14話 イヤはないのだ
取引を持ち掛けたゲシィは勝利を確信したんだろう。
邪悪な笑みはさらに醜悪さを増していた。
たしかに、ほかに手はないのだろうが。
「わかったぜ」
この一言でゲシィはさらによろこんだ。
そのすぐ後で絶望に叩き落とされるとも知らずに。
「よーくわかったぜ。おまえらまとめてぶっ飛ばしてやる。腐った膿はこの小魔界で生きる民草のためにソンクウ・ゴウジャがすべて吹き飛ばしてやるぜ!」
ばかの喜びもつかの間だった。
俺は自分の胸の中の火が燃え盛るのを強く実感する。
その業火にいざなわれるように体は自然と動きをとっていく。
目の前のゲシィとその後ろにいるジクリコウめがけて――
いまのレベルじゃ未完成も同然だけどな、ゲシィには特別に見せてやるぜ。
腰を少し落とした居合の構えをとり、鞘の中の刀身に渾身のエネルギーを集合させる。
「アベル流攻守混合の番『エンデ・ジエンド』」
ゴオォオンと天地鳴動したような轟音が響く。
目標めがけて振りぬいた破壊のエネルギーがゲシィを消し炭へ変えて、すぐ後ろのジクリコウにも襲いかかる。
さすがに護衛にはばまれてダメージは軽微に済んだみたいだ。
こうして俺はゲシィを負かし今回の大会は異例となる。
外部の者が優勝を飾るという初の事態になったのだった。
「我が甥ゲシィを倒すその実力ゴブリン村のソンクウとやら見事である」
公の場ということもあるのだろう。
冷静の仮面を外すことなく怒り心頭の魔王はそう祝辞を述べる。
「おほめいただき恐悦至極にございます。しかし敗れたとはいえゲシィ殿は真のつわもの、今回は僅かに運が私に味方しただけでございましょう」
お互いに腹の底を隠したまま表彰式はおわった。
俺とジクリコウは互いの目を見据えながら……排除すべき敵だと認識する。
ちなみに優勝の褒美として1000万ディオン貰った。
国と専属で契約してる冒険者の年俸に当たるもので中々の褒美だと思う。
「ゴブリンさん私の家へ来てくれ誰もいない場で話がしたい」
「大兄貴、ガウさんす」
「うん」
ヒトとオウを村に帰した俺はガウの家に招かれる。
中は人払いが済まされ俺とガウだけの二人だけの場となった。
まずは優勝おめでとう。
ガウの話はそこから始まった。
そして魔王が起こす行動もつぶさに、おしえてくれる。
脅しは含まれていない。
魔王の近くにいる幹部の目から見た何度もジクリコウがしてきた報復の内容だった。
ゲシィがいっていた村のとりつぶしは確実に行われるそうだ。
ガウは俺たちを本気で心配してくれている。
雰囲気で分かった。
「忠告痛み入るよ。本題を聞かせてもらおうか、いま言った内容はガウ殿には関係ないことだろう。ほっといてもガウ殿に損はないんだからね、これは俺と魔王の問題だしさ」
さすがだ。
そう言うと彼は周りも見渡し誰もいないのを再度確認して本題を話すといった
「今からはなすことはこのトウ・ダーラで起きたある王家の悲劇の話だ。私はこの時のためだけに生きてきたし。ゴブリンさんという、ようやく得た機会を逃す気はない」
重い、そして真剣な口調だ。
「はなしてくれ、大丈夫俺は口は堅い方だ」
頭にいつかの少女を救った旅人の姿が浮かぶ。
そうだ。
旅人が俺を助けてくれたように目の前の人が本当に困っているならアベルに否やはないのだ。
【レベルが上がり神々からの祝福を授けます ちからまもりすばやさが700上昇 体力魔法力が500上昇しました。
光魔法を取り戻しまし…神々からのメッセージを一通確認。
開封します『おかえりなさい勇者アベル』以上です】
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