344話 お眼鏡にかなって何よりだよ
俺はエリジウムのとある飯屋にいる。
精神体である悪魔もイメージで食事ができるようだ。
酒があるし、なんとエビフライまであるのだ。
地上と何も変わらないんだね。
「本来なら食事など必要なかったんだがな。地上に召喚された悪魔が、冥界に情報を持ち帰ったんだ。
我々はマスターが展開する〈冥界の通路〉を通って半精神体になってる。だからイメージの食事でも、こうして食べられるわけだ」
サタナが解説してくれる。
だが、誰から聞いた情報なのか?
この疑問が頭から消えてくれない。
彼女は一度も冥界に来た事がないと教えてくれた。
それなのに、詳しすぎである。
情報を通じてる第三者がいる。
この考えを持つのは当然と言えるだろう。
「勇者アベルとその一味がここに居ると聞いたぞ。全員その場を動くな!!」
「我々は冥界王アルカディア様の近衛である!!」
店の入り口から大勢の兵士がこちらにドカドカ近づいて来る。
店内の客が一斉にこちらを見たため察したようだ。
客からすると俺達は悪魔ですらない。
見慣れない存在だから仕方ないぜ。
「騒ぎはごめんだぜ。皆、バラけた後は、俺がいる場所に集合だ!!」
俺はすぐ横の窓を突き破ると一目散に駆け出した。
皆に『逃走後〈戦闘能力感知〉を使ってアベルがいる場所に来ること』指示を出すのを忘れない。
窓ガラスは時間を戻して修復したし、ライフカードから店に支払いは済ませてあるので抜かりはない!!
はるか後方から「お客さん、お勘定!? あっ、あぁ!? 毎度あり~~」の声が聞こえた。
アルカデイアの近衛はただ見ている事しかできなかった。
アベルは一瞬でいなくなったし。
奴から遅れてサタナ、ミラルカ、ルーナの三人は自分達の間をすり抜けて去っていく。
風のような速度であり、まるで最終回に夕日に向かって駆けて行く。
そのように見える後ろ姿を、反応もできずただ眺めることしかできなかったのだ。
レムと、シャーリーは呪文か何かをつぶやく。すると頭~足の順に消え去った。
近衛にわかる筈もないが、ウルトラテレポーテーショ〇の様相だった。
「逃げられてしまったか。アルカデイア様に何とご報告しよう。
……こちらに敵対する意思はないのにお迎えできませんでした。などと言える訳がない……」
ん? そうなのかい? それじゃ、逃げなくて良かったわけだ。
「あんた達が敵じゃないなら話が早い。冥界王の居場所へ連れて行ってよ」
「うわあああぁぁぁ!!!? 勇者アベル!? 逃走したはずでは……!?」
「僕が代わりに答えてやるのじゃ。
アベルは、冥界王の居城を探るためわざと逃げたように見せたのじゃ」
「そうそう。後は君たちの後をついて行けばそこがアルカディアがいるお城ってわけさ!」
ルーナと、ミラルカが喋っちまったが、そういう事だ。
サタナでもアルカディアの居城がわからない。そう言われるため、一計を案じる事にした。
・アルカディアの近衛が俺を探しに来る。
・わざと逃げた様に見せかける。〈※:本当は〈幻影〉を使って姿を消し隠れておく〉
・後は近衛の後らをついて行き、アルカディアがいる城へ案内してもらう。
でも近衛の言動から冥界。
要するにアルカディアは俺の敵になりえないと判断し、姿を現したという訳である。
「わっ、我々が来たあの一瞬で策を考えたのか!?
……イフマイータ様が主と仰ぐ訳だ……」
「俺が魔剣サタナのマスターなのを知ってるのかい? そんな事より、アルカディアに会わせてくれないかい?」
何が主なんだか。俺の認識だとサタナは大切な仲間だぞ。見当ちがいにもほどがあるぜ。
近衛は恐怖とも尊敬とも取れる態度で、俺を主がいる城へ案内するのだった。
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俺はアルカディアの城。
玉座の間ではなく大広間に通されている。
かなり広く。そして、大きく設計されている様だ。ダンスパーティーでも開けそうだぜ?
ガチャガチャおびただしい音が、こちらに近づく音が聞こえる。
大勢の近衛を引き連れ大柄な老人と二人の若者が現れる。
ようやく、お出ましかい。
若者は〈人化〉を使っているが〈戦闘能力〉に覚えがあるぞ。
奴隷都市で対決したドロワットと、ゴーシュに間違いないだろう。
目が合うとガタガタ震えだすやつがゴーシュだね。
手を振ると「ひっ」と小さく悲鳴を上げられた。
靈核への攻撃を完全破壊の一歩手前で止めてあげたって言うのに、ひどいやつだ。
恐がりすぎだぜ。
大変遺憾である。
「悪戯者め!」
チッ。サタナが舌打ちしながら零す。
彼女の言葉をかき消すようにアルカディアが口を開く。俺にはまるで、慌てて喋った風に見えなくもない。
「我が冥界へようこそ地上の勇者殿。
【魔神イブナス】の討伐は私とイフマイータの悲願なのだ。そのため、地上と冥界で手を結びたい。
冥界王アルカディアはこのように考えている」
なるほどねぇ~。
今の発言で今回の騒動の原因が解明できたぜ。
サタナへの情報提供者は、やはりアルカディアだ。
おそらくだけど───。
・側近の二人の話しからサタナが蘇った事を知る。
・サタナにコンタクトを取り、その勇者を〈※:要するに俺だが〉冥界に連れてくるよう依頼する。
・セーナの剣士の里が襲われたのは、俺が『仲間に手出しするやつは許さない』といってるからだ。
俺は実際に、セーナを攻撃された事が原因で冥界に来ている。
まぁ勇者の実力が知りたくて、やった攻撃なんだろうがね。
【魔神イブナス】を倒すため強い味方が多いのに越した事はない。
でも、今のままじゃ無理かなぁ。
その事を伝えると冥界王は驚きの顔で「何故なのか?」と聞いてきた。
「だって……あんたはアルカディア本人じゃないでしょ」
「…………見事じゃ…………。
イフマめ、話は正確に言って欲しいものじゃ。勇者殿は聞く情報より、遥かに賢く強大ではないか」
中心にいる初老の偽アルカディアじゃない。
居並ぶ近衛の一人がそう発言した。
アルカディアは最初からアベルを呼ぶため行動しております。もちろん敵対するためにではなく、【魔神】討伐に協力するためなのです。
アベルはイフマイータを倒した実績から。アルカディアは用心深くなってます。
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