171話 悪党窟で休暇をとろう
外の世界だと真昼なのに、空は紫が濃い夜に変わる手前の状態を維持している。
トウ・ダーラが開発した七つの魔法道具によりこの国は、夜の時間が長く設定されているのだ。
周りは悪党ばかりだが人が集まると自然にルールが生まれる。こんな掃きだめの場所にもそれなりの秩序があり、人々は住めば都の言葉通りに暮らしている。
【ななつのくに】全同盟国と加盟国の中でもっとも治安が悪い悪所と言われる悪党窟に来ている俺。
何故ここに来ているかと言えば、クーデターを起こされた国の王子が俺の噂を聞いてトウ・ダーラを頼ってきたからだ。
・王子逃走
→追手が迫る〈王子の護衛がやられていく〉
→このままだとトウ・ダーラにたどり着く前に殺されてしまう
→一か八か悪党窟に逃げ込め
こういう訳で悪党窟の大頭目、今週の当番になっていたオウから連絡があり俺に依頼人を会わせたいから来てほしい、と言われたのである。
真面目なベアンから
「タイセイ様を頼るのに来てくれはおかしいでしょう。あちらから出向くのが礼儀ではないですか」
とその通りな意見が出るが
「命がけでここまで来て、向うさんもつかれているだろうしさ。
俺は移動門で悪党窟へすぐに行けるからかまわないよ」
「確かにおっしゃる通りです、そこまで氣が回りませんでした。タイセイ様の優しさに老骨は、目を開かされる思いですぞ」
いちいち大袈裟なんだよね
オウのやつも俺の事を思って悪党窟に『遊びに来い』と誘ったのだろう。
弟の氣遣いが嬉しいぜ。
▽
「兄貴ここだよー。おぉーい」
「えぇ!? あの小妖精が魔王タイセイ……殿」
俺を見つけてオウが手を振る。隣で俺を見て驚愕の表情をしているのが依頼人の王子だろう
「ミコ達の魔王様がゴブリンだと問題があるのかい」
「違いますわよ世間ではアンダルシアがタイセイだと誤情報を流しているから、王子はタイセイの真実の姿を見て驚いただけですわ。
ごめんなさいねミコットは仲間思いなところがありますから」
俺の護衛でついて来たミコットがムッとするがジョフレがフォローを入れる。
さっきまでお手々をつないでいたのだが、フォローされている最中で抱っこされてよしよしと、背中を撫でられるミコット。
ジョフレといるとまるでネコか親子のようだね。
「魔王の大頭俺はこれで失礼します。
御用があればいつでも構いやせん、何なりといいつけて下せえ」
「うん、助かったよ御苦労様。面子も大事だけど困り事があれば『大頭目』に……今週の当番はオウか。
オウに言いなよ。
そうすれば俺に伝わるからさ」
「へい、言質を確かに頂きやした。大頭ありがとうございやす。失礼しやす」
金の刺繡が入った眼帯をつけた大男が頭を深く下げてカジノから出ていく。
彼は悪党窟を三分する勢力の一つ、アジュラム一家のアジュラムだ〈他はトベルムとクルンゲレム〉。
俺が来ると聞いて重い腰を上げ、挨拶に来てくれたのだ。
この三人が悪党窟のパワーバランスをとっているので比較的だけど秩序が生まれている。俺に対する忠誠心はないが
魔王を敵に回すとどうなるかを理解しつくしているので、反抗する事がない。
逆に俺を味方につければ天井知らずに利益が生まれる事を理解している。
変な言い方だが変わった主従関係ができているのだ。
「俺は一週間悪党窟に滞在する。一週間後の現時刻に『トウ・ダーラ大頭目の館』に全員集合とする。それまでみんなは自由時間だ、好きなように休んで羽を伸ばしてくれ。
さて、初めまして王子殿……トウ・ダーラ国の魔王兼【ななつのくに】の盟主タイセイです。我が国にご依頼と聞いていますが詳しい内容を聞かせてくださいますか」
「はいぃ……どうか、どうか我が国を取り戻し私をお救いください」
王子が俺の手を両手で強く握る。
「わーい僕ルーレットやろー。
キル君も一緒に行こうよー」
神越えのハーレムに囲まれてミラルカに手を引かれるヒト。
「にゃーカロットお前なら何やっても運で勝つにゃろ、チンチロ行くにゃ。ここは博打ならなんでもあるにゃ」
「手加減してやれよ」と母さんに言われてニャハルも連れて歩くカロットおじさん。
「オウ次郎よ、わがはいとサシでポーカーでもどうだ? 無論汝が怖いと言うなら、見逃してやってもかまわんのである」
「僕も運が強い方だけどヴォルデウスさんと、どっちが強運か決めてみたいな」
「オウとヴォルデウスの勝負かこいつは見物だぜ。レンタロウも来いよ、一緒に見学しようぜ」
「あら、サマなしですよ。二人がオウちゃん側につくなら私とアップルはヴォルデウスにつきます。
アップルが見ていますから、イカサマはできないと思ってくださいね」
【永夜の夜明け】が二つに分かれてオウを混ぜた賭博勝負がはじまる。ざわ…ざわ…
俺の後ろで自由時間と言う名の休暇をもらった幹部達は、カジノで遊ぶようだ。王子との温度差が酷い。
ちなみに悪党窟の説明だけど
・トウ・ダーラが派遣する『大頭目』がトップで下に三人の親分〈アジュラム、トベルム、クルンゲレム〉がいる。
統治は親分がするので俺は君臨しているだけ、彼らはトウ・ダーラが戦争の時は傭兵として駆り出される。
・カジノが複数ある賭博街であり、一般人もトウ・ダーラに言えば名札〈トウ・ダーラ兵士〉をつけて観光ができる。
悪党窟の住人に名札をつけている人間に危害を加えたら死罪だと前もって通達している。
・今回の王子の様に表にいるより裏でかくまった方が安全な、『訳アリの依頼人を匿う場所』でもある。ちなみに依頼人は基本は『大頭目の館』にいてもらう。
▽
二日目
俺は昼過ぎにカジノで王子と会う。
休暇を与えたのに森四郎が後ろについて離れない。「お側に居させてください」と言うので、これが彼女の休暇の過ごし方なんだろうと自分を納得させる俺。さて
「タイセイ殿、お話があると聞きました。事情は察しております。
私も戦いに加わり微力でも力を尽くすつもりです」
「いえ結構ですよ、例の件終わりました」
え? と聞き返されるのでもう一度伝えることにしよう。ストレートに伝えたつもりなんだが。
「依頼は完了しました。クーデターの首謀者であるあなたの叔父……と言うより賊軍は全てうちのシャッテンが倒しました。
依頼料は後で頂きますので祖国へ帰り凱旋して王になってください。」
森四郎が目をつぶって頷きながらパチパチと拍手する中で
チップを赤に置く俺を信じられない目で見つめる王子。
彼が【ななつのくに】に同盟を申し込んだのは、この後すぐだった
ヴォルデウス、カロット、オウ次郎はスキルで例えると天運〈ものすごい幸運〉を持っています。
しかし優劣がありヴォルデウスが一番ついています、ですのでポーカーはヴォルフが勝っていましたが、途中でオウにカロットが加わり
〈二人ならヴォルフ(エ○)に並べる、二人なら○ルに勝てる〉状態になりヴォルフを撃破しました。
アベルは王子にシャッテンが倒したと説明していますが、正しくはシャッテンが指揮官でゴーレム軍団が賊軍を倒します。
ココナ、ポウレンのその横にガンバリヤとリガンバー、バレガンもいたようです。
※二日目以降アベルもカジノで遊びます→天運持ちと戦います→負けますが、ここは負けられないという勝負ではなんと勝っています
ヴォルフ(ぼうしゅ○さん)「間違いねえ、魅入られてやがる天に……」
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