160話 快進撃
【一神四帝】の快進撃は続く。
一時は城にまで攻め込まれるエワードもとい、人類軍は勇者パーティーの活躍によりその領土を拡大している。
前はムンドモンドの85%が魔界(魔族の領土)だったが、現在はムンドモンドの90%が人類の領土だ。頑張った俺。
そして
「が…………はっ、ぐぁ」
ミラルカが都市を支配していた師団長をたった今倒したので、人類の領土は95%になった。
「はいおしまい!
僕の役目は終わりだから、ソンクーに後は任せるね」
ミラルカは異世界では不機嫌な事が多い、マナの影響を受けないくせに、弱い魔族に我慢がならないからだ。
少し気持ちがわかる、ミラルカの立場からすると魔族の精神は強者を尊ぶのだから仕方がないと言えるだろう。俺もこんな魔族なんかにやられるない、と異世界の人間種に思うわけだし。
酒場に直行するミラルカと氣の向くままに動く妖六郎は、ミラルカに付き合うようで別行動になる。
さて都市を解放した俺は今まで解放した都市と同じ行動をする。
目的である七勇者の捜索だ。
都市の人間にもお願いして、魔物の姿をした勇者を探してもらうのだが見つけられなかった。
消去法で言えば探していない最後の一か所に、目的の勇者がいる事になるね。
魔王マルヴァピーヨのいる魔王城である。
「わしらが解放した都市にいたのは師団長ばかりじゃ、マルヴァピーヨの幹部である魔王将は終ぞ見なんだ」
「ばばあはこう言いたいんにゃろ? 魔王は全ての魔王将を城に集めてニャア達を迎え撃つきにゃと」
「うむ」
アーガシアの意見にニャハルが結論を言う。俺もちょうど同じ事を考えていた。
魔王は全軍を使い邪魔な勇者パーティーを始末してから、世界征服を続行する氣だろう。
この世界の人類種からすれば脅威なんだが、【神越え】からすると〈黒王様の漂流者と人間を一か所に掃き集める手間が省けた〉状態でしかない。
ぶっちゃけると、ここの魔族は弱すぎる。
今日は酒場で打ち上げをして
明日アーガシアに乗って魔王城に行くかな。
▽
俺が思った通り、マルヴァピーヨの魔王城は多くの魔族と魔物が軍をなしている。
理由はとうぜん俺達を迎え撃つからだ。
だが人類の弱さに胡坐をかいて、鍛練をしなかった魔族に俺達が止められるはずがない!
「シャッーー!!」
「疾く逃げねば死ぬぞ」
50メートルある大化け猫が暴れまわり、同じ大きさの黄金竜が空を飛んで魔族に攻撃する。
別の方角では50メートルの巨人が魔族を蹴散らして
「それでも魔族か! その程度の強さで満足するなど魔族の恥だと思え!
僕と同種なら自分の正しさを、強さで示してみせろ」
無茶を言うね。
逆の方角から長身の魔族と妖精のハーフが自分におそいかかる魔族をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す。
「もっとだ、余を楽しませろ魔族のまがい者ども! 魔帝程ではないが、朕は貴様らを魔族と認めんぞ」
ミラルカ程ではないが妖六郎も怒っている。
半分魔族の血が流れているから弱い魔族の存在が、妖六郎を馬鹿にしていると思っているのかもしれない。
言いがかりに近いけどね。
こうしてみるとあの四人の姿に見覚えがある俺。
昔話の桃太郎にそっくりなのだ。
桃太郎なら相手を懲らしめて、鬼の大将が謝るところだが、魔族だとそうはいかない。
「待て、マルヴァピーヨの魔王将がひとり、このカズアと勝負しろ」
「「同じくワセノ/我が名はリトヒ」」
魔王将の数合わせの一人が、……ではなくて三人の魔王将が勝負を仕掛けてくる。
「いいぜ、やろうか」
俺はそう言うと、加速して一氣に距離を詰める。
「姉者待て、獲物を獲るなずるいぞ!」
耳に妖六郎の声が聞こえるが、かまわずに
「アベル流火の王」
「極光魔法」
「金縛りの術! からの〜通常攻撃~」
相手は死ぬ。
こうして長く辛い死闘を制した俺、うそです簡単に倒しました。
周りを見るとあれだけいた魔王軍が全滅している。頼もしく恐ろしい仲間だよ。
「あ~ね~じ~ゃ~」
「わかっているって今度埋め合わせするよ。妖六郎の好きな時間に、
俺と四季の家で稽古をつけるでどうだい?」
「あ~、ニンフがニコニコしてる。君こうなるとわかってて、声を掛けたんでしょ」
「「ニンフはずるいのじゃ/にゃ」」
彼女は普段の女王様みたいな喋りと違い内面に幼さがあり、ギャップとなってかわいく見える。
俺は妖六郎の頭をクシャとなでて【一神四帝】は城へ入る。
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