174話 アセンブリー①
〈ドリマス視点〉
俺の名はドリマス・E・エルシル。
邪悪なゴブリンであるタイセイに惜しくも敗れて、再起を図る不屈のエルブヘンシエル王だ。
戦争で確かに死んだと思ったのだが不思議な事に生き返った。そして頭に聞こえる女の声『俺の前に顔を見せたら殺す』
力強くも可愛らしさを感じる美声は、女神のモノに違いないと思うし恥ずかしがり屋さんなんだね、と思う俺。
天はこのドリマスに蘇り巨悪を倒して【ななつのくに】を手に入れろと、言っているに違いない!
俺の祖先パルジファル・ローエングリンが生み出した聖剣アルファ、『正式名称:光剣ブラボー』シリーズの19本の内の一刀を、奴も持っていたとは知らなかったが
〈※ドリマスはアベルの聖剣アルファを光剣ブラボーと勘違いしています〉
情報を知れば対策が立てれる。
アレを魔王から取り上げてしまえば
俺の戦闘力が向上するし、タイセイの戦闘力は激減するのだが。
たとえ王でなくなり国に帰れずともやってみせる──
・ドリマスが蘇るまでに二週間かかっており、帰国すると魔王マルヴァがエルブヘンシエルを治めていた
・大臣のツーク・ツヨイホーニは王たる俺に「我が魔王様の命をねらう不届き者じゃ兵士ども出会え出会え」と言い放ちタイセイ側に寝返っている始末
しかぁーしドリマスは王位に就く前は冒険者として腕を磨いていたのだ〈6段階中5段階目のG級〉。
一人であろうと憎き魔王を倒してやるわガハハ。
俺を生き返らせてくれた女神様どうかドリマスの聖戦を天よりご照覧あれ!
見事タイセイを討ち取ってごらんに入れますぞ!!
▽
「おい、もっとレベルを上げれるようなクエストはないのか? ランクが上がる昇級試験だって受けたいぞ」
「いや~君のレベルでは難しいと思うよ~。向上心は買うんだけどさ~、タイセイ様が定期的にしている国民訓練日に参加する?
あ、もうやったっけ~あはは。
〈強い・普通・弱いソンクウ〉相手にするのは【ななつのくに】所属にならないと無理だしね~。う~ん」
間延びする声で頭をユラユラ揺らす獣人の娘はアンサリーといい、俺が拠点にしている【ラーマオブゴブリン】のギルド長だ。
いい加減な態度とは反対に面倒見がよく、冒険者に適するクエストの割り振りや助言をくれる。
他のギルドにくらべて居心地がいいために冒険者登録したギルドから、拠点をここに移して冒険者活動をする俺。
おかげで訛っていた体が引き締まり最下級だったF級からG級に戻す事が出来た。
アンサリーは若い見た目をしているが、ギルドの運営に長じる才能があるのかもしれない。
「ドリマス君さ~、興味あるならアセンブリーを見てみる氣はな~い?」
「アセ? なんだ一体」
「会議さ~。人魔共存国家群である【ななつのくに】のお偉いさんが一堂に集まる議会だよ~。
【神越えの実力者】も来るから、一度てっぺんを見といたほうがいいと思ってさ~」
「あの方たちはA級で収まる実力ではないですからね、見るだけでドリマスの勉強になるでしょう。
実力の差さえ感じないのなら大きな開きがあると言う事です」
本当かは知らないがギルドマスターと言う男が俺とアンサリーの話に割って入る。
聞けばアンサリーの弟子と言うからあきれる。それが本当なら、この獣人の娘が先代のギルドマスターと言うわけではないか馬鹿馬鹿しい。
「まぁいいだろう俺に損はない話だ。お前らの言う事も一理あるからな。で、どうすればアセンブリーに行けるんだ?」
長い白衣の丈から出した手をパシンと合わせてアンサリーは嬉しそうに言う
「私から推薦してあげるよ~。君はふもとにすら立ってない状態なんだからね、大きなお山の頂上を見ておいで~」
いいだろうタイセイの近くに行けるなら魔王討伐もしやすいし、俺の策の〈神越え含む強力な実力者をタイセイから離反させて、タイセイを討つ〉そのための人材が見つかるかもしれない。
ドリマスは天の意志である魔王タイセイ討伐を、生き返らせてくれた女神様より任じられているのだ!
「アンサリー頼んだぞ」
俺はそれだけ言うと、ギルドを出ていく。アセンブリーに備えて休息し英氣を養うためにな。
▽
〈アンサリー視点〉
「私には愚か者にしか見えませんが、魔王様は何をお考えなのか」
「ドリマスがトウ・ダーラに来たときは忠告を聞かない自殺志願者だと思ったんだけどね~。アベルに報告したら大笑いした後で」
『いや~怒りの時は氣づかなかったけれど面白い人物だよ。
ドリマスに引っかかる何かを感じてさ、やつを生き返らせた判断は間違えてなかったようだね。俺はアセンブリーでエルブヘンシエル兵の引き締めをするつもりだから、丁度よかったぜ』
「なんて言うんだよ~」
アベルが持つ火眼金晴の目〈小妖精の目は金だが〉には、ドリマスを欲しいと思える要素があるらしい私にはわからないのだが。
アベルはやつが【ラーマオブゴブリン】に来た時から面倒見ておいて、と言っていたので一応面倒だけ見ていたのだ……。
「天と地にある自分に必要な人材を漏らさずに己の力へと変える……天地の化身のような人物、が我が魔王か~」
アンサリーはアベルの存在感に畏怖しながら同時に、そんな奴でもなければ魔神と戦えないだろうと考える
アベルから見たドリマス〈元エルブヘンシエル王〉は怒りを冷ましたあとで見ると、面白いと思える人物です
・殺された後も迅速に動ける行動力〈勘違いが大きいですが〉
・力の差を見せられても勝とうとする姿勢
・敵の懐に入り情報を仕入れる姿勢
これらを評価しています。彼の人間性は過去に仲間にした人物で、似た者がいたので氣にしておりません
ケシ太郎「ほうそんな馬鹿者が」
カンポン「想像もつきませんね」
※ドリマスの種族は有翼人ですが翼は収納可能です、先祖はドワーフですが
彼は破門になった後色々あって有翼人の国にいつき、王族と結婚しました。その恩から一刀だけだった光剣ブラボーを量産して王家の守り刀にしたようです。
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