173話 ななつのくに主要加盟国エルブヘンシエル
トウ・ダーラ軍の奥に陣取る【神越えの実力者】達。
俺の横にアンダルシアが並び彼女は、俺の聖剣を胸に抱いている。今回は必要ないだろうとアンダルシアに預けておいたのだ。
エルブヘンシエルとの戦争は十英雄達だけで肩がつくだろう。
俺の前で一列に並ぶアーガシアやニャハルは、せわしなく手をぶんぶん動かしている。
吸収されたことで不思議なつながりができた十英雄……いや、これだと魔神の十英雄と被るな。
トウ・ダーラの十英雄は十英雄と呼ぶことにする。
十英雄同士で闘う場合ややこしくなるから思いつきで名付けたけど、我ながらなかなか良いネーミングなのではと思う俺。話を戻そう
神越え達は念話でツェーンヘルトにアドバイスをしている最中なのである。
興奮して二人はそこだやれー、と体、もとい腕が動いている状態なのだ。
ミラルカと妖六郎は体がピクと小刻みに動いている。アーガシアとニャハルのようにならないが隠すまではできていないようだ。
「ばばあのトーマがニャアのアリスより敵を倒せたらニャアがカジノで、ばばあから儲けたお金を返すにゃ」
「今月はガニメデが『博打で散財する王にお金はあげられません反省なさって下さい!』、と小遣い無しなんじゃ、乗ってやるのじゃ。
何が何でも取り返してやるからのー。トーマよアリスが狙う敵は全てお前が先に倒すのじゃ~~」
「にゅ~~にゃんっ。
ニャアの博打の才能は確かにゃ
ばばあがトーマに指示しても最後はどうせニャアが勝つにゃ」
にゃっにゃと勝ち誇るニャハルだがアーガシアに勝ったのは、ニャハルに同行していたカロットおじさんでニャハルは横で見ていた事を、俺は知っている。
実力は互角だ二人とも頑張れ。
「ソンクーはヘンリーに指示を出さないの? 君だけ余裕があるみたいだけど」
あれ? 余裕に見えるかな、どちらかと言うとシャッテンのやつを信頼しているだけなんだけどさ。
この時点でシャッテンのレベルは59,000あり他のツェーンヘルトより頭一つ抜けた実力がある。
俺の『目』で見た所、エルブヘンシエル軍の兵士は一番強いやつでレベルが5,000しかない。
文字通りケタ違いなので俺達トウ・ダーラの勝利は揺るがないだろう。
「シャッテンの判断に任しているんだよ。トーマとアリスの様に競争させるのも一つの手段だけどさ、まずは【神越の力】に体と感覚を鳴らすのが優先だと思うんだよね」
「「さすがはマスター/アベル殿/姉者/にゃ、じゃ、だ」」
「ソンクーは賭けには乗らないんだね。じゃあこの勝負は僕がもらっちゃうね」
竜帝と獣帝だけでなく妖六郎とミラルカも混ざり、四人で賭け事をしているのか。まぁ好きにするさ。
俺は最前線で戦うツェーンヘルトを見る
▽
【神越えの実力者】は別名【触れてはいけない災厄】と言う名前を持っている。
中途半端な攻撃を加えれば、その怒りは本人のみならず所属する国家ごと滅び去る、と……俺からすると少し大げさな言い伝えがある。
シャッテン達はレベルが全員5万台にありレベルが上がる前の、【神越え】と同じ地点にいる。
俺の目の前では一方的な戦いが繰り広げられていた。
「なるほど助言ありがたく頂戴するミラルカ殿。おかげでコツが掴めたぞ」
ミラルカがヒトノテキにしたようにトトニカが大勢の兵士を重力で地面に張り付ける。
指一本動かせない高重力の中の兵士は息をする事もままならないだろう。
「やるなトトちゃん。だが私もニンフェディーネ殿に負けるな、とせかされているからな」
オニオは植物を操り兵士に毒を感染したり眠らせたり、かと思えば鞭と木製のクロスボウを念動力で操り直接攻撃をする。
接近した敵は魔剣より強い木刀で打ち据える。オニオはあの木刀を氣に入っているようだね。
アリスとシャッテンは俺とニャハルのように、アリスがシャッテンをフォローしながら敵を蹴散らしている。
隙がなさ過ぎて敵兵は攻めあぐねているようだ。
いいね、みんな力に馴染んでいるよ。
あれなら【神越え】の『奥の手※ミラルカの魔王の鎧など』を使える日も近いだろう。その時
「どいつも情けないやつらだ。神越えと大層な呼び名だが、とどのつまりは魔物だろう。このエルブヘンシエル王が持つ奥の手で退治してくれる。兵士共! 道を開けよっ~!」
制止する副官を振り払い、敵の親玉が単騎で俺をめがけて駆けてくる。
俺とやつの間にはトウ・ダーラの兵士達と魔王将、なによりエルブヘンシエル軍が束になってもかなわないツェーンヘルトが居るんだけど。
何考えているんだろう死にたいのかな?
「ハハハこれを見よ!
かの勇者アベルが愛用した伝説の聖剣だ~。聖剣アルファの強さはイフマイータさえ倒すほどなのだ。トウ・ダーラのゴブリン王なぞ楽勝~だぁ~ガハハハ」
「バカの王様なのじゃ」
「にゃっ!? マスター……怒ったにゃ。賭けもここまでにゃー」
「僕し~らない。
聖剣はソンクーのお母さんの形見でしょ」
「ああそうだ姉者は母親の記憶に触れられるのを何より嫌うからな。
馬鹿王が偽の形見なぞ持ち出して、勝つつもりのようだが勝てる要素など無いぞ。
みんな怒る姉者から離れたほうがいい」
冷や汗を流し視線を泳がせる【神越え】〈※ある事情から期待した目もしている〉の後ろで立ち上がり、アンダルシアから無言で
本物の聖剣を受け取る俺。体からは怒氣が迸る
俺は抑えるつもりが無い怒りのまま目標の愚か者に向けて魔力を込めた一撃を放つ。技ではないが、その威力は敵軍を消し去りエルブヘンシエル王が持っていた偽の聖剣は地面に落ちると、あとかたもなく砕け散る。
「いい気分が台無しだよ、今頭を冷やすから少し待っててくれるかい?」
「我が君の胸中お察しいたします。お気の済むまでごゆるりと、お怒りを鎮めなさってください」
「今のアベル殿に話しかけられるとは、さすがアンダルシア正妃じゃのぅ」
俺はこの後〈蘇生〉でエルブヘンシエル王以外を生き返らせる。〈でも頭を冷やした俺は後日、王を生き返らせて
『俺の前に顔を見せたら今度こそ殺す』と見逃しているが〉
▽
エルブヘンシエルは【ななつのくに】に組み込まれて
新たにマルヴァピーヨが王になった。
最初は警戒していた国民も善政を敷く魔王を受け入れるようになる。まぁ比較対象が暗君のエルブヘンシエル王なら当然かな。
余談だけどエルブヘンシエル内で『魔王タイセイを怒らせるべからず、無くなるのは自分の命だけでなく世界全てである』、と誇張した噂が流れたとか
※母親が絡むとキレるアベルです、頭でわかっているのですが理性が効きません。
例えるならイヌを怖がる大飯ぐらいおばけやカエルを見て飛び上がる伊賀忍者「にんと!?」
ネズミを怖がる青狸のような感じです。
俺の体に密着したアーガシアがスリスリする
「のじゃじゃーたまらぬのぅー。役得じゃー」
「怖がらせてごめんね、愛しているヨ」
自分の怒りで不和を作りたくない俺はキレた場合に
「反省の意味を込めて、みんなのお願いを聞いてあげるよ」と提案していた。
アーガシアのお願い、優しく抱いて愛を囁くを実施している俺。みんな現金なもので、いや、俺の怒りが原因だからこの言い方は正しくないね。
元気になって良かったと考えなくもない。
・ニャハル→アーガシアに払うお金の建て替え〈賭けは竜帝の一人勝ちです〉
・ニンフェディーネ→一緒に遊ぶ〈遊びという名の試合〉
・ミラルカ→アベルにキル君が何かお願いしたら聞いてあげて〈ミラルカは優しい子だねと思うアベル〉
聖剣アルファの偽物はミコットが破門した弟子が乱造したものです。彼は欲に溺れ、武器を打つというより兵器を造る思想に染まり破門となりました
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