幕間 神越えの実力者 魔王の孫娘
「おなかすいたよ~」
「栄養の付くものをシェフに頼んであります、もうすぐできますよ」
「う~、まてないかも。僕の好きなヌードルとハンバーガーでいいんだけどなぁ」
「姫いい加減にしてくだされ。いつ国の平和が破られて勇者や他の三帝が乗り込んでくるかもしれません。
しっかりしてもらわねば魔王の威厳が地に落ちますぞ!」
じいの言うことはわかるんだけどなあ。
「本気で言ってるの?」というとフェン・ダリュンは黙った。
そうだよジイが言ってることはもう何百年も前のことだ。
それからこの国イフマナスは一度も襲撃を受けてないんだ。
なのにフェンは僕に威厳とかもっと偉そうにしろという。
僕のイフマイータじいちゃんは、そうやってすべての種族を支配してきたんだぞと……いい加減耳たこだよぅ。
「とにかく姫のおからだは姫だけのものではありません。かつての『支配の時代』を取り戻そうと願う魔族タカ派の希望なのですぞ」
ほんとにくだらない。
第一フェンがほかの種族と共存を望むハト派じゃないかと思う。
まあ この魔族ナンバー2の老騎士はたか派を装い中でコントロールして、タカ派をおさえてるのだ。
フェンは恩人だ。
じいちゃん、父さん、僕と三代にわたって魔王家を支えてくれた。
僕を育ててくれた親でもある。
▽
勇者によりイフマイータじいちゃんが倒された後。
魔族根絶を旗印に、他種族連合軍がイフマナスに攻めてきたことがある。
魔族も一枚岩ではない。
魔族を創造した魔神の思惑を超えて【支配ではなく共存を望むハト派とよばれる魔族たちもいた】のだ。
でも長年支配されていた連合軍にそんな事情は通用しない。
彼らはすべての魔族をほろぼすだろう。
魔族たちが絶滅を覚悟したとき、その条理を覆したのが幼かったイフマイータの令孫ミラルカ・イグレスである。
僕はフェンや他の魔族が僕を援護するのを制止して出撃した。
「誰も出てこないで」
僕には二つの狙いがあった。
一つは僕だけの力で魔族を守ること。
もう一つは僕の国に犠牲者を出させないことだ。
祖父の魔力が顕現した鎧に身を包んだ、新たな魔王と連合軍の戦いは、わずか十分で魔王の勝利に終わる。
イフマナスに攻め入った二百万人はすべて消滅した。
遠くから様子を見ていた王家の近衛の騎士は逃げ帰ると、各国の王が集まる場で震えながら報告する。
「魔王の脅威はいまだ健在である。ただ呼び名が変わっただけなのだ」と。
この後すぐ、魔族の少女は【天魔皇帝】すなわち【魔帝】の二つ名でよばれる。
自国から動かぬこの魔王を各国は恐れて、軍備を増強していくことになったのだ。
魔族をイフマナスを守るために祖父の鎧をまとい敵を殺す。
楽しいわけではない。
僕を育ててくれたフェンは、いつも命の大切さを説いていた。
ただ今は大切なものを守るために非情になるときなんだ。
「……エイドリン、ガルのおばちゃん、アズマ、ワイドール、ランスベル、フェン・ダリュン」
鎧の中で大切な者達の名を、呪文のようにつぶやきながら少女は戦った。
戦いの後。
誰もいなくなった荒野で少しだけ寂しそうに……ミラルカは笑う。
【経験値多数数え切れませんレベルが上がり神々からの祝福を授けます エラー
この個体が神を超えたのを確認。
あなたを『龍帝』『獣帝』『霊帝』につづく四人目の神越えの実力者と認めます。
神々からのメッセージを確認開封「その力を過ちに向けぬようねがう」以上です】
▽
じいに僕がつくった分体を見せると素直に驚いてた「初代様を超えられましたな」だって。
分体は僕自身だ。
オリジナルの僕が死んでも記憶と魂はすべて分体に移る。
つまり死亡することはないし、僕の力が損なわれることもない。
どんなもんだい。
「ねねね、こうして本国に僕がいるんだからさ。オリジナルは旅に出てもいいでしょ? 連合軍と戦ってからずっと国にいてさ、もうやだよぅ。僕だって恋の一つもしてみたいよー」
「なりませぬ!姫の気持ちはよくわかります。しかし姫に万が一があってみなされ。姫の死は魔族すべての死と言って過言ではないのですぞ」
「僕が心配?」
「もちろんです」
「本当に?」
「当たり前です!」
「じゃあきまりだねジイも一緒に行こうよ。僕のお供だ」
なんですと!とジイが驚いてる。
ごめんよ。
でもこうでもしないと死ぬまで国の外に出られないもん。
そりゃ、ちょっとの用事で出られるときはあるけどさ、そんなの自由じゃないよ。
「行き先はトウ・ダーラ、新しく生まれた魔王がさ、人材を集めてるんだって。珍しい色した魔王タイセイ……えっと本名はなんだっけ? ……ああ思い出した。名前はソンクウ・ゴウジャだ」
守った民たちは表面には出しませんが、ミラルカを恐れる者が多くミラルカは少しだけこのことがトラウマになります
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