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35話 魔王のミラルカ

 ミラルカとミラルカの護衛のフェン。

 たった二人の援軍だけどこれ以上の頼もしい助っ人はいない。

 というよりミラルカ一人でお釣りがくるくらいさ。

 この勝負はもらったな。

 俺は勝ちを確信して笑みを浮かべるんだけど。

 さっきからニャハルと当のミラルカの顔が、何か決意じみて、くらくなっているのが気になるんだよなぁ。

 神々を相手取っても勝利してしまう三帝なのだからテッキ軍に負ける要素はないと思うけど。

 変な感じだ。少し間を開けてフェンが「……姫様、本当によろしいのですか」と言って、力なくミラルカが「うん」と返事をしたのが気になる。


「ミラルカ無理するにゃ。ニャアが代わるにゃ!」


 ニャハルがミラルカに叫ぶ。

 あんな大声を出すニャハルは初めて見る。

 なにか懸念けねんすることがあるのかな? しかしミラルカはそんな事お構いなしに歩き始めた。

 ぼそりと「君成長しすぎだろ。その気持ちだけもらってくよ。ありがとうニャハル……」とつぶやいて。

 この後、俺たちは普段見ている魔族の少女ではない【魔王としての天魔皇帝ミラルカ・イグレス】を見ることになる――



「そこにいるゴブリンのソンクウ殿は僕の同盟相手でね、盟約によって加勢させてもらう。一度だけチャンスをやろう、お前たちが所有する禁忌指定の技術並びに今ある禁忌指定兵器を破壊して、今後野心をもつことなく息をひそめて生きていくなら許してやるけど、どうする?」


 何を馬鹿なことを言っているのかと高笑いが戦場にひびく。

 無理もないな、戦力差は見たままの段違いだ。

 テッキ国は千体のゴーレムに何千丁の小型カノンと大砲型カノン、それをあやつる兵士。

 おまけに俺たちが倒した兵士とは別に、テッキ王が連れてきた援軍をあわせた総勢100万の軍勢。

 そんな戦力を相手にするのが、たった一人の魔族の少女だというのだからね。

 でも俺たちはミラルカがどんな存在なのかを知っている。


【世界に数えるほどしかいない神越えの実力者】で。

 真っ向から勝負できるのは同じ存在しかいないという事実を俺たちはよく知っているのだ。



 戦いがはじまった。

 一瞬で片づけられるものをわざと相手に力を見せつけるのだ。

【相手が二度と、はむかわぬようにする】と言葉で語らずともミラルカの動作のすべてが雄弁に語っていた。

 ミラルカの攻撃は、言ってわからぬ想像もできぬ馬鹿には、痛みで思い知らせてやると言っていた。


「泣いてるみたいだ」ミラルカのさびしそうな背中を見たヒトは、そう吐き捨てる。

 その言葉にフェンはミラルカの心の中を代弁する。

 眉にしわが寄って一見すると、怒りとも悲しんでるとも区別がつかないそんな顔。

 いやその両方なんだろう。

 フェンはいま部下ではなく、ミラルカの育ての親の立場で、しゃべっているんだ……。


「本当はここには来たくないと。力をみせたくないと姫様は仰っておられました。しかし同盟を結んだ王のピンチに自分が駆けつけなくてどうするんだと言い、姫様は気丈に出陣されました。先ほどのニャハルさまの気遣いは姫様は本当にうれしく感じたことでしょう。ですが、いつかはどこかでわかることなのです。ミラルカ様がどんなに強いお方なのかという事実が、です」


 フェンは絞り出すように、ようやくという感じでミラルカの思いを吐き出している。


「ミラルカ様は昔、魔族を根絶しようとした人類の連合軍と戦い勝利しました。ですがミラルカ様をまっていたのは、守った民が自分に向ける恐怖の目だったのです……。」


 俺もわかってきた。

 まわりの人間が巨大な力をもった者へどんな感情を向けるのか。

 たとえば常識の範囲で済むのなら達人。

 そこを超えると超人扱いになり、さらに上へ行けば英雄と呼ばれるようになるだろう。

 でもあくまで人間レベルであって、神という言い換えれば得体のしれない強い存在の、その上となると憧れられるなんてのはあり得ない。

 恐怖の存在となりただ恐れられるだけのものとなるのだ。

 だから神越え達は、おなじ神越えを大切にするんだろう。


【自分と同じ立場に立ってしまった同じ思いを本当にわかりあえる数少ない同胞】を失いたくないんだろうね。

 フェンは続けた。


「キルレイン様どうか最後までご覧ください。目の前でおおきなちからを振るう魔王があなたに恋をした化け物なのです。決して実らぬとわかっていて、それでも期待をもってしまったお方です」

 俺はヒトをみる。

 眉間にしわが寄りまばたきも少なく、目をそらさずにミラルカを見る。


 なぁヒト、お前は今ミラルカをどう思ってるんだ?


 すべてのカノンとゴーレムのビームがミラルカに迫るが彼女にあたる直前でピタッと止まった。


「一回だけ攻撃させてあげたからね」


 そういってミラルカは人差し指を立てて上へと指さした。

 その動きにつられて制止した敵の攻撃は空へあがり消滅する。

 ミラルカはあげた手の指をバッと開き、勢いよく下へ下ろす。

 バギャそしてズ……ンっという音とともにカノンとゴーレムがすべて破壊されてガラクタに変わった。

 いやそれだけじゃなかった。

 テッキ王を除いたすべての兵馬が地面に縫い付けられたように倒れて動かなくなった。

 あたりに「うっうぐぅう」とうめき声が響く。

 ニャハルがいうには、重力でしなない程度に押さえつけた『だけ』らしい。

 しかもニャハルはこう続ける。

 ミラルカは俺たちがみているから殺さぬように心がけているが、本来なら三帝に敵対したので殺していると。

 確かにそうかもしれない。

 俺はあんな目にあわされるなら、一思いに殺してくれた方がまだましだろうと思う。

 

 

 テッキ王に同情はしないが憐れむ気持ちはある。


「おまえが犯そうとした罪を悔いろ! そのくだらない野心がどれほど多くの人を悲しませることになるのかを……その足りない頭で想像しろっ!!!!」


「あっぎゃ、ばあああああああああ。ひでっいっでえぇええええええぇ!!!!!」



 ミラルカの魔力でテッキ王は異様な姿にされて、空中にはりつけられている。

 一見すると生首に見えるが、首の下に小さな人形のような体と手足が見える。

 力なくぶらぶらとぶら下がっていて、その姿は見方を変えればおかしく見えるかもしれないが、とてもそんな気分になれない。


 テッキ王は今拷問を受けている。

 頭はそのままにして痛覚をのこし、手足を無理やり圧縮されているのだ。

 手足は無理やり折りたたまれた結果、体中の骨はぐしゃぐしゃで内臓と神経に刺さり、人間には耐えられない激痛を感じている。

 それでも発狂することも死ぬことも許されない。

 敵に恐怖を植え付ける魔王の姿がそこにあった。

 ミラルカは思う。



 この後僕をまってるのは僕に恐怖するあの目かなあ『やだなぁ』。

 でもしょうがないよね、実際僕は化物だしキル君も嫌いになるよ。

 だからこの戦いが終わったらキル君にあわずに済むように200年くらい城にこもればいいだけだよね。



 たったそれだけのことだよ……。

内容がくらくテッキ王がいたそうですね。この後テッキ国はタブーを破ったことが周辺国にばれて国交断絶になって衰退の一途をたどります。外伝で書きますけどななつのくにに加盟することで生き延びます。  

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