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29話 ギルドを存続させるシステム『荒くれ』

 千年前アベルが魔王を倒したことで、ギルドは大繁盛した。

 それまで冒険と無縁の民間人と、アベルの伝記に憧れをもった富裕層。

 その中にいた王族まで冒険者希望となった。


 しかし一つの問題が起こる……。

 俺の「何かわかるか?」の問いかけにオウが正解を言った。



「死亡者がふえた」

「その通りさ」



 そうだ。国を回すべき貴族や王族たち。

 そして税を納める市民が大量に亡くなるようになった。

 だがこの結果は当然と言えただろう。


 何しろ全員が英雄になれるわけではない。

 だからギルドはその冒険者にあったランクが細かく分けられているのだ。

 そして死亡者が出続けばギルドの存続も危ぶまれる。



「そこで各地のギルド長たちが考えた策が俺がやっつけた『荒くれ』になる。意味わかんないみたいだね? そうだね! ちょうど今来た初心者を見て」


 俺が指さした二人の男女にオウ、ヒト、サンは目を向ける。

 ちょうど俺の時と、同じ荒くれが年若い男女に絡んでいた。



「性懲りもないっすね。俺がやっつけてやりましょうか?」

「いいんだ。まあ見てなよ、俺が解説するからさ」


 俺はヒトを止めてなりゆきを見る。

 二人とも少年少女といった感じだ。


 村の子供が英雄に憧れて、ギルド登録にきたんだろう。

 俺の時とは違い、荒くれの迫力にまけてすごすごとギルドを出ていく。



「考えてみてくれ。絡む酔っ払いをどうにかできない人間が冒険の中で龍や巨人といった怪物。そして魔王をどうにかできると思うかい?

 例え今は力で負けていても、「俺は冒険者になるんだ、そこをどけよ」と、言い返せもしない。氣持ちで負ける人間が長い冒険をできると思うかい?」

「たしかに……あこがれだけでできる職業じゃないっすよね」


 ヒトはそういって視線を落とす。

 たぶん子供の頃を思い出してるんだろうね。



 そうギルド長が出した答えが【荒くれをけしかけ、冒険者として生きていけるのかをテストする】だったのだ。


 それもこれも、はじまりの勇者がイフマイータを倒したことで冒険者希望がふえたことが原因だったりする。


 しかし俺はアベルちゃんはなにも悪くないと思う。うん、断じてアベルは悪くないぞ!



 俺達4人は、受付でギルド登録をすませる。

 俺も7段階で最下級のG級から始めることになった。


 ちなみにギルドは中央大陸に、元締めとなるグランドマスターがいて、すべてのギルドはよこで、つながっている。


 各地のギルドにギルド長がおかれて自治を認められているのだ。

 種族は関係なく俺も最上級のA級冒険者になって。

 二人のギルド長から認められれば、俺が運営する新しいギルドが持てる仕組みになってる。


 ギルドの情報網は素晴らしい。


 すべての冒険者が情報提供者となるから当たり前だけどね。

 つまりこの点だけでもギルド長になるメリットがあるわけだ。



「ここまででわからなかった人いるか?」

「「いいえ~~。ありがとせんせえ~~」」


 可愛い子達だよ。



「よーし。G級からどんどん上へあがるように依頼をこなそうぜ!」


 俺は受付嬢に話しかける。



「いらっしゃいませ。何か変わった情報はございませんか? ギルドで買い取らせていただきます。それとも依頼を受けられますか?

 依頼はソロで受けられてもかまいませんし、パーティーで受けてもいいですよ。ええと、G級冒険者チーム【ゴブリンと愉快な仲間達】様ですね」


 俺はみんなの顔を見て確認する。


 みんな大きくうなずく。

 よし予定どうりに行くとしようかい。



「昇級したいんだG級の一番難しい依頼クエストをくれ。全員ソロで受ける」


〈ニャハルは念のためサンについててくれ。お前がいてくれたらサンも死ぬことはないだろ〉

〈にゃあ。マスター了解!ニャアに任せてにゃん〉



 おっといけない。

 肝心なことを忘れてたぜ。

 俺は受付嬢に付け加えていった。



「ソンクウ名義で依頼を出すよ。内容は【種族でめずらしい色をした魔物の情報求む】だ。

 えっと……ちょっと待ってて」


 俺は受付嬢のにっこりとした笑顔を見た後、アンダルシアに念話を飛ばす。

 情報料の相談だけど、出し惜しみをするつもりはない。

 アンダルシアにはその事を伝える。


〈我が君、任せてください。1,000万と言わず2000万ディオン出しましょう。

 ソンクウ様が考えた傭兵業がちょうど軌道に乗って財源が潤ってますから〉


 なんて頼もしい女なんだい。


 アンダルシアがいてくれてよかったぜ。そうでなかったら、俺は今頃なれない統治をずっとやらされてるところだぜ。


 俺はアンダルシアにありがとうと言って念話を切る。

 よし、依頼料は破格の2000万ディオンでいけるな。



 受付嬢は驚いていた。



「ええーーっ。2000万ディオンって本気ですか、王家お抱えのA級冒険者でも年棒1000万ディオンですよ。ゴブリンさんってホントにG級なんですか?」

「ソウダヨ」


 多くは語るまい。それに金額にひかれて情報は多く集まってくるだろう。


 嘘かほんとかは俺が直接確かめればいいのだ。

 ギルドでやることを済ませた俺たち四人は受けた依頼をこなすため外へ出る。



 ちょうど荒くれに追い返された少年少女とその荒くれが目についた。


 遠巻きに「またおいで」や「基礎を教える人がいないならギルドから派遣してもらうといい」。

 そして「冒険の気構えができた時ギルドは君らを迎えるだろう」と話す内容が聞こえた。



 そうだ『荒くれ』の役割につくものは優しい人が多いのだ。


 わざと芝居をして命を落とす者を追い返す。

 その境界を見極めるために、古参の冒険ができなくなった者が志願して『荒くれ』になる。


 『荒くれ』はギルドが無用な犠牲者を出さぬように考えたシステムで、荒くれの役につく者は嫌われ役になってもギルドとそこに所属する冒険者を守るギルドの誇りそのものなのだ。



「あれは……。俺は無理だね」


 俺はそう言って、受けた依頼をこなしに歩き出すのだった。

 荒くれを導入してから死亡者は激減しました。現実世界で例えるなら自動車免許でしょうか。資格がないと自動車の運転は危険ですよね

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