表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/347

169話 オニオとトトニカとマルヴァの縁②

〈トトニカ視点〉


「邪妖精の親玉(エビルシルフ)を倒せたが消耗が激しい。もう魔力も体力もないぞ」

「私とトトちゃんだけでもやれるものなんだな。腐れ縁と言うか何と言うか、持つべきものは幼馴染だ」


……トトちゃんか、ニオちゃんが懐かしい呼び方で我を呼ぶ。それにしても我達が反対したのに強引にクエストに連れて行きながら『エビルシルフと戦わずに逃げ帰る』とは

 弟子の三人にはきつい説教をしてやらないといかんな。



 それから弟子たちをそそのかす、あの勇者の風上にも置けない男にも。


 本当なら我らも撤退すればよかった。

 だがエビルシルフが我達の体に見えぬマーキングである『妖精の粉』をつけてしまいその手段が取れなくなってしまった。何故なら


・邪妖精はマーキングを辿り町や国を壊滅させて、自らの繁殖地を広げると昔本で読んだことがあるからだ。


 おまけにリーダーを倒してもサブリーダーが種族の長になり、戦闘を継続する厄介さを持つとも書いてあった。


・特に危険な魔物の生態を詳しく書いた勇者アベルは「深い事情がない限り近づかない事を願う」、と警告文を書いているくらいなのだ。


 アベルは自分ならともかく他の冒険者では手に負えない、と考えて書いたようなのだが……



 森の入口まで戻って来た時に、我とオニオを待っていたのは弟子の三人と、エビルシルフと戦う直前で「勝てない、逃げろ」と三人を(そその)かした勇者デロワイアルだった。



「生憎エビルシルフは倒してしまったぞ。我達を待っていたようだが一体何の用だ?」


 我にフラフラした足取りで近づく弟子達。


 手を貸してくれるのか? そう思った矢先に我の胸に弟子の剣が突き刺さる。

 我の体は何故と思う暇もなく崩れ落ちる。



 「あ……なに?

  逃げ、オニ……オ」


 こいつらから感じる殺意は本物だ。

 オニオに逃げろと言おうとするが声が出ない。

 何とか意識を繋ぎ止めるが残り少ない体力が更に削られて、戦う事など出来そうもない。





〈オニオ視点〉



「すみませんすみませんすみません。でも俺達はこうするしかないんです……。

 デロワイアルさんが教えてくれました、お師匠達がクエスト達成の内容を他人に漏らしたら俺達は破滅だって。だから……すみません」

「何でこんな事態に……トトニカァ。

 っお前達! 自分が何をしたのかわかっているのか!!」


 オニオの怒りの詰問を聞いてデロワイアルが答える。


 予定した計画が上手く行ったからか、顔が喜色(きしょく)に満ちる。嬉しさを抑えられないようだ。


「森を満たすあの魔力から魔王並みの力を持つのがわかるエビルシルフを、二人だけで倒してしまうとは

 流石と言いたいところだが、口封じさせてもらうぞ当然だろう。

 俺が貴族になった後で、お前たちの口から真実を話されてはまずいからなぁ。おい」


 勇者……イヤ小悪党デロワイアルに命令されて三人の弟子は武器を構えて私に近づいてくる。



 私はトトニカを担ぐと森へ戻り奴らを巻こうと考える、エビルシルフとの戦いで魔力と体力が尽きていたからだ。


 しかし森の奥から数え切れない邪妖精がこちらに向かってくるのを感じる。

 まやかしを使い、あれだけの数の妖精が生存していたようだ、まずいぞ


「よかった二人を始末する手間が省けたな。入口に通行不可の結界を張れ、魔力と体力を使い果たした二人には破れないだろう。後は邪妖精が始末してくれる。

 では永遠にさようならだオニオ、トトニカ。俺が褒美を受け取る時に

 エビルシルフ討伐のメンバーの中にはお前達も入れてやるから安心して死んでくれ」



 デロワイアルと弟子達は結界を張ると国に向けて歩き出す。

 後ろでは二人の冒険者が痛みによる悲鳴と怒りの声を上げている。


「なにがっ、なにが勇者だ! 臆病の卑怯者め! 勇者と言う人種がお前のような人間ばかりと言うのなら、我らは必ず甦り、貴様ら卑怯者を殺しつくして復讐してやる。オニオとトトニカは勇者に仇なす存在になってやるー!!」


 エビルシルフをやられた恨みから玉砕の覚悟で向かってきた生き残りの邪妖精の群れは

 オニオとトトニカを食い殺すと報復を恐れて国から離れていった。

 生き残ったサブリーダーは力と群れの勢力を取り戻す事を優先したようだ。





 イブナスは闇の中の怨嗟に満ちた魂を二つ拾い上げる。


 魔神の手で蘇えるオニオとトトニカが他人をもう一度信じられるようになるのは、異世界の魔王に出会ってからである。


「地上制圧もあと少しだ、これも姉上達が俺に協力してくれるおかげです。ムンドモンドをもとに戻す戦いに参加してくれてありがとうございます。

 俺は姉上達には救われっぱなしですね」

 


 人間種に裏切られて、他人を信じられなくなった二人が魔族の王により、再び他人を信じられるようになるのは皮肉に思える。


「「救われているのはこっちだぞ。ありがとうマルヴァ」」


 オニオとトトニカが真っ直ぐな心を持つマルヴァピーヨに微笑む

アベルが書いた手記はバレンシアの手で『魔物生態記』に編纂されて出版。多くの冒険者に好まれて読まれます。


デロワイアルはギルドで3人の弟子に声をかけて、オニオとトトニカにクエストを持っていくように唆します。二人をエビルシルフにぶつけて消耗させて、自分がエビルシルフを倒すつもりでした。


いざエビルシルフと対面すると『勝てない』とわかり、弟子達も話が違うと逃げ出します。

オニオとトトニカが死ぬ思いでクエストを達成して返ってくると、自分の醜態を話されてはマズイと考えるデロワイアルに殺害されました。


ユーベ○ブラット好きです。


後日譚→サブリーダーは力を蓄えて繁殖地である王国を襲います。王は貴族デロワイアルと3人の弟子達に討伐を命じます〈兵士もつけられており逃げられません〉。

→王から見て邪妖精を倒す実力を持つはずの四人の英雄は、情けない声を上げながらあっさり倒されて王国は滅びました。


その後大勢力となった邪妖精の集団は、依頼を受けた勇者ブーニカにより倒されます〈ソロクエストのブーニカは剣士の里の剣士とエワードのエリート騎士を呼び寄せ、邪妖精と死闘を繰り広げます〉


  面白かった次も読みたいと思われた読者さま


          下の



      ☆☆☆☆☆を押して


      ★★★★★に変えてください



      彦馬がよろこびます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ