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12話 魔王城御前試合

「大番狂わせだあ――っ。この状況をだれが予想したでありましょう。サポート種の白いゴブリンが優勢に試合を進めます、聖剣使いベーレ選手を下しソンクウ選手が決勝へ躍り出ました――」


【レベルが上がり神々からの祝福を授けます ちからまもりすばやさが100上昇 体力魔法力が100上昇しました。】

 

 あの中央都市でのイザコザから二日目。

 俺は魔王城の武闘大会に出場している。

 正直いい大会だ。

 魔王の開催だけあって国中、いや諸外国からもレベルの高いつわものが出場してる。

 それでも負ける氣がしないんだよなぁ。

 弟たちが出ていれば勝負になったやもしれんが。


「ちゃんと決勝まで上がってきたな。たかがサポート種がラッキーを自分の実力と勘違いせぬように、あの時の借りを返してくれるわ」


 試合後、城の通路で魔王将ゲシィに話しかけられた。

 あのねラッキーとか言ってるけど自分で『借り(じつりょくであなたにまけました)』とみとめたんだぞ。

「馬鹿なのか」と目の前の大馬鹿に包み隠さず伝えてあげた。


「貴様いいかかならず殺してやる、生きて舞台から降りられると思うなよ」


 こめかみに青筋をピクピクと立てたバカは普段の我とウヌといった演技も忘れてるようだった。


「じょーとーだよ。マヌケいーっだ」


 俺は大人でも体は十歳の子供なのだ。

 精神年齢低いやつには子供の対応で十分だ。

 そう思いみっともない返しをしてしまう。


「いまの魔王将だよね」


「あんな挑発大兄貴らしくないっすよ。そもそもあんな小物眼中にないでしょうに」


 遠巻きに応援してた弟二人がやってきた。

 この二人も今や俺に近い実力を持ちゲシィクラスなら相手にならないほどの実力を秘めている。


「まあね、俺の生きた時代にもあんなのがいたな。でもさ長年すべての種族を支配してきた魔族だけあって間違ってもあんな小物が魔王将なんて地位に就くことはなかったんだけどな。良くも悪くも平和になったってことだね」


 ともかく次が決勝戦、さっきのゲシィを下せば優勝だ。





 今朝、うちの玄関まで豪奢な馬車が止まり、カールさん。

 御者なのだが、主人であるゲシィの命令でわざわざ俺達というより俺を迎えに来たらしい。


 高速馬車により目的地までほんの一時間ほどでつくことができた。

 その途中。


「もしも、そうもしもソンクウ様の実力がゲシィ様より上ならば、思う存分叩きのめしてください。思えばかわいそうなお方なのです。負けることでゲシィおぼっちゃまも、きっと目を覚まされるはずです」


 そう頼まれたのだ。

 事情は深くは知らない。

 それでも俺はソンクウをいやアベルを頼り困っている人ならいなやはない。

 なんとかするつもりだ。


 城の広間では今回のお祭(武闘大会)の出場者が集まっている。

 どいつも面構えは精悍で実力者であるのがみてとれる。


「静粛に! トウ・ダーラ国支配者ジクリコウ様ならびにその軍事力たる六魔王将のご来臨であ―る」


 おっと、広場に大きな声が響くと魔王と幹部連中が立ち並ぶ。

 その中に見知った顔いつかの森で戦ったガウ・コーイがいた。

 向こうもこちらに気づき笑顔を向けてくる。

 そうかガウ殿が言ってた強いやつを集める目的とはこの大会の出場者集めだったのか。

 この時はそんな風に思ってた。


「やあ、ゴブリンさんおひさしぶり、相変わらず可愛いね。ゴブリンさんとはもう一度会いたいと思ってたんだが、まさか大会に出てくれてるとはいいタイミングだったよ」


 馬鹿にした感じはなく、さわやかそして軽やかな声でガウ殿が声をかけてきた。


「仕事で変なのと因縁ができちゃってさ。それよりガウ殿が魔王将だったとはね、やたら強いわけだ」


「もうわかってるんだろう? ゲシィを負かしたそうじゃないか、やつは認めてないがね。ゴブリンさんはもう私などの力は越えてるよ、少し前までは私の方が上だったのになあ……」


 たしかに、あえて言わなかったがガウ殿とやっても俺が勝つだろう。

 それはガウとソンクウの両方がわかっていた。


「ゴブリンさん真剣な話だ、この大会の後私と会ってくれないか」


 なんだろう?

 ただそのガウ殿の顔にはいつもの涼しげな余裕はみじんもなく、目は強い懇願を帯びていた。

いつの間にか魔王将よりも強くなっていた三人、大会が終われば王家に深くかかわることになっていきます。面白かった次も読みたいと思われた読者さま




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