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63話 パラディーゾにて 3

 神殿の禁踏域に指定されている部屋の中で密会――正確に言えば謁見が行われている。

 神聖法国パラディーゾのトップのヴォルデウスと、彼が再会を待ち望んだ【アベル】と思わしき人物の謁見だ。

 もちろんソンクウのパーティーと、現在の教導主メーレも部屋にいる。


 それとヴォルデウスは生身ではなく思念体だ。

 部屋奥にあるクリスタルの中に、寿命を終えたヴォルデウスの本体が眠っていて、そこから抜け出た彼の思念体がアベルを本物か見極めるのだ。

 アベルたちがいる部屋の奥の広間には、息を殺した法国の兵士たちが控えている。

 いつもはニセアベルとわかっても罪を問わず放逐するのだが、今回だけニセアベルを罰するために、メーレの意を組んで控えさせている。


 もちろん兵士の存在など、目の前の白いゴブリンは気づいているだろうが。



「千年ぶりだな。延命にクリスタルに肉体を封印したのか、やるなヴォルデウス。もっともルーから転生法を聞いてるからいつでも全盛期の肉体で活動できるんだろうけどさ」


しぐさも話し方も、懐かしさを感じさせるゴブリンは恥ずかしそうに手を前に出しながら続ける。


「今回はおねがいがあってきたんだよ、ヴォルデウスもセルバスの夢は知ってるだろ? あいつは再会したとき、絶対俺に試合を挑んでくるからさ。このレベルが止まった状態を何とかしたいんだよ。なぁ昔のよしみで手を貸してよ」


「なぜ……わがはいを呼び捨てにする? アベルの伝記には出会った時からわがはいを【教主様】とよんでいたと書いてあるぞ。ニセモノは基本的な情報も知らぬのか」


 もちろん引っ掛けだ。伝記の内容は事実から遠く、エワード王国に都合よく脚色されている。

 たとえばアベルの出身がエワード王国になっていたり、魔王を倒しに行く理由が王からの要請に変えられていたりだ。

 極めつけは伝記のアベルは女ではなく男として描かれている。

 たまに女でアベルを名乗るニセモノもこうした引っ掛けにより、化けの皮をはがされることがあった。

 さぁ目の前の【アベル】は何と答えるだろう?


「パラディーゾができた時、俺が教主様だなって言ったらそう呼ぶなと言ったのはヴォルデウスだぜ。『立場は変わっても根は貴公の仲間だから』ってさ、忘れたのかい」



 思わず目頭が熱くなった。

 そうだ! ニセモノでは知らぬ情報を、本物のアベルならいってくれる。

 だがわがはいはそれでも信じきれない部分が心にある、このゴブリンはアベルと九割信じられるが、千年の間に多くのニセモノに騙されてきたのだ……確実にアベルと信じたい。


(すまないアベル。君は怒るかもしれません、ですが私はこの質問を使いたい。君がニセモノだとしたら私は二度と立ち直れないそんな予感がするのです。

 だからメーレは今回のみ、私のスタンスを曲げさせる偽物を罰するための兵士を用意したんですから。

 ソンクウが本物のアベルなら答えられるはずです。セルバスもレンタロウもルーヴァンもしらない、今からする質問の答えを)


 決心した私は口を開く。

「アベル私を――」

質問の内容はヴォルデウスガアベルと出会った時から心に焼き付いた風景です。

彼は生前も千年後の現在も、この風景を忘れませんでした。それだけ衝撃を受けたんです

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