170話 【神越え】を手に入れろ
レッド・シュリンプ亭にあるタイセイ専用個室は大勢の男女でにぎわっている。
俺の他にいるのが【神越えの実力者】のニャハル、アーガシア、ミラルカ、妖六郎だ。
十英雄のトーマ、アリス、ロンメル、ヘンリーそれと新しく仲間に加わったオニオとトトニカの計11名が、部屋で運ばれてきた料理を食べて好きな飲み物を注文する。
「今日は俺の奢りさ。みんな好きなだけ飲んで騒いでお腹を満たしてね」
「ふーソンクーに呼び出されるから、僕はてっきり今回の戦いで油断した件で怒られるのかと思ったよ~」
「姉者はネチネチする性格じゃないからな、朕は何の心配もしていないぞ」
妖六郎は帰ってから二人で稽古したからさ、その中で何が駄目だったのかを自分で発見したからいいとしよう。ミラルカも勝負は何があるかわからない中で彼女は手を抜かずにやられたのだ。
こんな方法もあるのか、と彼女の中でいい経験になったんだから責めるつもりなんてない俺。
【神越え】と十英雄を呼んだ理由は他にある。
「俺達はよくよく強い絆で繋がれているようだな。こっちでも仲間同士になるなんてな」
「くそが」
トーマの発言が癇に障るシャッテンが悪態をつく。
顔はそっぽを向いて見るからに不機嫌です、と言った様子だ。
「私はお前と繋がっているつもりはないぞ」
「我らを救ったアベル様と縁ができた事は実感するがな。我とオニオはマルヴァとアベル様の仲間であって、十英雄なぞどうでもいいからな」
オニオとトトニカはシャッテンほどではないが機嫌を悪くしているようで、トーマのやつが気に入らないみたいだ。
何故ならアリスとロンメルがトーマのフォローを入れている。なのだが
「アリスは十英雄の仲間が大事。仲間は仲良くした方がよい」
「アリスさんの言う通りですよ。アベルさんのトウ・ダーラは、『種族の垣根なく仲良し』を掲げた多民族国家でしょう?
同じ種族の僕達が仲が悪いのって都合がよくないですよねぇ。仲良くしましょうよぅ」
「「悪かった。二人の言う通りだ」」
ころっと態度が変わる。
トーマの無神経な性格が嫌だとシャッテンの奴から聞かされていたが、つまりはそういう事らしい。オニオとトトニカも同じ様だ。
「俺が注文してやるよ、みんなは今ある酒をさっさと呑んで空けてしまえ。すいませーん注文ーー」
トーマの態度が変わらない様子を見た俺はある意味凄いな、と思うのだった。当然駄目な方向にである
さて、本題に入ろう。
俺が【神越え】と十英雄を集めた理由だ。
「みんな呑みながらで言いから聞いてくれないかい。
十英雄の吸収能力は魔物だけに有効だと思っていたが、ミラルカと妖六郎を吸収した事で【神越え】にも有効な事がわかった。」
もっとも、時間制限がありタイムリミットを超えると【神越え】に逆に吸収されてしまう欠陥性が見つかっている。
「アベル殿はその吸収能力を改良してタイムリミットをなくしたようじゃのぅ」
「マスターが返ってくるなり、オニオとトトニカの三人でゴソゴソしていたのはこの事だったのにゃん」
そう、アーガシアとニャハルが説明したように行動する俺。
魔神との戦いで吸収能力は大きな助けになる事がわかったからである。
オニオとトトニカは神越えを吸収した事でミラルカ、ニンフェディーネ抜きでもそのレベルが大きく上昇し、現在レベルは50,000になり時間停止、念動力などの力を有している。
それだけでなくオニオは妖帝の、トトニカは魔帝の能力を持つことが判明する。
二人は準神越えと言うべき存在になっているのだ。
俺を十英雄達は酔いが冷めたように真剣な顔つきで見る、みんな察しがいいので助かるよ。
「いいかい? 俺を含めて吸収されていない神越えは三人いる。対して十英雄は四人だけどチャンスは平等に与えたい。
誰が誰を吸収するかは、あんた達で話し合って決めてくれ」
神越えを吸収した十英雄が俺を裏切る可能性はちゃんと考慮している。
その場合〈緒山ま○ろちゃんのように頭がパーになる〉術式を組み込んである。とはいえそんな事態にはならないだろう。
「俺は子供の頃からアベルに憧れていたからな。お前らは竜帝と獣帝に行きな。世帝の力は当然この俺が受け継ぐ」
「トーマ・フルツ死にたいようですね!
トウ・ダーラ国【情報収集部門】の副長である俺……シャッテンは魔王様のお力を誰にも渡す氣はありませんよ。
俺がタイセイ様のお力を受け継ぎます!」
トーマとシャッテンは立ち上がり火花を散らす。
「アリスもアベル希望」
「すみません僕も希望がアベルさんです。決して他の人が嫌と言うわけではないんですよ」
アリスとロンメルは控えめながらも、意見を変えない様子だ。
「ニャアが十英雄の立場ならそうするにゃ。【神越え】で一番強いマスターを吸収するのは当たり前の流れにゃー」
「妥当な線と言った感じじゃのう。
わしとニャハルを吸収する者が出たなら声を掛けておくれ。それまでゆっくり呑んでおるのじゃ」
俺とニャハルとアーガシアは話がまとまるまで呑み明かす事にする。
三人が合わせるグラスがチンと鳴る
「俺を吸収するのはあんたか。いいぜ世帝の力はあんたに預けよう、って泣くほどの事かい? さっとやりなよ」
↓
↓
「うおおおおおぉぉぉお!!」
勝負方法はジャンケン! 都合590回目のあいこを越えて勝利したシャッテンいや、ヘンリー・リークが吠える。
普段は静かなる男の、魂の咆哮は、国中に響く。
「「美事ですシャッテン/副長」」
そう言うのが話を聞きつけて自部署の副長を応援する、アンダルシアと森四郎だ。周りには他の諜報員もいる。
「があぁあ、畜生!」
「畜生はないじゃろ、竜帝アーガシアの力を吸収するんじゃ、名誉なことなんじゃぞ」
アーガシアに言われて失礼と思ったようだ。
フォローを入れるトーマ、しかし残念で仕方がないと顔に感情が張り付いている。
結果こうなった
世帝アベル→ヘンリー
竜帝アーガシア→トーマ
獣帝ニャハル→アリス
魔帝ミラルカ→トトニカ
妖帝ニンフェディーネ→オニオ
「もぅ〜残念です」とロンメルがヤケ食いしている〈でも靈と人がいるからチャンスはあるんだよね〉
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