147話 世界の頂点トウ・ダーラの戦争①
最前線に立つ【永夜の夜明け】を見る、エワードの兵士は口々に声を漏らす。
「【永夜の夜明け】だ。勇者アベルのパーティー……。
魔王を倒し、世界と人類に夜明けを齎した、で、伝説の存在達。」
「いや真ん中だけ違う。アベルではなくゴブリンに変わっている」
ざわめきは敵軍中へとまたたく間に広がり鎮まる事はない、兵士の目には迷いが浮かぶ。
お互いの軍を比較して勝ち目がない、と悟っているからなのかもしれないね。
俺は最後通告をするために息をスゥーーと吸い込むと、火魔法の如く口からバッと吐き出した。
声はよく通り、振動する大氣はびりびりと震えている。
「勇者アベルは復活したぞ! 俺が暮らしたエワードの兵士達よ、我と一戦交えるか?
それもよし、だ。死ぬ覚悟があるとしてすぐに名誉ある戦死をくれてやる。
諸君は知らぬ事だが俺の目的はエワードに残してきた俺の、聖剣を返還してもらう事だ。エワード王に通達はしたが拒否された! だからこの手で取り戻す!!」
セーナとルーが「当たり前だぜ/です」と追従する。ヴォルデウスは腕組で不動の体勢をとる、ちゃっかりバフを皆に掛けてくれていてさすがだぜ。
レントは「アベル殿が怒ると怖いでござるぞ」、と言うがそんな事はないよ。
「カンミが錯乱している噂は諸君も知る事だろう。アルマは俺に助けが欲しいと言っていた。
応さ救うとも! 必ず助けるとも! 錯乱した王とともに死ぬか。投降し残りの命を新しいエワードに尽くすかはお前たちが決めろ。」
俺のわざと演技を込めた言葉を聞いて、敵はガシャガシャと武器を地面に落として投降する。
【情報部門】が調べたところ、徴兵された農民で騎士でも貴族でもない一般人だ。
だから自分の生活が一番であり、王族への忠誠はそれなり程度でしかない。
投降した人間は俺の〈空間移動〉を使い、トウ・ダーラ国の捕虜スペースに収容する。もちろん戦場外だ。
この後3つ数えるが投降する者はいなかった。
「よぅし戦争開始だ! みんなフォーメーションAで行くぜ!」
「「フォ、フォーメーション、A!?」」
「アベルの口から出まかせですよ、ヴォルデウスとレンタロウは騙されてはいけません」
「わ、私はちゃんとわかってたぜ」
セーナよ本当かい?
鞘から剣を抜き、俺の合図で【永夜の夜明け】とエワード軍はぶつかった
▽
俺に突き出される槍をルーは杖で触れて異空間に流す、その瞬間を見逃さず、俺は敵を切り倒す。
「ルーありがとう」
「いいえ、アベルの為ですからお安い御用です」
「みんないいか? 前方を意図して開けるから各自で対応してくれ」
俺達はセーナが剣を〈刀剣操作〉で回転する丸ノコの様に飛ばす、その、円の内側にいる。
敵は強力な回転を突破できずにいるがセーナが言うように、わざと回転が緩い部分から円の中へ侵入してくるのだ。
来る方角がわかっているので半ば作業のように敵を倒す俺達。
動きが乱れることはなく、サブの4人が勇者に合わせて最適の動きをとる【永夜の夜明けの得意技】、これぞ、フォーメーションAだ!
いや嘘だけどね。
この戦法は5人で軍勢と戦う、うちに自然と身についていた。
敵を大技で吹き飛ばしてもいいが、そればかりだと習慣になってしまいそうで怖い、例えるとシューティングで敵の球をよけずにボムばかり使う感じ。
どれだけやばいかがわかるだろう。
敵の球がよけれなくなりました、は嫌なのだ。
五千人は倒したかな? 予定通りに次へ行くか。
俺の〈空間移動〉で【永夜の夜明けは】トウ・ダーラ軍陣地の後方に転移する。
今回の戦は兵士と兵器の実用性ならびに、その有用性を見るのが目的だからだ。
幹部にも出てもらうが、先に兵士達の強さを確かめたいという話。
アンダルシアが炎刀アベルを抜き兵士へ号令をかける。
兵士は鬨の声を上げて、敵へと駆けていく。
圧倒的じゃないか我が軍は。
レントやセーナそれとハジメに近い動きを兵士が見せる。四季の声に導かれて、動きの訓練を続けた甲斐があったね。
攻撃は聖剣兵器を使い密集している敵軍は、『エンデ・ジエンド』を喰らい穴だらけになっていく。
なお敵兵士の技は無効化されている。
その姿は頼もしいの一言だね。
うちの改良した聖剣兵器は、『エンデ・ジエンド』と『レスクレーシオ・シュート』の両方を撃てるのだ。
もちろん使い続けるとマナを吸収する休眠状態に入るが、マナが貯まれば二つの奥義をうてるようになっている。
説明で話がそれたがエワードの兵士が聖剣で放つ『エンデ・ジエンド』は、うちの兵士の『レスクレーシオ・シュート』で跳ね返されて、エワードの兵士は何もできなくされている。
焦れた敵が数体のゴーレムを出すが、大きさが普通じゃない。ミラルカの【魔王の鎧】の最大数50メートル級の大きさである。
ちょうどいい的が来てくれた、と思う俺。
ゴーレムを指さし〈彼ら〉に命令する
「魔王タイセイの権限により『全飛行船をゴーレムシップ状態へ移行』。目前のゴーレムへ目掛けて、ななつの【大魔法砲】を撃て」
戦場に機械音声が響く。
「魔力充填開始。残り2秒1……【大魔法砲】発射!!」
ゴッーーードォン。
大音量で発射される大魔法砲の威力は、大きいだけのゴーレムをあとかたもなく消滅させた
クーデターのときもそうでしたが、敵へ投降勧告する時アベルは芝居がかった口調で話します。
エワード軍の投降する者は農民ばかりです、投降せずにアベルと戦うのは王国の騎士や貴族といった連中です。
もっとも貴族は、義務で参加しているので死ぬ氣はありませんが、死ぬと思います
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