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27話 獣帝は語る

 ミラルカとヴァルハラハルはお互いの目を見ると。

 大変険悪なムードを漂わせており。

 一触即発と言っていい状態になっている。


 俺は、ヴァルハラハルに手を握られて二人の間に挟まってる状態で。

 いい加減この手を放してほしいぞ。固いよ。


 握られた手を何とか離させようともがいているが、びくともしない。

 俺は、仲間達に助けを求めようと視線を向けた。

 だがどういう訳か、3人とも居なくなっている。


 ええっ、どういう事だい? さっきまで、そこにいただろう?

 そう思い、俺は周囲を観察すると……いた! ヒト、オウ、サンの3人は、米粒に見えるくらい遠くまで避難している。



「兄貴~大丈夫ぅ~~……」

「ソンクウさ〜ん早く逃げないと〜巻き込まれるっすよ~……」


 俺の耳にかろうじて声が届く。


 逃げられるならとっくに逃げてるよ。

 ヒトは魔剣を抜いて闘気をためている。俺を助けに斬りこむ気じゃないだろうね。

 その氣持ちは嬉しいけど、弟よはっきり言うと無謀だぞ。

 すると先にヴァルハラハルが口を開く。

 その内容は俺が想像しないものだった。



「ミラルカ……。ごめんにゃ――――」



 ヴァルハラハルは、頭をおおきく下げる。

 とうぜん俺の手は握られたままなので肩が引っ張られていたい。これいつ離すんだろうね?。


 ミラルカはヴァルハラハルの突然の謝罪に驚く。

 あれれ、戦闘になるんじゃないの?



「ニャアはもう封印されるのは、いやにゃん。謝るから許してにゃ」


 目をつぶり、ぺこぺこと何度もかわいらしく頭を下げるヴァルハラハルを見ていると、俺に同情心が湧く。


 我ながら甘いなと思うが見たところ嘘ではなく、本心からのことばがわかるのだ。

 アベルのときにヴォルデウスから『貴公はなぜか嘘や幻術あと罠を見抜くな』と言われたことがある。


 みんな俺と同じと思ってたので、他人はできないと知ったときはびっくりしたが。

 おっとそんなことよりもミラルカをなだめないと。


 ヴァルハラハルは本気で反省している。


 うまくいけば三帝のほかに【触れてはいけない災厄】と言われる。

 二人の衝突を防げるかもしれないぞ。



「ミラルカ、二人に何があったのかは知らなけどさ。この子の話も聞いてやってくれないか?

 ここで二人が戦って被害を出すのは、ミラルカも望んじゃいないだろ? 頼むぜ」


 俺は、いま大真面目なんだが、いけないな。

 手を握られてるままなので、どうにも格好がつかない。

 それでもミラルカは毒気を抜かれたようで戦闘態勢はやめてくれた。


 よかった何とか話し合いで済むかもしれないぞ。


 遠くから見てた元! 仲間の3人(薄情者)はこっちに歩いてきてる。おのれ。





 ミラルカがヒトの腕にしがみつきながら言う。嬉しそうな顔だね。



「僕は、再封印をおすよ。ソンクウたちも知ってるでしょ。僕とばあちゃんは世界をほろぼせる存在は、許さないたちなんだ。

 もちろんほろぼす力があっても実際にほろぼさないなら何にもしないよ」


 そういうとミラルカは、ヴァルハラハルを強くにらんだ。


 にらまれたヴァルハラハルは申し訳なさそうに目を閉じてうつむいる。

 なぜか俺をぬいぐるみのように抱きながら……。


 俺をサンは「かわいーっす」と頭を撫でて、オウは俺のほっぺたをつついてくる。

 ぬいぐるみのようにじゃなくてぬいぐるみだね。

 ミラルカは続けた。



「ヴァルハラハルは善悪の区別がつかないんだ。これがどんなに危険なことかわかる? ヴァルハラハルは助けてほしいと言われると誰にでも手をかしたよ。そうどんな悪党にもね。

 結果……悪党に言われるままに、この世界を吹き飛ばそうとしたんだ」


 そういう事かい。このヴァルハラハルは邪悪ではない。


 ただし無垢すぎるのだ。


 疑う事なく誰にでも手を貸すんだね。


 例えば一国の王が世界征服を願えば、ヴァルハラハルは、武力でその王を世界の覇者にするだろう。

 正義の味方がこの種族は悪いやつだから消してほしいと言えば、世界から一つの種が消えることになるのだ。


 話し合いの中で聞いた、魔帝と龍帝がこの世界に対して持つスタンス。


 【世界は今のバランスのままを保ち、例えそのバランスが崩れたとしても、世界のあるべき流れの中で存続しなくてはならない】これを、ヴァルハラハルはたやすく壊してしまう存在なんだ。



「君はソンクウに何かしたよね? 何をしたんだよぅ」


「ニャアとマスターの命を同機させたにゃ、誤解しないでにゃん。ニャアが生きてるかぎりマスターは死なないにゃ。

 ニャアが死んでもマスターに影響はないけど、マスターが死んだらニャアは死んでしまうにゃ。

 だからニャアは命懸けでマスターを守り続けるにゃ!! これが、岩から出してくれたお礼にゃ。

 ニャアはマスターの使い魔になったのにゃん」


 にゃふふんと鼻を鳴らしどや顔でねこ獣人は胸を張る。


 俺が言えた義理じゃないけど、なんてつつましやかな胸なんだろう。

 ってそうじゃなくて俺とこの子が主従の関係になったって?


 俺は、ヴァルハラハルに何でそんなことをしたのか。そしてなんでそこまでしてくれるのかを聞こうとする。ミラルカが先に質問したので聞けずじまいだったけどね。


「にゃあ~。天魔皇帝にはわからないかにゃん?

 この世界で竜帝が最初に神を超える力をもってから、神越えの実力者は生まれてきたにゃあ。

 もっとも、数百年の中で指で数える少なさだけどにゃん。そして、このお方は……」


 ヴァルハラハルは俺を指さした。


「知ってるよ。あの札をはがせたんだからソンクウはいずれ僕達に並ぶ強さを持つって事でしょう?」



 「あ~あ」と、大げさに首を振るヴァルハラハル。

 その態度はミラルカにそんな事もわからないのかと、できのわるい妹を諭すような感じに見える。



「そこが違うにゃ! アベル(このお方)はニャア達、神越えの実力者の頂点に立たれる強いお人にゃ。

 後で最初の神越え……竜帝のばばあにでも聞いてみろにゃん。

 ばばあも必ずニャアと同じ考えを持つにゃ。ほうら? 今から味方になるのは当然の帰結にゃろ?」



 こらこら、何で俺から無言で離れていくんだい? オウ、ヒト、サン。


 俺が神越えの実力者達をいずれ超える?

 俺は抱かれたままで、ヴァルハラハルの方へ顔を向けた。



 そこにあるのは、獣帝の嘘と含みのない純粋な真実を語る笑顔だった。

 獣帝は魔帝を最後に煽るような態度をしております。許してほしいのに、立場があまりわかってないみたいです。



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