47話 そして戦争(大会)へ
レッドシュリンプ亭での会談から俺は大忙しだ。
十一人の代表者を決めないといけないし加えて、トウ・ダーラの闘技場を大きく拡張して、観客席をつくらないといけない。
トウ・ダーラだけじゃ作業の人手が足りないのだが、なんと戦争相手のグォウライ国と結晶国カラットから、大量に人員を貸し出してくれた。
おかげで10日後の戦争までには会場が出来上がるな。
「ソンクウどうよ、期日には間に合いそうか?」
「人員や物資が足りなければ、あそこの紫の衣装の男に言ってくれ。
私から、ソンクウのいうことは何でも聞くように言ってある」
俺の背中をやさしくたたいて親戚のおっちゃん……ではなく、
敵国のカロット王とその同盟相手のセンセキが話しかけてきた。
今回の戦争、名目上は戦争だが両国の力をはかる大会のようなものと、俺たちは認識している。
それというのも俺の留守中に、アンダルシアのドッペルに二人は通常の戦争はしないし、
民を巻き込むつもりはないと言っていたのだ。
目的はあくまで俺らしいし 。(戦争を仕掛ける言い訳で属国になれよーといってるが嘘なのがバレバレだ)
紫の衣装の男は、センセキの十魔王将の筆頭らしく他の魔王将よりも強いのがわかった。
「ソンクウ様、仕上がりはこちらでよろしいですか? 物資など足りなければ遠慮せずにお申し付けください」
腰の低い男で、今は敵なんだから様付けはやめろと言ったが頑として聞き入れなかった。
「ソンクウ様はセンセキ様の……いえ、けじめですから」と彼の中で譲れないところがあるらしい。
「あれでサポート種? やたらに闘氣と魔力が強いぞ、強すぎるくらいだ」
「サポート種で、まちがいないはずです」
「「なんじゃなんじゃ、あの小さいのがセンセキ様の――かのう? 誰が戦う? お前かガネット。いやお前ではアヤナ?」」
「口を慎め! ソンクウ様に対して不敬だぞガネット、アヤナ」
アメシスと俺のやりとりを見ながら遠くで話すのは、のこりの九魔王将だ。
魔王センセキが自ら鍛え、一騎当千の猛者として有名である。
いままでにセンセキとグォウライ国に手を出した勇者と魔王は、全員がこの魔王将の手で倒されているのだ。
今では手を出すものもいなくなった。こうして代表選手をみせるのは、センセキの余裕の表れかもしれない。
加えて「お前の集めた人材はこれに負けないのか? 見せてみろ」そういうメッセージが込められている。
俺がセンセキの方を見ると、あんにゃろめ、こっちにピースをしている。
こうして戦争……というより大会に向けて日は過ぎていった。
俺の代表も決まったぜ。
▽
大会当日トウ・ダーラ国は大いににぎわっていた。
闘技場に詰めかけたトウ・ダーラとカラット、グォウライの国民と兵士、それと噂で聞いて立ち寄った冒険者たちにより、闘技場はものすごい熱氣に包まれている。
俺達と敵の代表合計22人が舞台の上で相対する。
・ソンクウ ・センセキ
・ガウ ・アメシス
・オウ次郎 ・ガネット
・ルーヴァン ・アヤナ
・ケシ太郎 ・ダイヤ
・オーリンジ ・フローラ
・ニャハル ・ボルダーオ
・ミラルカ ・スフェーン
・ベアン ・モッガナイト
・ロンメル ・ジルコン
・匿名希望 ・オニス
両選手は舞台を降りると自分の陣地、応援席へと戻っていく。
正直負ける気がしない。
特にセンセキには絶対に俺たちが勝つだろう。センセキに勝つジョーカーに無理言って出場してもらったのだ。
俺を正体を隠した匿名希望選手がジッと見てるんだけど。
そんなに震えないでよ危ない試合には絶対に出さないからさ。
「ミラルカとルーヴァンも出場してもらって悪いな」
気にしないで下さいとルーヴァンが微笑む。
ミラルカは腕がなるぜーとヒトの影響かな? ヒトに似た動きをとっていた。
「ミコットに武器製造のノルマがなければ出てもらったんだけど、悪いなトーマ殿、おたくの厚意に甘えさせてもらうよ」
俺は応援席にいる冒険者チーム『ディアボロス・ホスティス』のリーダーに礼を言う。
うわさを聞き付けた彼らは、助っ人を名乗り出てくれたのだ。
ミコットが彼らを直接テストした結果、実力に不足なしの評価が出てチームに加わったと、こういうわけである。
「強者と戦うのはいいレベリングになりますから、こちらとしてもありがたいですよ」
「トーマさんの馬鹿。ここまでアベルに接近してどうなっても知りませんよ」
「あきらめてロンメル氏。トーマ氏はこうなったらとまらない」
なんか三人でヒソヒソやってるけど問題なさそうだなウン、接近って何ぞや?
と思ったが俺は気を取り直すと舞台を見る。
建前ではトウ・ダーラが自由のままか、それともグォウライ国の支配下に置かれるのかの試合が始まる。
テッキ国のような通常の戦争とは違う今回の戦争はソンクウとセンセキ両名ともお互いの国民に被害は出さないという共通の思いがあります。あとアベルはもうセンセキの正体に気づいてますし、考えも知ってます