168話 俺の好きな人
「勇者アベル殿よくぞ魔王を倒しムンドモンドを平和にしてくれました。
人間種いえ人類を代表して、お礼を言わせてください。本当にありがとうございます」
「ふん」
凱旋した【一神四帝】にお礼を言うアルマ。
俺の後ろでは討伐されたはずの魔王がアルマの言う言葉を聞いて、不機嫌になっている。
「「マルヴァ、めっ! だめだぞ/正体がばれたらどうするんだ」」
オニオとトトニカにたしなめられてシュンとするマルヴァ気持ちはわからんでもないが、大人しくしててよ。
「どうかなさいました?」
アルマがマルヴァを見て首をかしげる、不審に思う様子だぜ。
やばくなる前に元の世界に帰ってしまおう。
「何でもナイデス俺が倒した魔王ですが、魂は消滅しませんでした。このままだと復活する恐れがありますがどうか安心してください。
異世界に封印し、見張りをつけて二度とこちらの世界に現れないように、処置しますから」
俺の世界にマルヴァを連れ帰りオニオとトトニカと一緒にトウ・ダーラ国軍に組み込む。
言い方が違うだけで、嘘は言っていない。
俺の話を聞いてアルマの周りに居並ぶ部下と家臣連中は感心したように「おぉ、さすがは勇者様。あのような勇者様を召喚したキルレインも鼻が高いだろう」と言い
「いえ自分は世界を平和にしたい一心で、召喚しただけっすから」
ヒトが照れながら鼻をこするがあんたが召喚したのは俺ではなく、ブンキチだろう。
調子がいいところは俺の世界のヒトと変らないね。
「でも名残惜しいっすよ。
アベルさんの世界の俺って凄く強い剣士じゃないすか。俺にも剣を教えてほしかったなー」
「教えてあげるよ。そのための準備を前もってしてきたんだぜ。おいでナイ」
俺に呼ばれて、小さな少女がトテテと歩いてくる。
髪が長く腰まで伸びるストレートの髪型に湖を思わせる青い瞳で、肌は赤銅色と言うか健康そうな色の褐色肌をしている。
俺はエワードに帰る前にいろいろ行動したのだが──
・アベルの役目を果たすナイを蘇らせる〈15歳の襲われた記憶を封じ9歳の体で再生する〉。
そのままだと何もできないままなので
エラリオと出会い過ごした俺の思い出と、俺の戦闘能力〈レベル10,000状態〉を移植する
・天界に上り〈アーガシアに竜の子太郎のように乗るアベル他獣、魔、妖帝が目撃される〉【大権】を制御して、この世界のマナを正常に戻す。マナの流れは正常に戻り、生み出す力が強力になる。
これがマルヴァの願いなので、マルヴァはこのムンドモンドに未練はないと言い
俺に力を貸すことを約束してくれた。
とそんな感じでエワードに帰ってきたのだ。
「小さくてもレベルが英雄級はあるぜ。この娘の弟子になって剣を学べばいいさ、ナイ、ヒトのやつをビシバシ鍛えてやってよ」
「キルお兄ちゃんこれからよろしくね。僕一生懸命教えるから」
ハハハと玉座の間に笑いが木霊する。
さぁ俺達の世界に帰ろう
▽
次元にチャンネルを開けてトウ・ダーラに帰還した俺を待っていたのは、仲間達の熱烈な歓迎だった。
「「お帰りなさい兄貴/タイセイ様/アベル!!!」」
「あはは、くすぐったい。ああっ」
抱き着かれてほっぺたやら胸と尻など体をもみくちゃにされる。
尻を鷲掴みにされて思わず声が出てしまう俺、誰がやったんだ?
息が荒く「おほぅ、女神様」と嬉しそうに言う
ケシ太郎が、俺の胸とお尻を触った犯人だね。
後でちゃんとお仕置きしとこう。
「話は聞いているぜ大活躍だったようだな」
俺の帰還を聞いて駆けつけたミコットはジョフレにぬいぐるみの様に抱かれていて様にならない。
なんと言うかその状態で可愛い決め顔はどうかと思うぞ。
話は聞いているねぇ……。俺が居なくなった理由をサンの奴が説明でもしたんだろうかと思い、あたりを見回した時に氣付く。あぁ……
「さすがはアベルだ。
僕は君ならレインを連れて帰ると信じていたぞ。もっとも十英雄と魔王を戦力として味方につける事までは予測できませんでしたが」
「わがはい達からアベルを奪っておいてその言い方。ヨルゼン様は御立場をわかっておいでかな?」
「反省の色が見えません、正座の時間を30分延長にします」
怒るヴォルフとルーに正座をさせられているジロウを見る。
見なかった事にしよう。
俺はジロウの「アベル? えぇー、ねぇ二人に私を許すように言ってくださいよぅー」の言葉を聞き流して彼女の下に歩く。
「お帰りなさい我が君。ご無事で何よりです。うぅ」
アンダルシアが涙を目にためて俺を抱きしめてくれる。
俺は彼女が俺を思ってくれるのと同様にアンダルシアが好きだと自覚する。
異世界を旅して得た経験、オニオとトトニカそしてマルヴァがお互いを大事にする姿は俺を成長させてくれたみたいだ。
「アンダルシアただいま」
俺は大好きなきみを抱きしめていた。
アベルがようやく人並みの恋愛感情を持つようになりました、彼女はアンダルシアやアーガシアと子供を作る様になるかもしれません。
オニオ、トトニカ、マルヴァは助けられた後でアベルにスカウトされて仲間になりました。
魔神に疎まれている事を知っている二人はヘンリーのように、魔神のもとには帰れないとわかっているからです。
「勝者に敗残兵である我らの処遇を任せる。あなたが我々〈オニオ、トトニカ〉の力がほしいと言うなら、そのとおりにしよう。魔神の下にいるより働きがいがありそうだ、アベル様」
アベルの手をこれ以上ない力強さで握る二人なのです
※この世界の大権をつかい魔神を倒すことはできません、大権と大権の力が拮抗していて反発するからです。
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