41話 千年を超えた再会
魔法学園の玄関の中で冒険者のパーティーがいる。
白いゴブリン、アンダルシア、ニャハル、ミコット、ミラルカの5人。
俺と仲間たちである。
俺たちはここの教師に事情を話し回答をまっているのだ。
魔法使いの三角帽をかぶった老婆がパタパタとローブをたなびかせて、こちらへ小走りしてくるのが見えた。
「お待たせしましたソンクウ、いえアベル・ジンジャーアップル様ですね。私はルーヴァンの弟子です。師がお待ちです。どうぞこちらへ、私についてきてください」
そう言うと老婆は何かの呪文をつぶやく。
目の前の空間がぐにゃりと歪曲して別の空間が口を開いた。
奥を見ると海に浮かぶ島が見える。
その砂浜には砂遊びで作った山とミニチュアの家が置かれてるのがみえる。
島の中央には高い塔があった。
「人間種で空間をあやつれるのか、すごいよー。ねっね」
「センスがないやつは生涯かけても無理にゃのに、千年そこらしか生きてない人間種がたどり着いているのは驚きにゃ」
目を輝かせたミラルカと俺の肩に乗った猫の姿をしたニャハル。
ともに強さの世界ランキングトップ10に入る魔帝と獣帝は、素直な感想を口にする。
俺が知ってるルーより、めちゃくちゃ強くなってるな。だがアベルは驚かずに昔の仲間の研鑽を喜ぶのだった。
そして俺たちは老婆にいざなわれるまま空間へ入る。
体に感じる暖かな日差しと足を濡らす波。
ジリジリと太陽に焼かれた砂浜の熱気はどれも幻覚ではないとわかる。
「本物ですよ。そうは言っても【本物の】アベル様ならご存じでしょうけどねぇ。この『魔法使いの島』のことも『塔』のことすら……。私の案内はここまでです。
我が師ルーヴァンがお待ちです。どうぞお進みください。アベル様なら勝手知ったる島のはずですからねぇ。」
それだけ言うとルーの弟子は元の空間へと戻っていった。
「先生また遅刻って言われるわぁ~授業に遅れちゃう」と呟きながら。
「ミコも島のことは知ってるけど、ルーは偽物のアベルを警戒してるみたいだな。アップル (アベル)に任せるぜ」
ミコットは俺を見て目配せする。
ミコットもニセアベルの被害にあってるからか気持ちはルーヴァン寄りの様だった。
そうだな、なにしろ千年待たせたんだ。
これ以上、待たせるのも悪いからね。
島の真ん中に雲まで伸びる塔がそびえている。
塔の入り口に扉はなく開いた暗闇は侵入者を飲み込む口のように見えた。
さあ、行こうか━━━。
俺を危険にさらすまいと先頭をアンダルシアがあるいて、塔の中に入ろう――とするのを俺は引き止める。
アンダルシアは事情を知らないから無理もないね。
とはいえ、さすがに神越えの二人、ニャハルとミラルカは気づいていた。
「これ凄くいやな気配だよ」
「にゃあ、仮に入っても、空間に干渉できるニャア達なら出れるんにゃろけどにゃ……」
俺はネタばらしをする。
「そっちは侵入者用のトラップだぜ、入ったらルーの魔法様式を解呪するか、空間操作をしないと永遠に出れないぞ。
あのおばあちゃんは進めといったけど、『どこへ』とは言わなかっただろ? 侵入者のほとんどは目の前の塔と思って、塔に入っていくけどさ」
「我が君~も~。それではルーヴァン殿はどこにいるんですかー。
塔に他の入り口が隠されてるんですか?」
すんでで命拾いしたアンダルシアが、俺の腰に抱き着きながら聞いてきた。
焦りで上気したほほが赤くなってて色っぽい。
涙ぐんでて、ちょっとかわいいなと思ってしまった。
俺はルーヴァンのいる本当の塔を指さす。そう砂山の横の建物だ。
「あのミニチュアの家がルーのいる本当の塔さ。ルーは千年前から空間に魔力で干渉できてたからね。
ミニチュアの家に見えるけど、あの中はいくつもの階層に分れた塔になってるんだ」
そのとき島全体――というより俺たちの頭の中に念話が響く。
「正解です。魔力の流れでひょっとしてと思いましたが、あなたは本物のアベルなのですね。どうぞ中へ、懐かしいあなたの顔を私に見せてください」
俺たちは言われるままに『塔』へ入った。
方法はミニチュアの家に触れながら魔力を流すことだ。
▽
中に入ると1階ではなくいきなりルーのいる部屋に空間を操作して連れてこられた。
千年ぶりか……。俺に胸と腰の大きい三角帽をかぶる物腰の柔らかい女性が、話しかけてくる……。
「おや? 余裕からでしょうか? 妙な種族を選んで転生しましたね。ねぇアベル」
「ひさしぶり。好き好んでサポート種にならないって。……あんたは変わらないね……ルーヴァン」
それは、はじまりの勇者と仲間の魔法使いの千年を超えた再会だった。
ルーヴァンはアベルを愛していますがアベルは気づいてないです。ルーは結構アベルのか〇だを弄り回していました。ヴォルデウスに止められましたけどね
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