44話 ソンクウの帰還
アンダルシアが魔法最奥の会の部室を荒らしている。
正確には消えたソンクウの手掛かりを探しているのだ。目にはうっすらと涙がにじみ息が荒い。
手がかりを見つけられなかった彼女は別の場所を探しに行く前に、上を見上げる。その後、決意の言葉を口にした。
「私は神々に誓う。ソンクウ様に二度と会えなくなったら、私は犯人を見つけ出して、この手で必ず報いを受けさせる!!」
自分を救ってくれた恩人、そして……わが身を引き換えにしてもいいと思える私が愛する人。
ソンクウのいないこれからの人生は考えられないとアンダルシアは思った。
今しがた神に誓った言葉も虚空にむなしく消えたいま、他の場所をさがそうと戸に手をかける。
そのときだった━━━。
「アンダルシア。迎えに来てくれたのかい?」
聞きなれた声がしてソンクウが姿を見せる。転移で帰ってきたのだが顔が赤い。
どうやら聞かれたみたいだった。
「ソンクウ様ーー」俺にパアアと表情を明るくしたアンダルシアが飛びついてくる。
話を聞くと俺の気配が消えたとニャハルに聞いたらしい。
いてもたってもいられなくなったアンダルシアは、ここまで俺を探しに来たんだとか。かわいい子だな。
アンダルシアの誓いを『聞いてしまった』俺は抱き着く彼女の頭をよしよしとなでてあげた。俺にはもったいないくらいだぜ。
「にゃっ!? マスターの反応ありにゃ」
ニャハルのことばを聞いてミコット、ミラルカも安堵するのだった。
~~~~
さて学園で起こった事件だが解決した。俺は犯人を突き止めやっつけたのだ。
ルーヴァンに連絡を取って彼女が後の処理をした。俺たちはルーヴァンの部屋で報酬を受け取るまで待機している。
「アップルなぁ事件が解決したのはいいけどさ、ミコたちにも何があったのか教えてくれ」
「にゃあ。ニャアも知りたいぞマスター」
「アンダルシアには話したんでしょ? 僕たちにも聞かせてよ。いいよね、ね、ね」
ミコット、ニャハル、ミラルカが俺の腕をとって体を揺らす。いいでしょ~ねぇねぇ~と、子供みたいに見えただろうな。
俺はそんなことされなくても話すって、あのあと何が起こったかというと。
▽
〈※:過去〉
俺は円卓の魔力残滓に触れた後、他の次元へと転移していた。
あの魔力残滓に一定量の魔力で触れると条件が満たされるようだな。
本当は痕跡をすべて消して、会の人間しか知らない秘密の通路になっているんだろうが、今回は時間がなくて痕跡を残したのが運の尽きだぜ。
犯人を見つけてふん縛ってやるか!
俺は目の前の暗い通路を進んでいく。岩肌がごつごつとしていてどうやら岩山をくりぬいて作ったアジトみたいだな。
異界と俺たちの世界をつなぐ転移の魔法といい、俺がみた『学園の生徒のレベルでは無理』だ。
犯人の見当はついてるんだが……さて。
通路の先は広間になっていた。奥の方に大型のポッドが見えるが、中は培養液と行方不明の生徒が全裸で入れられていた。
見つけたぞあれ? 若い有望な教師がいないんだけど
「なんだばれちゃったんですか」
俺は声がした方に振り向く。すると俺たちがつけていたボサボサ髪のあの少年が立っていた。
それだけじゃない魔法最奥の会の会員7名がそろっている。「むご~~」くぐもった声に目をやると、さるぐつわで縛られた教師が床に寝かされている。
事件解決のピースがそろったな。犯人もわかったしよ。ボサボサの少年が話しかけてきた。
「見逃してもらえるなら学園に返してあげますよ。もちろん忘却魔法をかけてですけどね。無駄な犠牲は好みませんから」
俺の舌出してべーの返答にボサボサの少年は「では戦うしかないようですね」というが無理するな足が震えてるぜ。
俺は剣を抜くと目標――犯人に向けて一直線に剣を振り下ろす。
そう縛られている教師に向けてだ。ところがよけられてしまう。
縛られたように見せていつでも自由になれたんだから当たり前だな。
「危ないじゃないですか僕は被害者ですよ。剣を向けるなら犯人にでしょう」
「だからお前であっているじゃないか。俺は嘘が効かないんだ。魔法最奥の会の子供たちは闘うと言うのに闘氣の一つも見せなかったぜ。
そんな中で縛られてるお前からは殺氣があふれているしね。
決定的なのは異界を転移でつなぐ魔法。このレベルの魔法だと最奥の会の子供たちでは制御できないのさ」
俺は教師に剣を突きつけて続ける。
「事件のあらましはこうだ。犯人のお前は最奥の会を手ごまに使って自分の計画を進めるが、学園側に行方不明者が多発している、と気づかれてしまう。
焦るお前は、捜査に名乗り出て姿を消すことにしたのだろうね。あとは裏で計画を進めればいい。
一つ言っておくけどな、ルーヴァンはとっくに気づいているぜ。理由は知らんがお前を泳がしているだけだ」
理由も多分、俺に関係してるんだろうなーと実感する。なぜならルーは俺に解決させたがっていたからだ。
「僕たち助かるの?」と最奥の会の生徒が言った。かわいそうに脅して使われていたんだろう。
「あんた達は俺の後ろにまわれ。大丈夫さ、俺が絶対にお前たちを守ってあげるよ。子供を貴様の欲望に利用しやがって。来なよ卑怯者、お前の相手はこの俺だ!!」
「計画の内容までは知らないみたいだが、君が言ったとおりだよ。サポート種君」
そう言うと犯人の教師は俺に特大の殺氣を向けてきた。
ルーヴァンは今回の事件の犯人はわかっていました。事件をアベルに解決させたかったから放置したんですけど、理由は次回でわかりますよ
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