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35話 ヒト三郎の告白

 俺はミラルカへ声をかけた。

 身に余る野望を持つ馬鹿へのお仕置きなら十分だろうし、ここまで痛めつけられたらテッキ王も世界征服なんてもう考えないだろうね。

 我ながら今の魔帝によく声をかけれるなと変なところで感心した。



「ミラルカもういいよ十分だ。許してやってくれ」


 顔を横向けたミラルカと目が合う。

 俺がみたこともない魔王の目だ。

 敵対した者を許さず殺意だけの目。


 正直俺を認識する理性があるのかも疑わしかったが

 どうやら大丈夫のようだ。



「ソンクウは甘いよ。僕は当事者ではないけど加勢した側だから言わせてもらうね。こんな奴は、君ほどの人間が気にかけてあげるやつじゃないんだよ。第一、テッキ王が君たちを奴隷にするってほざいていたのは、君も聞いているだろう? そんな奴にソンクウ・ゴウジャは情けをかけるの?」

「おうとも! 情けというより、テッキ王は一国の魔王に戦争を仕掛けた形だからな。

 ちゃんと賠償してもらわないといけないだろ?」


 本心からのことばだ!! テッキ王がソンクウを魔王と知っていたか、どうかは関係ない。


 魔王を攻撃しました。

 でも知らなかったから許してくれますよね。

 なんて言い訳は通らないからだ。


 まぁテッキ王を助けてやろうという気持ちが、あることも否定はしないけどね。

 

 ミラルカは俺のことばに少しあきれて溜息ためいきをつくと。

 浮いている生首(テッキ王)の耳もとにゆっくりと脅しをこめて言葉をはいた。

 声色にこれ以上ない怒氣を含んでいる。



「そういうことだよ、ソンクウ殿が道理も知らない馬鹿にでも。情けをくれるやさしい人間でよかったね、でもお前が手にした奇跡はこの一回だけだ。【同じ状況になったとき、僕はお前を二度と見逃さない】言ってる意味がわかるな?」


 生首の状態から元の姿に回復してもらえたテッキ王は、恐怖でガチガチと歯が鳴りっぱなしになってる。

 しゃべれなくなっているが何度も首を縦に振っていた。

 その目からは、涙があふれて首を痛めるんじゃないかと思うほど早く首をふる間抜けな姿を笑うものはいなかった。


 ミラルカの手でテッキ王と敵軍の心は

 完膚なきまでにボキッと折られていたのだった。



「さぁーて、もぅ、かえろうかな……」


 小さくつぶやくミラルカは役目を終えたという感じで帰ろうとする。


 俺たちの方には顔を向けずに、いや違うか。

 正確にはヒトの顔を見ないですむように……だね。

 当然そんなミラルカに不義理はするまいと、ヒト三郎は「ちょっと待つっすよ」と声をかけてミラルカへと歩いていく。


 そしてミラルカの後ろに立った。


「ミラルカこっちを向いてくれっす」



 彼女はふりむかずに顔をブンブンと横に振る。

 あわせる顔がないと、おもっているんだろうな。



「どうする気っすか」

「ヒトは何も考えないわけじゃないから、平気だとは思うけど」


「ニャア」


【ゴブリンとゆかいな仲間たち】のメンバーはそれぞれ心配している。

 俺も同じ気持ちだ。

 そしてオウが言うように、ヒト三郎は考えなしに行動するような馬鹿ではない。

 ミラルカのことはヒトに任せて大丈夫だ。


 俺には確信があった。



「いいから俺を見ろっす」


 ヒトは言いながらなかば強引に、ミラルカを振り向かせて肩をつかむ。

 お互いの顔が近くなり、ミラルカは自分の体温が一気に高くなるような錯覚をもった。

 その後のことは生まれてきてよかったとミラルカに思わせる出来事だった。


「俺の顔を見てどうだ? お前を怖いと思ってる顔か。俺の目はどうだ?

 俺達を守ってくれた優しい、しかもとびきりのいい女を怖がるふぬけの目か!!」


 ミラルカは思う。

 人間の連合軍を倒した後に僕に向けられたあの目と違う。

 僕を少しも恐れず真っ直ぐに見てくれる目だ。

 僕が守った人たちに、してほしかった目だ。



「ぜんぜん……こわが……って、いで……す」


 赤面した顔で何とかそれだけ絞り出す。変に思われてないだろうかと、ドキドキが止まらない。



「はっきり言うぞ。俺もミラルカが好きだ、お前よりはるかに弱い男だけどな。それでもお前はそばにいてくれるか、いや! いてくれ!!」

「うぇ、あっ……はぃ~~~ッ」



 ヒトの突然の告白になんとかかんとか返事を返したミラルカ。

 いつの間にか両想いになってたようだ。

 ヒトが言うようにあの天魔皇帝に微塵も恐れをもたない態度と顔は、オウもそして俺も大変誇らしく感じている。


 不意にオーリンジが俺の耳元でささやいた。



「やっぱり彼はアベルによく似ているね」


 俺は何も言わずに大きくうなずく。

 そうとも。

 あいつは俺によく似た自慢の弟さ……。

 さっきから、俺の体がガクガクと揺れているんだけど。



「姫~~~おめでとうございます。キルレイン様、姫様をどうか、よろしくお頼みしますぅ」


 じーさんじーさん。

 俺の肩で感極まって泣くのとさぁ、揺らすのはやめてくれないかい?


 俺の姿は、左肩にオージの顔と右肩にフェンがすがりつき、どう決めようとしてもしまらない姿になるのだった。

ミラルカにトラウマはなくなりました。ヒトはこの後イフマナスで滞在しながらミラルカに稽古をつけてもらいます。ミラルカはヒトを魔族に転化させたいんですが、ヒトが断るので諦めました。なるべく長くいたいと思うので別の手段を考えます。

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