外伝 テッキ国復興記④~ななつのくに主要加盟国、ガンバリヤのテッキ国~
「テッキ国がトウ・ダーラに差し出せるのはゴーレムの製造技術です。我が国はココナが封印したゴーレムの技術を解析して、独自のやり方で復元しました。
それで培った部品の作成コストの削減。
そして、なにより、コアの魔力消費を抑えて『ゴーレムの稼働時間を伸ばす』ノウハウはムンドモンド一と自負しております。
技術者達はヒトノテキに強制されたとは言えテッキ国の滅亡原因を作ったと言い、我が国と運命を共にする覚悟を持ち国外には逃亡しておりません。
どうかテッキ国の技術を魔神との戦いにお役立てください。
その見返りとして我らに偉大なる魔王様の守護をお与え下さい! 我々をどうか! 魔王様の下へ加えてください!!」
私は恥も外聞もなく一氣にまくしたてる、最後は懇願である。
でも言えた、怒らせれば世界などいつでも消せる力を持つ『七人の一人』に、私は【神越えの世帝】に自分の意見を言えたのだ。
力では敵わないけど、意見を言う精神力は別だ。
私は清々しい気持ちだった。
「いらないな」
聞こえたのはそんな声。
タイセイは続けて理由を言う
「わが国ではコンノ・ココナを【技術部門】の長に置いている。
テッキ国の劣化品に頼る必要がないし、技術者に関しても人間種よりはるかに技術力があり、労働意欲の高い小人を獲得している。
隠れ里に住む彼らを見つけてくるのは苦労したがな」
「あ……」
どうしよう、上手くいくと思ったのに、ココナと小人がいるなんて知らなかった。
本当ならここで何か言い返して、縋らなきゃいけないのに
「うぅ」私の目じりに涙が浮かぶ。
だってテッキ国には、ほかに交渉材料がないんだよ。
タイセイはともかく膝の上のソンクウも私を怒ったような顔で見ている。私の見通しが甘かったんだ。
『俺は怒っていないよ、この顔はあんたを心配してなんだけどね。
アンダルシアは氣付かないみたいだね、大丈夫さ、助けてあげるよ』
頭の中で誰かの念話が聞こえたその時だ。
兵士の一人に命令するソンクウ。
「ココナをここに呼んで、断られたらソンクウの命令だと伝えてよ」
「はっ! かしこまりましたソンクウ様!!」
▽
玉座の間の外で転移の魔法が使われたらしく、ドタドタと足音がして狐を思わせる少女と、小人の男が入ってくる。
「なんの用なんじゃアベルおー……。おっと! ソンクウよいか、私等は忙しいんじゃぞー」
「ポウレンです。ソンクウ様のお呼びによりココナ博士と、ともに参上しました」
ソンクウはついたばかりの二人の前で説明せずに指をパチンと鳴らす。
「【技術部門】の部門長と、副長の意見が聞きたい、テッキ国のゴーレム技術は我がトウ・ダーラに要らない物かい? 今の指パッチンで、ガンバリヤ殿がここでした説明内容が頭に入っただろう」
ココナとポウレンはぷるぷる震えると
「「さすがソンクウ」」
とス〇ッチに対する学園生活支援部の、〇ッスンとヒ〇コのように言う。
一体なんだろう?
結果を言うと魔王タイセイはテッキ国を【ななつのくに】の同盟国に加える。
同盟に至る経緯なのだが
・ココナは無尽蔵のマナを動力にしたゴーレムを開発する←タイセイから「マナを絶たれたら動かないよね、問題を解決してね」と言われる→苦戦中
・テッキ国が持つゴーレムのコアを組み込めば、マナの供給を絶たれても自家発電をして動ける〈問題解決〉
なによりココナの
「私の技術を解析するとは優秀じゃのー。
君ら全員トウ・ダーラの【技術部門】にスカウトするぞ! 就職決定じゃー。
なぬ? トウ・ダーラに住む必要はないじゃろ、ディメンション・ドアを通ってテッキ国から通えばよいのじゃ」
と就職決定の一言が同盟の後押しになったと思う。
私がびっくりするのは、タイセイの態度が変わる事だ。
謁見の時はわざと厳しくすると聞いた。
大切な王の命を守るために、変な輩を同盟に加えてははいけないのだ
、とタイセイの影武者であるアンダルシアは言う。
ともかく我が国とトウ・ダーラは同盟国となり、トウ・ダーラは潤沢な資源と資金を惜しみなく我が国に輸出してくれた。
おかげで滅亡を待つだけの、テッキ国は復興を果たす。
トウ・ダーラと同盟した事により、周りの国々との国交も少しづつだが回復していき、前よりも裕福になる。
国交回復したのは周りの国がトウ・ダーラと結びつきたいからだろう。
「タイセイ様のいる場に、私を是非にお連れください!」
テッキ周辺国の王が言うせいで
私の耳タコになったセリフである。
▽
私はソンクウがしてくれた助けと、彼女が言う言葉を生涯忘れない。
「心配してくれるのは良いんだけど
アンダルシアは俺、つまり、タイセイのふりをするときは、もう少し態度は柔らかくした方がいいね。子供がみたら泣いちゃうぜ」
「ソンクウ様申し訳ありません。いいえ、我が君」
ソンクウがタイセイをアンダルシアと呼んで、タイセイはそのソンクウに我が君と言う。
あぁ、やっぱり私が思っている通りだ。
私へアンダルシアの膝を降りたソンクウは威厳ある足取りで近づく。
駆け寄る兵士の手で真紅のマントを着込むさまは妙に似合う。
ソンクウは私の前まで来ると、悪戯をばらす子供の様におどけた様子だ。
「最初に言ったでしょ? 魔王タイセイは自分の目で客を敵か同盟相手なのかを見るって。
騙してすまない、トウ・ダーラの魔王タイセイはこの俺さ。」
「はじめましてっ……じゃなくて、あの、その
テッキ国王のガンバリヤです」
私の手をタイセイの両手が優しく包む。
暖かくてがちがちになった緊張がほぐれていく。
「ヒトノテキならお断りなんだけどさ、あんたは別だよ。王自ら動く常識にとらわれない行動力。
実行に移す決断力、俺はあんたが氣に入った。
アベルでもソンクウでもタイセイでも好きに呼んでね。
ガンバリヤ、これから我が国と末永いお付き合いを願うよ」
そう言い屈託のない笑顔を私に向ける彼女。
この後で彼女が奢ってくれるエビフライは、
私の中で一生忘れられない味になった。
すごいこれが真実のトウ・ダーラなのだ。
私の目の前に広がる光景は最初に来たときと違い、世界の頂点にふさわしい姿に変わっている。
ゴーレムが闊歩し、馬のいない馬車はハンドルを握る御者が動かす。
タイセイ様から「土産に持っていきなよ」、と渡されたのは鍛冶王が鍛えた武器、そして伝説でしか聞かないエルフが織る魔法防衣である。
ココナ殿からネオ紺野式一郎太壱号という名のゴーレムももらった、至れり尽くせりと言うやつかしら。
「禁忌ゴーレムとは出力が段違いじゃないか」
目を輝かせてココナ式ゴーレムを見ているバレガン。
と、とにかくテッキに帰って同盟締結を国民に知らせなくちゃ
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