハッチは焦ったが、それでも撃つべき場所は見えていた。

 ルキ──から左に逸れた所にある、車椅子。


 車軸を一撃で撃ち抜く。

 ──何の為に車椅子を壊した?

 その行動の意図を読み切れなかった。だが、すぐに気付く。

 追えないようにする為だと。


 振り返る。

 ヴィオレッタが、立ち上がっていた。


「しまっ──」


 ヴィオレッタの渾身の左腕を大きく使ったボディーブローが、ルキに命中した。

 咄嗟の一撃で、ルキは魔法防御が間に合わなかった。


 それでも、破壊力は無い。魔法的強化(ブースト)をしていない女の子の打撃だ。

 とはいえ、痛いものは痛い。

 ルキは石畳に伏す。


 ──気を抜いていた訳じゃない。危なかった。


「一つ違えていたら、負けていたかもね」

 起き上がり、目の前のヴィオレッタと目が合う。


「へぇ……賢者のおばさん……そう、思ったんだ」

 ヴィオレッタも、フラフラだ。


「ああ。まぁ、結果的に、ボクの勝ちのようだが」

 ──キミは、靄も魔法すらも発動出来ないだろう。


「……そう、かもね。でも……まだ。出来そうなこと、あるよ」

 それでも、拳を構えていた。


「まだやる気か。捨て身、か」


 ヴィオレッタは跳び込んだ。

 不意打ちを二度も貰うルキではない。


 ──その出血、その両腕。術技(スキル)もパンチも限界だろ。

 それほど決死なのは伝わるが、悪いが……どうやってももう攻撃を当てさせない。


 そう、打撃と魔法、そして靄舞(あいまい)も警戒していた。

 どんな死角から攻撃が飛んできても、ルキは防げていただろう。




 その術技(スキル)は『相手の敗北感』により効果を発揮する。




「『おねがい』。『質問に答えてくれる?』」


 術技(スキル)は、基本的に人一人に一つだ。

 だから──ヴィオレッタが術技(スキル)を二つ持っているなど、予想できないのは当然だった。


 ヴィオレッタの術技(スキル)は『屈服』。

 相手が『敗北』を認めた時、どんな命令でも下すことが出来る。

 だが、敗北感にも強弱がある。

 心が無くなる程の絶望感を伴う強い敗北感なら、相手に死の命令を下すことが出来る。

 逆に、負けてたかもね、程度の敗北感なら、質問に答えさせる程度になる。


「な、んっ!」

 ルキの世界がワインで浸されたように赤く揺らぐ。

 体が痺れ、沈んでいくような感覚。

 だが、辛うじて体が動かせる。


「ねぇ、生き残っている──……《雷の翼》の所属メンバーの居場所、教えて」


 雷の翼の所属メンバー。何故、この子がそれを聞きたがっているんだ。


 何がしたいんだ。まさか魔王復活後に復讐か?

 誰のことも話しちゃまずい。「雪禍嶺(せっかりょう)に」いる「サクヤ」や「ウィン」のことは言えない。

 な、何で口が勝手に。「王国参謀長」の「ナズクル」のことも。


 考えちゃダメだ。これはそういう催眠系の術技(スキル)だ。

 抗える。何故か分からないが、不完全な状態だ。


 無理矢理、仲間たちの顔が頭に浮かぶ。勝手に思考が進む。

 どうにか。止まってくれ。平和に生きようとしている、彼を。

 「ライ」ヴェルグの、居場所だけは。



「っぁ!」

 自らの顔に拳を入れ──ルキはギリっと奥歯を噛んだ。



 ヴィオレッタは、立ち止まっていた。

 今の瞬間に攻撃を入れれば良いのに、何故。


「今、ライ、って言ったの?」

「知らないよ」

 ルキの中に、たぶん発言したという意識はあった。

 だけど、それでも。

 拳より大きい石の礫をヴィオレッタに向かって飛ばす。


 しかし──その全てが、力を無くし、地面に転がる。


 ルキとヴィオレッタの間に降りた、黒い狼が──魔法を使った。

 なんだ、あの狼は。

 一目見て分かる。

 普通の狼ではないことは勿論だが──狼の目には殺気に似た邪悪なものが、宿っている。


 狼はパン、と地面に前足を打ち付けた。靄が生まれる。


「ま、待て!」

 水弾を連射した。

 だが、間に合わないのもルキは分かっていた。


 黒い靄にヴィオレッタと狼、そして黒髪黒目のハッチは包まれ──消えた。


「……黒い転移魔法だと」


 類似した魔法を、ルキは知っていた。

 それは、かつて……魔王が操っていた転移魔法。

 ルキは、心臓が掴まれるような感覚に襲われていた。

 



 ◇ ◆ ◇


いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!

昨日投稿分118部にて、描写中の人物名を間違えるという大変なミスがありましたので修正しました。

作者が混乱しておりました。

誠に申し訳ございません。


正 ハッチは混乱していた。

誤 ラキは混乱していた。


他、微細なミスや言い回しなど発見し次第変更して参ります。

また、誤字報告なども頂けていつも感謝しております!

今後ともよろしくお願い致します!

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