44話 ソンクウ行方不明
俺達は魔法学園で続出している行方不明者を調べている。
いま魔法最奥の会の人間を追跡しているのだが。
「こっ、ここが部室だよ」
部屋の中は魔法書の棚で囲まれていて特に変わったようなものは見られないな。
ではほかの箇所はどうだろう? 部屋の真ん中に、大きい丸型の机が置かれている。
その円卓に隠し切れない魔力の残滓があった。
慌てていたらしく雑に消した痕跡は一見罠のようにも見える……。
捜査にきた若い教師もこれに気づいたはずだけど。
その彼は行方不明になっている。
罠だとするとデストラップ、それか転移のどちらかだよね。
俺は昔の経験により全ての罠を破れる。
わざとはまって脱出する方法を繰り返して身に着けた技術だが。
仲間たちには「くらわなくてもお前なら、罠を見破れるだろう。いいかげんにしろ」とあきれられた。
俺にミラルカとニャハルが念話で確認してくる。
この後どうするかい?……決まっているさ。
「ごめんよ。会の決まりで部外者だけを部室に残しちゃいけないんだ。僕と一緒ならはいれるからね。
本当にごめん」
「にゃあ。こっちも目当ての魔法を見せてもらったし、氣にしにゃいで」
「今度お礼するからね。ありがとー」
ニャハルの笑顔に見とれながら、ミラルカに両手をギュっと握られた少年の顔は締まりのない顔に変化している。
授業開始前の予鈴が鳴ったので教室に戻らないといけなくなったのだ。
ミラルカ、ニャハル、ミコット、アンダルシアは俺の指示で教室に戻っていった。
なぜそうさせたかというと。
仲間が一人でも、授業に出なければ犯人に
『いない仲間が事件を探ってますよ』と疑われるからだ。
学園ではペット。
それもいなくなっているペットの俺なら自由に動けるというわけさ。
俺は誰もいなくなった部室を調べまくる。
やはり他の箇所に怪しいところは感じられないな。
俺はそういうことならと円卓の魔力残滓に手を伸ばす。すると━━━。
▽
教室で体操着に着替えたアンダルシア達は外で実技を受けていた。
実戦で腕を磨いてきた彼女たちからすると、あくびが出るような内容だが、潜入している以上は実技もちゃんとこなすようにする。
ただ手加減を間違えて、必要以上の結果を出してしまうのは仕方がないだろう。
ミラルカとニャハルの神越え達は細かい調整が苦手なようで、彼女たちが出した結果に周りの人間は、はじめこそ「すごい」「さすが」と称賛していたが最後になると口を開けて絶句するだけだ。
ミラルカもニャハルも、自覚はあるが難しい。
それでなくともミラルカはソンクウと戦った時に、火魔法の出力を間違えて殺しかけるという前科がある。
メートル単位の物差ししか持ってない彼女たちが、一ミリをはかれと言われているようなものだと言えば、わかりやすいかもしれない。
実技をこなしていたところで、ニャハルが強めの火魔法で的をすべて消し炭にしてしまった。
巻き込まれた教師は、洋画の主人公をほうふつとさせる横跳びをした後「ニャハル君どうしたんだい」と聞いてきたが、その目には涙がにじんでいる。
「おいおい猫ちゃんたのむぜ。周りのレベルに合わせないといけないの、わかるだろう」
「そうだよ。僕だって苦労してるんだから! ニャハルも頑張ってよぅ」
「ニャハル殿……どうかされたんですか?」
ミコット、ミラルカの後にニャハルの様子に気が付いたアンダルシアが心配そうに聞いてきた。
「マスターがこの学園から消えたにゃ」
聞くと同時にアンダルシアは魔法最奥の会の部室へと駆け出した。
授業などは問題ではない。
王であるソンクウが受けた依頼が大事なのもしっかり理解している。
それよりも大事なのはソンクウの身だと、アンダルシアは理解しているからだ。
アベルはルーヴァンたちと組んでた時も単独で動くことがありました。ヴォルデウスが『うちのじゃじゃ馬がおらんな』と気づいても心配はしません。アベルの強さと彼女が必ず事件を解決してきたからです
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