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51話 応援席は一つ

 4試合目は3対3のチーム戦になる。こちらの選手をだれにするか考えてると、グォウライの応援席で騒ぎが起きていた。


 闘技場にくまなく配置されているトウ・ダーラの兵士たちは騒ぎに集まるが、手を出せずにいる。


 騒ぎの相手がトウ・ダーラ魔王の身内だからである。



「場所間違えたかなぁ。大兄貴が覆面してると思ったんだけど、違うみたいだし……」


 銀髪の男に後ろから抱きかかえられた形のセンセキは、


〈オイラに気配を感じさせなかっただとぅ。ただものじゃないな〉「兄さんあんた何者だい?」


 そう自分を抱く謎の男に質問する。あたりを見るとセンセキの魔王将は武器をとり全員が殺気立っている。


 下手に動けば次の瞬間に首をはねられそうな――一触即発の状況だった。



「そのお方に毛筋でも傷をつけてみろ」

「死すら生ぬるいと思える苦痛を、お前とお前の一族に受けさせてやる」


「おいおい穏やかじゃないな。俺はこのトウ・ダーラの魔王タイセイ様の身内だよ。ミラルカに伝言たのんでたんだけど、帰ってこないから迎えにきたのさ」



 いうないなや包囲から一瞬で抜け出したヒト三郎は、センセキをわきに抱えたままトウ・ダーラの応援席に走ってくるのだ。


「おーいキルくーん。僕はここだよぅー」

「ミラルカ見っけ。大兄貴と兄貴もみーつけた!」


 ミラルカが手を振ってヒトを呼ぶけど、俺はその後ろの殺気立つセンセキの魔王将を、どうするんだろう? と考える。


 天魔皇帝さんは後ろが見えてますよね、と心配になった。


 ほらーケンカ腰で取り囲んでるじゃん、まぁ当たり前の話なんだけど。


 ヒトのやつが口を開く。




「この人、大兄貴の知り合いですよね。連れてきちゃいました。どうせなら同じ応援席で試合を見ましょうよ」


 まわりが一瞬止まった後に、大きな笑いが会場に響く。


 ヒトを除いたトウ・ダーラとグォウライ国の選手全員がヒト三郎の豪胆さと、その言葉通り実行して成功させた実力を認めたのだ。


 なかなか大きくなってるじゃないかと、俺まで嬉しく思う。



 殺氣だっていたセンセキの魔王将たちも毒気が抜かれて「やるな兄ちゃん」「氣に入りました」と声をかけている。


 ヒトは盗賊の頭をしてただけあって人心をつかむのがうまい。案外ミラルカの国でいい王様になるかもしれないね。


 俺はミラルカをちらり、と見る。


「えへへー、僕もそう思うよぅ」


 俺声に出したっけ? 心を読んだんじゃないだろうな。


「アベルによく似た若者は誰です?」


「ルーヴァン、もう彼には天魔皇帝っていう相手がいるからね。あきらめてね」


 俺に似たヒト三郎に興味をもったルーヴァンに、オーリンジがしっかりと説明したみたいだ、いいぞオージ。


 この件でこじれた場合、相手は天魔皇帝だ。


 今やっているグォウライ国相手の戦争よりきついからな。


 今の時点でミラルカを敵に回すなんてのは考えられない事なのだ。




 ちなみにルーとニャハルの空間操作で、グォウライとトウ・ダーラの応援席は一つになり拡張された。


 戦争だけど親善試合のようなものなんだし、そこまで気にすることもないだろうと俺は思う。



「なぁあんた、ソンクウ様が好きなんだって、やめときなよ。それよりさ、あたしみたいな女はどう思う?」


 フローラはケシ太郎が気になるみたいだし、ベアンに圧倒されたガネットとアヤナはベアンにべったりと引っ付いてる。


 生真面目なアメシスはセンセキに「よろしいのですか」と聞くが、


 当のセンセキからは「トウ・ダーラの力はおいら達のものにもなるんだ。かまわんだろう」と返されていた。


 そのあとのセンセキは、顔を隠したトウ・ダーラの匿名選手と一緒にいる。


 俺は久しぶりだから二人だけにしてあげようと、その旨をみんなに伝えるのだった。





 さぁ4試合目だ。グォウライ国からモッガナイト、ジルコン、オニスの3人が出る。


 モッガナイトは負けたボルダーオと同じ、騎士風の男だ。


 ジルコンとオニスは丁寧な口調で話す優男といった見た目をしている。



 ではトウ・ダーラはというと、代表選手3人の登場に会場全体が揺れていた。


 無理もないだろう。前魔王ジクリコウを倒し今のトウ・ダーラを築いた3兄弟で、長い時が流れればトウ・ダーラ建国の伝説の人物として、語られることになる3人だからだ。



「ソンクウ、ソンクウ!! おお我らが魔王よ、神々がトウ・ダーラに遣わした正しさと真実を知る王の中の王よ! 迷える我らを安寧へと導き給え。勇者の中の勇者よ!!!」



 会場を震わす観客の叫びが鼓膜をゆする。正直耳が痛いぐらいだ。




 センセキと匿名は「かっこいいぞソンクー」とはやしたてる。


 俺は二人に茶化さないの! と応援席で突っ込んだ。


 さて、やるかい! トウ・ダーラ代表選手はソンクウ、オウ次郎、ヒト三郎の三兄弟である。

この日機を次回裏切ります。すいません。アベルは闘うべき相手がわかってるので、まだ出場してないんです。彼女はアメシスを見据えてます……そしたらこのアベルはなに?

次回でわかります

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