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外伝 テッキ国復興記③~ガンバリヤ姫の戦場~

〈テッキ視点〉


「ワヒンワヒン。キュウウゥーン」

「泣かないでリガンバー。ソンクウ殿は合格だって言ってくれたでしょう」


 私は人目をはばからずに泣く、リガンバーの背中を撫でる。

 一撃でやられた試合を見て合格判定が出るとは思わなかったが、どうして合格にしたんだろう。私の視線に氣づくソンクウは疑問に答える。


「勝敗は別にして〈どうせウチが勝つし〉試合後に生きていたのが素晴らしいんだよね。と言うのも、普段テストを受ける外部の者は一撃で死んじゃうんだ。

 死なれたら困るから〈蘇生〉を掛けるけど、テスト生は生き返った事にも氣づかないレベルなんだよ」


 ソンクウは「でも」、と言いながらリガンバーの頭を撫でる。


「このワンちゃんは生存した。いいかい? 自分よりレベルがはるかに勝る相手の攻撃を受けきったんだ。

 これはすごい事なんだぜ。

 タンクとして鍛えていいし、相手の攻撃を受けながら突っ込む重戦車のような戦士にもできる。

 タイセイはお喜びになるさ」


 そうらしい、私は戦士ではないのでソンクウの言っている事がちんぷんかんぷんなのだが、私の国の兵士はトウ・ダーラから見ても逸材らしいのだ。



 ふとソンクウが私の連れている献上品(ゴブリン)に目をやる。


「あぁ……赤髪のタイセイは白いゴブリンを寵愛している噂かい。この噂で他国からの貢ぎ物はゴブリンが多いんだよね」


 言いながらソンクウはゴブリンに話しかける、奴隷のしつけを受けた元奴隷の少女は口をきかない。

 私はまずいと思い、代わりに応えようとするのだが


「ガンバリヤ殿には聞いていない。俺はこの子の口から聞きたいんだ。

 君はどこから来たの? 親は? 名前は何て言うんだい?」


 ゴブリンに親はいない戦争孤児だ。

 両親が戦死した後はぐれた所を冒険者につかまり、奴隷商に売られたと奴隷市場で聞いた。

 少女は自分と同じ小妖精を見て氣を許したようだ、一言だけ「ガジア」と答える。


「ガジアか、いい名前だね。南の地方でよく聞く名前だなぁ、俺はガジアの一族の集落がある場所は知らないけど、アニーならわかるだろう。

 この後、君がタイセイに献上されたら君はトウダーラの物になる。

 好きに扱えるからアニーに連絡して、そしたら飛行船で君を集落に送り返してあげるよ」


 私はガジアの頭を撫でてほほ笑むソンクウを見てこの小妖精が魔王(交渉相手)ならいいのにと思う。


 ガジアは奴隷生活を想像していたのだろう、集落に戻れると聞いて涙を流している。

 それにしてもタイセイを呼び捨てにするソンクウは不敬にあたるんじゃないの?





 私達三人は玉座の間の前で謁見の順番が来るのを待つ。

 トウ・ダーラの庇護を求める国は多く、私達はその一つに過ぎないと言う訳だ。

 別に不満があるわけではない、相手は超大国だから仕方がないと思う。



 近衛の兵士に代わりタイセイの親衛隊と言う、赤いドリアードと緑色のリビング・アーマーが私に声を掛ける。


「我が君の準備ができたようです。

 テッキ国王ガンバリヤ殿、どうぞ中にお入りください。ここだけの話ですがタイセイ様は三人を、すごく気に入られているご様子ですよ」

「タイセイ様はガンバリヤの事が好印象だと言ってる。ファイトだよ!」


 氣休めでもありがたい。

 私は二人に会釈してから玉座の間に入る。



 部屋に入る時にバレガンが私に耳打ちする。


「氣をつけて、部屋全体が強い結界で覆われている。しかも、異空間への繋がりを多数感じるよ。

 言い換えるなら玉座の間は『怪物の腹の中』だ。タイセイはいつでも、僕達を異空間に放り出して幽閉できる

「大丈夫、タイセイは馬鹿じゃないからテッキ国が戦いに役に立つとわかればなにもしないわ。

 それに同盟を結ぶ以外にテッキ国が生き残る道はないんだから!」



 大きな広間に騎士が居並び、私は中央に親衛隊を侍らせた、赤い髪の魔族を見つける。


 玉座に座る魔族、間違いなくタイセイだろう。

 私は綺麗な人だと思う、噂では男のようだと聞いたけど全然当てはまらないわ。


 腰に魔剣を下げているのは魔族の習わしなのか、私達を信用していないのかどちらとも判別がつかない。

 後者だとすれば親衛隊の言う言葉が嘘になるので、そうだとは思いたくない。


 私は彼女と目が合うと自然に腰を落として配下のポーズをしていた。私だけでなくリガンバーとバレガンも同じポーズをしている。

 これが王者の風格と言うやつかしら。


「私がトウ・ダーラ魔王タイセイである。遠い所から良くぞ来た。

 知っていると思うが私は魔神と戦う仲間を、必要としている。テッキ国は我がトウ・ダーラに敵対した過去からその国力を大きく落としたと聞く」


 その通りだ、テッキ国は滅亡寸前になっている。

 タイセイは続ける。


「聞かせておくれテッキ国は私の仲間たりえるのか? 

 私は何も差し出せぬ相手を保護するほど、お人よしではない。お前達は何を差し出せる? さぁ!」


 大丈夫、謁見は頭の中で何度もシミュレーションしてきた。立ち上がり目を見て話す、それだけだ。

 なのに体が金縛りにあったように動いてくれない。


 どうしようタイセイを怒らせてしまうかもしれない。


「俺の心証を良くといてよかったね、助けてあげよう」



 何時の間にいたのかソンクウが私達の背中を軽くたたく。

 すると動けなかったのが嘘のように体が動く。


「戦場じゃあプレッシャーで動けなくなることが良くあるんだ。

 一種の恐慌状態さ。

 俺の魔力を体に流したからもう平氣だろ?」

「ソンクウさ……。私の大事なソンクウが言っていた客人はテッキ国の方々か、すまないプレッシャーをかける氣はなかったのだ」


 そう言うタイセイからは先程までの威圧感が消えて、彼女は愛おしそうにソンクウを膝に乗せて、抱きしめている。

(ありがとうソンクウ殿、ご助力感謝します)


「説明させていただきますタイセイ様。わがテッキ国が出せるモノは――」


 ソンクウの言う通り、私にとって謁見は戦場だ。

 テッキ国の未来のために【同盟締結】と言う勝利を、手にしてみせる。

ガジアは献上された後、アベルが鍛えて国に送り届けました。

アンダルシアは影武者タイセイとして演技しています。今回威圧的なのは、アベルを守るためです。

誰が敵なのかわかりませんし、謁見相手がアベルに良からぬ企みをしているかもしれません。

普段の彼女は優しい女性で、アベルに見せている姿が本当の姿です。

アベルは普段はタイセイ様と呼びますが、ガンバリヤを氣に入ったのでサービスしています

→ソンクウがタイセイだと見抜けば洞察力を買って、すぐに同盟締結します〈過去に主要同盟国ではないですが、見抜いた王がいました〉


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