139話 アメシスの生涯に悔いなし
アンダルシアではなくタイセイに、直接庇護を求めるのは珍しいケースではないだろうか。
俺のトウ・ダーラは多くの国が【ななつのくに】という一つの枠の中で、共存している他種族国家だ。
ムンドモンドでもかなりの大勢力に発展した【ななつのくに】だが、勢力を広げる方法は二つある。
・【ななつのくに】に戦争を仕掛けた敵国を倒して傘下にする
・【ななつのくに】の噂を聞いて、庇護を求めてくる国を傘下に収める
実にシンプルである。
実はこの庇護を求めてくる国がいっぱい、いたりするのだ。
普段はトウ・ダーラ城で謁見して、俺かアンダルシアが直接見極めて庇護するのかどうかを決める。
ちゃんと自分の目で確認する、大事な事だぜ。
では何が珍しいかと言うと自国ではなく他国で、それも道という往来でどこかの魔族から「国を守ってください」、と言われる事はほとんど無いのだ。
というよりは初めてのケースかもしれない。
まぁ「俺があんたの国を守るよ」などと言った約束の後で
俺は念話でジャグの国である〈ジャック・イーォワ〉にいる【情報部門】の諜報員にジャグの国の、大まかな情報を聞かせてもらったけどね。
それによるとジャグの国は肥沃な土地を持ち、食料を大生産するのに向いていた。
いいね、トウ・ダーラにとって大きなメリットになるじゃないか。
そんな事情もあり、ジャグとの同盟は決して悪い取引ではなかった。
しかし俺が念話したダークエルフのエージェントが
「へ? っはぁータ・タ・タイセイ様」、と他に「ひゃい、はひ」
返事が噛み噛みだ。
彼女が身震いした感じの声が上ずっているのも氣になるぜ。
おそらくは、働かせすぎに違いない。
今度シャッテンのやつに言って休暇を取らせるとしよう。
ちなみにジャグがアンダルシアではなく俺をタイセイと認識しているのは、アメシスとミラルカが同族の魔族に〈白いゴブリン=魔王タイセイ〉と喧伝しているからである。
確かにトウ・ダーラの影武者情報は人間種の国に向けてのものだから俺が怒る必要がない。
▽
俺へジャグが頭を下げてお礼を言うと、彼は馬車に乗りジャグの国へ帰った。
俺はにこやかに手を振りながら
『カラット国駐在の【情報部門】の諜報員へ命令する。ジャグは【ななつのくに】の新しい仲間である。彼の安全は、盟主の名のもとに保証される、情報部門は彼を国に帰るまで護衛し、傷一つつけさせるな。いいね』
『ご命令をお受けいたします、全て我が君の御心のままに』
ジャグの馬車を数名の影が追っていく、新参とは言え俺の仲間へ敵に傷つけさせるわけにはいかないからね。
俺の命令を受けた情報部門のエージェントたちは優秀だ。
しかし飛び出す直前に彼女たちが言う
『タイセイ様へ返事は私が言いたかったのに~』
『早い者勝ちですー。べ~』
『タテハ! シジミ! みっともない所を見せるのはやめなさい。まだ念話がタイセイ様と繋がっているんですよ』
これはいただけない。
諜報員はダークエルフが多いのだが、仲間からかアゲハに似たリアクションしているなーと思う俺。
▽
「こらこら誰のペットだー。道の真中に小妖精三匹置いてよー人間種様が通る邪魔になっているじゃねえか!」
冒険者の男はにやにや下衆な笑みを浮べてそんなセリフを吐く。
あぁ俺と家族をペットと勘違いしているんだな、人間種の国だと、サポート種のゴブリンは情操教育で飼われているから勘違いするのも不思議じゃないけどさ。
「俺の主人はこの人だよ、文句があるなら直接言えば?」
俺は意地悪くアメシスを指さす。この国の支配者だ。
はてさて、一体この冒険者はどうするんでしょうか?
「ソンクー。君この状況を面白がっているでしょぉー」
「一概に大兄貴が悪いとは言えねえぞ。人間種の国と違って魔界〈魔王が支配する領土〉ではゴブリンはペットじゃないからな。魔族の国に来て、常識のないセリフを言うあいつが悪いよ」
ミラルカの意見は当たっているがヒトが言うように、俺をいきなりペット扱いするこいつが悪い。
せいぜいアメシスに可愛がられるんだな。
まぁ俺がお仕置きを超えてやりすぎだと判断すれば、とめてあげるけどね。
するとフローラが
「姫さん駄目だアメシスは姫さんがご主人様扱いしたせいで嬉しさで気絶している」
なんですと!? いまいちアメシスのキャラクターがつかめないね、気絶する要素がどこにあるんだい。
仕方がないので冒険者を一撃で倒して自分で何とかする俺。
現在のトウ・ダーラは巨大な国家群となっておりその頂点が盟主のソンクウです。
一般人からすると雲の上の人なのですけど、本人が散歩で風景とまだ見たこと無いものを見るのが趣味なので割と、外で会うことができます。
お昼は高い確率でレッド・シュリンプ亭にいますから、そこで待つ要人も多いです。
面白かった次も読みたいと思われた読者さま
下の
☆☆☆☆☆を押して
★★★★★に変えてください
彦馬がよろこびます