158話 神々の戦い~創造神の決断と命の攻火~
次の日に俺はエワードの城でアルマに会う。
アルマ女王は姿が同じとは言え、俺の知るアルマと、どこかが違う。
違和感と言い換えてもいいのだが、実はこの違和感が世界を流れるマナにもあったりする。
こっちのムンドモンド自体、
俺がいた世界と根源から違うのかもしれない。
「キルレインから事情を聴いています。異世界の勇者アベル殿ですね、魔王マルヴァピーヨを倒し人類を魔族の手からお救い下さい」
……アルマから聞く魔王の名前は聞いた事がない。ダレダヨと聞き返したくなるものだった。
アルマに俺の世界の魔王イフマイータの話をすると、今度はアルマが聞いた事がないと言う。
少し興味がわいた。並行世界でありながらお互いに辿った歴史が違いすぎるからだ、俺の好奇心は抑えられなくなっている。
俺は【神越えの力】を使い二つの世界はどこから歴史が変わるようになったのか、と俺が知る人物はこっちの世界ではどうしているのか。この二つを調べる事にする。
魔王マルヴァピーヨに関しても正体は実は魔神でしたー、ではどうしようもないからね。
その場合はチャンネルを開いて俺の世界から、トウ・ダーラを含む【ななつのくに】軍を呼ぶ必要がある。マルヴァピーヨが放つ言霊の強弱からそこまでは強くはないとは思うが。ようするに用心の話さ。
「お任せください、我が手で魔王を倒し必ずや世界を平和にしてみせます」
「さすがマスターにゃ」
「お頼み申し上げます勇者様」
アルマは俺に頭を下げて謁見は終わる。
▽
頼むと言っていたけど本当に、勇者に丸投げなんだな。
金はおろか武器も与えずに旅立たせるとは。
国の中に攻め込まれるくらいに追い詰められているから余裕がないのだろう。
愚痴を言っても仕方がないので行動する。
まずは旅立つ前に調べ物だ。俺はニャハルに
「俺も氣をつけるつもりだけど、何かのときは俺の体を守ってくれ」
「ニャアに任せるにゃ」
俺の言葉に快諾する彼女。
さて【世界とリンク】をしよう。
足を座禅の形に、腕は自然体でダランとした俺の意識は体から抜け出して、世界を駆け巡る大きな流れ――マナと一つになる。
神越えでなくてもできる術法だが未熟な者がするとマナに同化したまま体に戻れなくなる事があるため、禁術に指定されている。話を戻そう。
マナは世界が誕生したときから途切れることなく駆け巡り、世界で起きた事を全て記憶している。
俺は世界と一つになって調べ物をするのだ。
▽
俺は俯瞰してある戦いを見ている。ここが俺の世界と違う、【最初の分岐点】になるらしい。
俺も直接見るのは初めてなのだがおとぎ話で知っている。
創造神が魔神を封印した『神々の戦い』のクライマックスシーンのようだ。
「もう一息だ。ウルゼだけに戦わせるな、我々も【勇氣と冒険を司る】女神を援護するのだ!!」
カルナティオは親友であるウルゼを死なせまい、と大神に呼びかけ神が一丸となって魔神に立ち向かう。
俺の世界だと名前だけが伝わるウルゼ神。
世界中で各国の神官が降神の儀式をしたが、姿を拝むことができず、
ヴォルデウスでも失敗した。
そんな女神が剣を巧みに操り、最前線で魔神にダメージを与え続けている。
他の神もウルゼの勇氣に元氣づけられてなのか魔神を全く恐れていない様子だ。
また一撃魔神の額に剣が入る。
「おのれぃ、ちょこまかと。ウルゼめ、貴様がいなければ追い込まれることはなかったのに」
「バルケスティ様、魔神様は弱っています。止めをおさし下さい」
振り向いたウルゼの呼びかけにバルケスティは両手を魔神に向けるが、何も起こらない。魔神の策だろうか?
「ははっはははははははははははは。はぁーあ、
バルケスティどうした? 今なら私を滅ぼせるぞ。お優しいバルケスティ様は私にわざと負けて下さる氣かい? はははははは」
「魔神様め! 大権をお使いになられたか! 卑怯な」
「ウルゼは氣づくのが早いねぇーー。戦いが始まる前に手は打っていたのさ。大権への願いはこうだ
【私はこの戦いで、神達にダメージをいくらもらおうが滅ばない】とね」
バシっとウルゼを腕で弾き飛ばすと魔神は勝利宣言をする。
「お前たちの魔力も無尽蔵ではあるまい、体力ならなおさらな。私の力の回復を待ってから、じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!」
この時バルケスティは決断を迫られていた。
彼女は【大権】に抗し得る【賽子】を確認していた。〈出目は1、出した者に最高の結果を与え、また1の時だけ【大権】がもたらす効果を凌駕する〉
本来であれば魔神と交代で管理する神具であるが魔神が変わったあの日からバルケスティが隠し持っていた物だ。
創造神は愛しげに魔神を見る。
「イブナス。あの日、二人でムンドモンドの大地を見た夕刻を覚えていますか? 海を、空を見た真昼の時間を。
私は忘れた日はありませんよ、朝日が登る時刻です。
虚無の世界に命が生まれたあの時にあなたは私よりも喜んでいましたね。
…………。
お前の子供じみた野望はここまでです。イブナスの心が悪に染まり切る前に終わらせてあげます。
私の命と引き換えに!!」
出目が1の賽子が凌駕すると言っても性能は大権が大きく上なのだ、破るには無理をする必要がある。
十二神さえ創造神と運命を共にする決断をする。
ジロウではない俺が知らぬ十二神のリーダーが叫ぶ。
「魔神様を未来に残してはならぬ。神々が生み出した問題は今、この時に、我々の手で断ち切るのだ。バルケスティ様に続けぇーー!!」
ウルゼが、カルナティオが、ドラグーンとバルトエード、他の十二神達、ハイエア、たくさんの大神と小神……そしてバルケスティ。
神々は自らを光の攻撃エネルギーに変えて魔神に突進していく。
「馬鹿な! 神々が己の命より、ムンドモンドと人類を残す攻撃手段を取るとは。こんなはずではない。私のや、野望が……」
魔神は大権の願いを超える攻撃にどうする事も出来ず、滅ぶしかなかった。
俺は創造神がいなくなった後のムンドモンドを見ていく
アベルがいた元の世界とは神々の存続が異なります。
元の世界→魔神封印、創造神を含む神々が生き残っている
異世界→魔神消滅、創造神と神々も消滅
神が全滅したわけではなく生き残りはいますが、攻撃に参加できなかったのはどれもレベルが低い神です。
この事が原因で、異世界はマナの循環が弱く、人類はレベルが低く、魔神が遺した魔族に対抗しづらい世界が構築されています。
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