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38話 奇妙な三人組とワーグナー一門

 ガタンゴトンと旅人を運ぶ魔導汽車の中で。

 汽車とは言っても見た目がそうなだけで煙をはくことない。

 魔力で動くクリーンな代物である。

 俺たちは今トウ・ダーラを出国し、この乗り物で鍛冶屋の町アナトグラムにむかっているのだ。

 その最中に妙な三人組に声をかけられる。

 話しかけられたとき俺(魔王)の身を守るために、アンダルシア、ケシ太郎、ベアンの三人は意識のみ臨戦態勢をとっていた。

 いつでも動けるようにだけど。

 相手に敵意がないことを知った今は、なりゆきに任せている。


「白いゴブリンも珍しいけれど、あんたはサポート種だろう? なのに剣を持っていてさ、よっぽど戦闘に自信があるんだろう?」

 

 俺に赤と黒が混じった髪の人間種はこんな調子で陽気に話しかける。


【邪気は感じない】し悪い人間ではないと断言しておこう。

 しかし彼は仲間の常に眠そうなジト目の少女と、長い髪をした少女? いや、こいつは男か。

 見た目が女にしか見えない彼に催促されて引っ張って行かれた。

 う~ん悪い予感じゃなくて何だろうこの感じ……。



「なかなか陽気な若者たちでしたな」


「ベアンもそう思うかい、俺も同じ印象をもったよ。それとなんだろうね。この感じ……また会うような氣がするぜ」


 一方で引っ張って行かれた人間種の男は、仲間からグチグチと責められていた。

 接触しなくていいところを、この男のわがままで接触したからである。


 長髪の少年ロンメルはむくれた顔でいう。

「いきなり七勇者にからんでどうする気だったんですか! アベルが罠やうそ、それと幻術を見抜くぐらい鋭い洞察力をもつことは、魔神から聞いてたはずですよね」


 ジト目の少女アリスも同じ意見だ。

 事を荒立てるなと、黒と赤い髪の少年トーマに詰め寄る。


「トーマ氏に言い訳があるなら言って。アリスとロンメル氏を、不快にさせたんだから説明する義務がある」


「だってよぉ、あのゴブリンが今の世界をつくった、あのアベルなんだぜ。実物がどんな人間なのか見ておきたいじゃん。それに向こうはまだ二人しか見つけてないみたいだしよ、四人そろえてる俺たち【十英雄】のほうが数では勝ってるだろ? 心配しなくても戦争はまだ仕掛けねーよ、魔神の封印も解いていかないといけないしよ。な!!」


 「なにが、な、だ!」

 反論されてトーマはアリスとロンメルからポカポカと叩かれるのだった。

 手加減されているため痛みはないが、その中でトーマは思う(あれが……あれがアベルか……)と。





 汽車を降りた俺たちは、アナトグラムの前に立つ。

 入口なのに町のあちこちから鉄をうつ金づちのリズムが聞こえてくる。

 正直気持ちがいい音だと思う。

 最初は小さな村にすぎなかったアナトグラムは鍛冶王ワーグナーとその弟子たちの手によって莫大な利益を上げて、一気に都市レベルになったらしく。

 この町に来る冒険者は、多くがワーグナー一門に用があってくるのだ。

 つまり武器か防具を鍛える依頼でである。


「鍛冶王が打った武器は、小さな町が買える値段がすると言いますからね。

 本人は無理でも弟子の誰かが、うちに来てくれるなら、製造業を本格的に始められるはずです」


「うむアンダルシア殿の言う通り。うちも鍛冶師を動員して製造はしてますが、よそに輸出できるほどではありませんからな。

 武器はうちの軍に持たせるレベルです」


 アンダルシアとケシ太郎の会話は、個人ではなく、国に携わる副王と軍の最高責任者のものだった。

 魔王の俺としても、ここは鍛冶師をおさえて、うちに来てもらいたい。


 俺はワーグナー一門に、知り合いの鍛冶師なんて一人しかいないわけだけどさ。

 ともあれ行動あるのみなわけで……俺たちは一直線にワーグナーの製錬場へむかった。





「親方ぁ、トウ・ダーラ国の使者がきてますよぉ」

「どうせ武器をつくってくださいって催促だろうがぁ。ひと月先まで予定びっしりで無理だ帰ってもらえ」


「わっかりましたぁ! お客人そういうわけです、お引き取りください」



 忙しいのはわかるけど取り付く島もないね。

 たしかに周りを見ても製錬場フル動員で休む暇もないのがわかる。


 そしてここで生まれる武器が、名作ぞろいなのもこの目で見れた。


 ことわられても俺はここまで来て手ぶらで国に帰るつもりはない。切り札(カード)を切らせてもらうぜ。


「下の鍛冶師が忙しいのはわかったよ。でもさ、中間管理職の人とか暇そうに見えるよね。

 あの人たちには頼めないの?」


 この質問に答えるのは、俺たちを案内してくれた下の鍛冶師さんだ。


「旦那そいつは無理ですよ、中間の親方連中は下が鍛造した武器にミスがないか見る役目もあるし。なにより上に行くほどツテというか、面識がないと武器は打ってはくれませんぜ。

 鍛冶職人は氣に入った人間にしか打たない。そんな人ばかりですから、むろんそのスタンスでうちは商売繁盛してますからねぇ。

 一見さんはたとえ国王でも武器を打ってもらえることはないんでさぁ」


 下の鍛冶師は腕を組むと、足でリズムを取る。


「大体旦那も前もってアポとらないといけませんぜ。いくら田舎の王様でも事前のアポは常識でしょうや」


「うんうん。その通りさ」

 なるほど気に入った奴にしか卸さない。


 そのこだわりは理解できるね。


 確かに気乗りしないで作った武器なんて、なまくらも、いいとこだろう。

 ミコットは昔に言ったとおりに、自分の城をつくったんだな。


 脳裏にミコットの宣言が浮かぶ。

「ミコはこの旅で得た経験で武器と防具をつくりまくるぜ。ワーグナーブランドは、ミコが気に入った奴にしかおろさねぇ。

 オージ、アップル、ダンベルマン、ジョフレ、アンサリーお前らも武器が欲しいときは、ミコのところに来いよ。

 時間ねんげつがたっても、ミコが気に入るお前達が変わらないままなら、最優先で武器を鍛えてやるからさ」


 ミコット使わせてもらうよ。

 俺はカードをきった。


「鍛冶師さん一番上の人に伝えてよ【年月が経っても林檎は腐ってない。その目でアップルを品評されたし】ってさ。ああ、あとオレンジバナナもいるぞって伝えてね」


 俺の意味不明に聞こえる言葉に、はぁ?

 と気のない返事をのこして鍛冶師は伝達にむかう。

 少し待った後。

 鍛冶師さんが、慌ててこちらに駆けてくる。

 それから何度も謝られ、自分は不作法で口の利き方も知らないと、鍛冶師さんの言い訳が聞けるのだが。


 こちらとしては別に失礼なことをされた覚えもないので、気にすることもなかった。


 そして鍛冶師さんが最後に言った言葉。

「ミコット・ワーグナー様がお会いになります」の内容は、俺が予測した内容そのままだった。

七勇者に対する魔神につく裏切者たち。十英雄の登場ですがトーマ、アリス、ロンメルは十英雄の中でも異端の存在です


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