61話 パラディーゾにて 1
今俺たちは神聖法国パラディーゾの大神殿の入り口にいる。
アベルの最初のパーティーの一人。ヴォルデウスに会いに来たんだが。
「紹介のないものは絶対に入れるなと今の教導主様からお達しがある。それと魔物が初代教導主様に会うなどと身の程知らずにもほどがあるぞ! 命は取らぬから早々に去るがよい」
「おとなしく聞いていれば姫様に対して、その口のききようは見過ごせません。私の手でわからせてやろうか」
これだ。トウ・ダーラを出発するときに懸念したことが当たった。
パラディーゾへ向かうパーティーを選んでいるときだが
「アメシスを連れてってよ」
ミラルカが提案したのだ。
詳しく聞くとカラットの連中は人間種の国と戦闘しかしてこなかったので、人間を敵としか見ていないという。
それではまずいだろう……なにしろアベルの考える【ななつのくに】は、すべての種族を受け入れる共存国家群なのだから。
これから先カラットの連中には敵だけじゃなくて味方としての人間種にも慣れてもらわないといけない。
だから魔王のアメシスをミラルカだけではなく俺も考えた結果、俺・アンダルシア・オウ次郎・サンのパーティーに入れてパラディーゾへの旅に連れていくことにした――はずだったんだけど。
入り口の兵士の言葉をアベルへの無礼と思ったアメシスくんは、さっそく騒動を起こしそうになってるわけで、誰か俺が言う前にアメシスをフォローするなり抑えるなりしてくれよぅ。
「アメシスさん僕も加勢するよ」
「ニャアも今のは見過ごせにゃいぞ!」
「我が君への無礼は許せませんね」
以外にもアメシスに気持ちが寄る者が多いとは。オウ次郎とアンダルシアは涼しげな声色だが両方ともすでに剣に手をかけている。
ニャハルは体から発する魔力が大気中のマナに影響を与えるほどだ。さっきまで晴れていた空がどんよりとした曇天に変わっている。
俺はハアとため息をつくと
「騒動はおこしたくないんだ。みんなの気持ちはうれしいけどおとなしくしてくれよ。」
いいながらアンダルシアとオウ次郎の背中をたたく。
ニャハルにはメッというと彼女は借りてきた猫のようにおとなしくなって、しゅんと目を伏せている。
いたずらを叱られた飼い猫を彷彿させるのだった。
それとサンは「終わったっすか?」と言いながら、避難してた遠くから帰ってきた。
そうこうしているとヴォルデウスの世話役という人が通り、俺はヴォルデウスに会いたい旨を言ったが叶わなかった。
仕方ないのでミコットの時と同じやり方でいこう。
俺は世話役に伝言を頼むとこの国の宿にいるとつたえて神殿を後にした。
セルバスとの試合に勝つために、最初の仲間のヴォルデウスを訪ねるアベル。
上手く会えるのでしょうか