幕間 人魔共存国家群『ななつのくに』その盟主国トウ・ダーラ
「ふぁあ」とあくびが出る。
旅からトウ・ダーラに帰ってきて……そうだ宴会したんだった。
俺は大口開けて寝てる奴らを起こす。
今日は同盟国へいき話し合いがあると昨晩、副王から聞かされていたんだ。
「なんだよもう少し寝かせろよアベルぅ」
この、明日は私もいくって、しつこく言ったくせに。
そう思いながらも俺はセルバスとレンタロウを起こす。
二人を置いてきたらヴォルデウスとルーヴァンに何を言われるか、たまったもんじゃない。
「にゃ~ん、マスターお出かけにゃ? ならニャアも一緒に行くにゃ」と声がする。
彼女はミラルカ【魔】・アーガシア【龍】・ペリル【人】・に並ぶ神越えの実力者ニャハルだ。
大昔ミラルカとアーガシアに封印されていたのを俺が封印を解いて、以後彼女のマスターになった。
正直悪い子ではないが彼女を連れてるときにミラルカ達と会うとややこしくなるんだよなあどうしようか?
「ソンク~ちょっといい~?」この声で俺は平穏を諦めた。
「おや~、使い魔に格落ちした馬鹿猫じゃないか。まだいたんだね」
「にゃ~ん、誰かと思ったらばばあと二人がかりでニャアを封印した魔帝にゃん。ばばあがいないのにこの【獣帝】にケンカうって怪我するにゃぞ」
「アベル殿ぉ~。さぷらいずじゃ~」
気配もなく気が付けば金髪でこ出しの幼女が俺の胸に、顔をうずめて抱き着いている。
見た目は幼女でも。
彼女は神越えの一人、アーガシアその人である。
今回の話し合いに竜国ドラグニルの代表できていたのだった。
おかしいな? アーガシアが来る話を俺は聞かされてないぞ。
横を見るとアンダルシアとドラグニルのガニメデ王がピースをしている。
なんだと。
「ほら二人とも喧嘩はだめだぜ、ここは俺の顔を立ててくれよ」
ふんと言いながら二人はおとなしくなった。
よかったよ暴れられたら取り押さえるしかなくなるからな。
二人は喧嘩してるように見えて、実は仲がいいのだ。
あっ「命拾いしたね」「そっちにゃ」とか言い合ってる。
「さすがじゃのう、わしら『三帝』に力でいうこと聞かせられるのは世界広しと言えどぬし様だけよ。アベル殿の強さはわしらを超えとるからのう、みよ魔帝も元獣帝も借りてきた猫の様になっとるのじゃクフフ」
確かに【今の俺】は神々と三帝より、つよい。
だがそれは俺一人の力じゃないアーガシア、ニャハル、ミラルカが俺を鍛えてくれたお陰なのだ。
そのことは感謝とともに覚えておこう。
「なぁアベル出発は昼からだろ。あたしら時間には移動門に行くからよ。アベルは公務すませて来いよ、いこうぜレンタロウ」
「では後ほど、アベル殿も大変でござるな」
まったくだ。
セルバス、レンタロウの言った言葉にそう思って、俺は公務のため城下へ出ることにした。
▽
人間、魔族の垣根なく、すべての人種が共存する同盟『ななつのくに』はトウ・ダーラを盟主国に他6つの主要国と多くの加盟国をかかえた国家群である。
主要国のなかにミラルカの魔族本国イフマナスや、ドラゴンキング(ガニメデ)のうえに現人神アーガシアがいる竜国ドラグニルがある。
えっと他は割愛する説明が長くなりそうだし……。
とりあえずうちが他国に売っているものは、おもに「つよさ」である。
意味が分からないね。
つまり細かく言うと、傭兵業だ。
これは兵隊から魔王将を依頼内容によって派遣する事業だ。
当然位が高いものを派遣するほど値段も上がる仕組みになっている。
次が他国の軍隊や個人の冒険者への戦闘訓練だ。
本人が望むコースに振り分けてうちの魔王将なり抱えてる冒険者なりが教導する。
ちなみにセルバスとレンタロウはここで働いている。
最後が武器防具の輸出である。
うちにいるミコットと、その弟子たちで鍛造された優秀な武器と防具は他国に高値で売れるのだ。
こころよくトウ・ダーラに来てくれたミコットに感謝である。
「んや。アップルはまた会議かい? 立場ができると大変だねぇ~」
おっとそう思ってるとミコットが声をかけてきた。
ミコット・ワーグナーはドワーフの娘だ。
俺が昔アップルの偽名で旅をしていた時の仲間で、パーティー解散後は旅で得た経験と技術を駆使していくつもの伝説の武器を生み出した。
そのこともあって今の世では『鍛冶王ワーグナー』として有名である。
どうも武器を鍛えるのに素材が足りないらしい。
そのことも会議に出してカラットから回してもらうと約束して、ここを後にする。
「アップル、帰ってきたらまた顔出せよオージもよんで、みんなで飲もうぜ」
飲んべえ娘め。俺は中身は大人でも体は子供なんだよ。
アンダルシアとルーに止められるの、わかってて言ってんだから。
まあミコットの場合は嫌味でなく、気に入った奴と飲めればいいんだろうけどね。
「大兄貴今日はヴォルデウスさんとこ(パラディーゾ)へ出発じゃなかったっすか、ああ昼からでしたっけ」
「こっちは終わったよ、ヒトがひとりでやっつけちゃうしさ。僕いらなかったんじゃないかな」
傭兵業で他国に行っていたオウとヒトが帰ってきた。
今回は魔王を相手にするというので魔王将二人に行ってもらったんだがそんな必要もなかったみたいだな。
「二人ともお疲れ様ヒト、ミラルカが来てるぜ。顔をみせたらどうだいきっと喜ぶぞ。オウはサンのところに行ってくれ『七勇者』の次のやつの居場所を探すのにてこずってる。次が見つからないと俺達も旅立てないからさ。」
俺の言葉に二人が駆け出したその時に「昼の出発にはサンを連れて(大)兄貴についていくよ」と二人に言われた。
▽
ルーヴァンが設計建造したゲート前に俺達は集合する。
「あぶねー飯食ってたらぎりぎりだぜ。置いてかれたらヴォルデウスとルーヴァンに何言われるかわかんねーからな」
「うむ、まあ心優しきアベル殿でござる。きっと拙者らを置いていくなどの非道はすまいでござる」
「向こうついたらこっそり抜け出すか?」
「いいね、あっ、ばあちゃんだけには伝達しておかないと。いちおー僕は魔族代表でいくんだしさ」
「うちらは特に用事もないしゆっくり羽を伸ばすっすよ」
「じゃあ僕もサンさんについていくよ。別れる前に兄貴には言っておこうね」
遠足の雰囲気をなんとかしてほしい。
いやそれだけならまだいいんだ。
「「魔王様いってらっしゃいませーご公務頑張ってくださーい」」
アンダルシアを先頭に国民が総出で旅立ちを見に来ているのだ。
気恥ずかしくてたまらないよ。
出る前にアンダルシアが言った内容は理解できる。
俺は王であり国の代表だそれ相応の待遇というものがある。
仮に一国の王が公務中にしょぼい出発をしようものなら他国になめられるだろう。
あそこの王は名ばかりの傀儡かと思われるに違いないのだ。
……しかたない俺は俺に課せられた役割に恥じぬよう努力すればいいだけだ。
「ソれじゃ行ってくる。アんダるシア留守を頼むゾ」
声が裏返った。俺が緊張しているのがばればれだぁ。
何回やってもなれない。
アンダルシアを見ると何故かサムズアップしてる。
いいよと慰めてくれているのか?
「にゃあ、気にすることにゃいぞマスター。少し愛嬌があった方が人間味があるにゃ。それにマスターの威厳と、かっこよさは少しも損なわれてないにゃ」
「駄ねこめアベル殿に密着するな、貴様はなれなれしすぎじゃ!」
両腕に抱き着いた龍帝と元獣帝のそんな声を耳にしながら。
俺達トウ・ダーラ代表団はヴォルデウスのまつ神聖法国パラディーゾへ向けて出発した。
プロローグより未来の話です
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