343話 冥界の都エリジウム
ジョリオンの話によると彼女はどうやら地上にいたらしい。
「アベルさんが治めるトウ・ダーラを目指して旅をしていたんです。〈※:【魔神のジャミングのせいで辿り着けなくされてました】〉
夜営の最中に不思議な女性を見ました。
光り輝いていて、見るから人間ではないのです」
「魔物が〈幻影〉で、【人間種】に化けてる可能性が高いね。
それで、どうしたの?」
ジョリオンは細かく説明する。
「髪は肩まで伸ばしており毛先が縮毛になってるんです。目が炎を宿したような真っ赤な瞳でした。
その女性が、微笑みながら私を指さすのです」
次に氣が付くと私は冥界に居ました。ジョリオンはそう話した。
いや俺だよね。
そいつは紛れもなく【人間種】の俺なのだ。
どうしてそうなったのか説明がつかないが、アベルとジョリオン。お互いが相手に会いたいと願う事で奇跡が起きた。
今は、そういう事にしておこう。
考えてわからない事はいくら考えても答えが出てこない。
推察はどこまで行こうと推察なのである。
俺はジョリオンに〈変身〉を教え、彼女を〈強制転移〉でトウ・ダーラに送る。
彼女にはトウ・ダーラで鍛錬を重ねレベリングしてもらうのだ。
今まではスライムの体を【人間種】に見えるように擬態していた様だ。
だがスライムはあくまで弱い魔物。
〈変身〉で、【人間種】に戻った方がレベリングの効率がいい事は目に見えている。
弱い魔物。
そうとも基本的にスライムは弱いよ。
常識ではね。
まぁ、とある世界には神の様なスキルを持ち魔王と竜種から「〇ムルなら当然」などと。
規格から外れまくってると評価されている聖魔混世〇様もいらっしゃるのだ。
思わずンドゥー〇になってしまう。
『その人は……あまりにも強く、深く、大きく、美しい……』
…
……
………。転生勇者ちゃんに話を戻そう。
「冥界に行ったと思えば【七勇者】のジョリオンを見つけてくるとは。
さすがはアベルです。
彼女はトウ・ダーラに着きましたよ。
冥界めぐりに危険がないとも限りません。アベルどうか氣をつけて下さいね」
サンのやつから「貴方の実力なら大丈夫でしょうけど」メッセージ付きの〈念話〉が届く。
【魔神】の妨害があるかと思ったのだが、上手くジョリオンを転送できた様である。
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ジョリオンと出会った場所から何事もなく、俺は冥界王が治める都エリジウムに到着した。
住人全て悪魔なのが凄い。
まぁ当然ではあるがね。
都に住まう悪魔の中に下級は存在しておらず、目に映る悪魔は全員上級悪魔なのである。
「情報によると下級悪魔は知能が低いから住民扱いはされていない。
獣のような存在だからな。
上級悪魔は魔力の補充と戦闘訓練として、都の外に居る下級悪魔を狩るらしい」
「その情報はいったい誰から教えてもらったんだい?」
「それは───」
サタナが話す内容に違和感を覚えたため、情報提供者の詳細を訪ねる。
どうも、意識的に隠してる氣がしてならなかったからである。
「珍しいですね。地上のお客さんがエリジウムまでたどり着くなんて。握手よろしいですか?」
「むぅ!? 上級と言うだけあって礼儀正しいのじゃ。僕は握手くらい構わぬぞ」
悪魔が急に話しかけてきたため、サタナの答えを聞きそびれてしまった。
ルーナのやつは氣前よく握手に応じようとしてる。
バヂンッ!!
「おっと!? フフ残念です」
ルーナと握手する悪魔が攻撃した。それをレムが結界を張って防いだのだ。
バヂンッと言う鈍い音は結界で悪魔の腕が切断された音だった。
奇襲を防がれた悪魔は余裕の笑みを張り付けたまま姿を消した。
あっという間の出来事だぜ。
ルーナに傷がつくところだった。
俺はレムにお礼を言う。
「いいんです。僕の方がアベルさんより彼女の近くにおりましたから」
謙虚な姿勢を見せる彼女は可愛らしい。
いい娘だ。
「説明が遅れてすまない。悪魔は魔族と同じで魔力を吸収して生きながらえる。
だから、笑顔でよって来ても悪魔を信用しては駄目だ。
奴らからしたら我々は魔力が豊富な獲物に過ぎないからな」
「お爺様。そんな大事な事、もっと早く言ってよぉー」
サタナに向けてミラルカが頬をむくれて抗議する。
可愛い孫娘に対し、魔王は困った顔で「ごめんごめん」と平謝りするのだった。
襲われても俺達ならばやられる事はないと思ったんだろう。
それで情報を出すのが遅れたのだ。
それに俺のルーナを襲ったケジメは、さっきの悪魔に取らせるから問題ないのである。
俺は左手で首を締め上げる悪魔を、ルーナに見せる。
さっき襲ってきたやつだぜ。
逃げた瞬間。
【神越えの力】を使って奴がいる座標に手を伸ばし、捕まえたのだ。
相手が精神体とか関係なく掴んでいられる。
これは〈冥界の通路〉を通った時、俺が精神体でも攻撃が通る様、全員の体を『半精神体』に設定したからである。
「ルーナの氣が済むようにすればいい。襲ってきたコイツが悪いんだから文句は言わせないぜ」
「レムが防いでくれたおかげでダメージを負っておらんからのぅ。
罪一等を減じ、一回殴るだけで許してやるのじゃ!!!」
ゴチャ!!!
彼女がする腹部への攻撃は大衝撃音を生む。
俺が掴んでいる悪魔は数十メートル吹き飛んだ後、ピクピクと痙攣していた。
瀕死の状態に追い込まれたみたいだ。
「サタナが説明してくれた通りだ。
みんな、ここからは油断せずに行こうぜ」
この言葉を聞いて皆はコクリと大きく頷くのだ。
エリジウム内で誰かを襲うことは、アルカディアから禁止事項に設定されてます。
悪魔の戦闘本能と腹を満たしたいなら都の外に下級悪魔がいるからです。
そういうわけでルーナを襲った、上級悪魔の男は寄◯獣で言う「犬か猫のようではないか」と、言われたパラサイトになります。
程度が低い悪魔です。
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