137話 ディメンションドア
トウ・ダーラにあるゲートの前に、俺とルーが立っている。
今朝ルーに起こされて彼女から研究の成果が出たと聞き、急いで現場にやってくる俺。
そうルーはかねてより研究中だった、移動門の小型化に成功したのだ。
消費魔力は少なくしたのでたとえマナの循環を敵に遮断されたとしても、コレなら個人の魔力で起動できる。
俺のアイデアで折り畳み式にしてあるから〈収納魔法〉に収める事ができる様になった。
ここまでくれば普通のマジックアイテムである。
ルーのやつに「持ち運びまで考えるなんて、さすがはアベルです」と褒められた時は素直に嬉しい。
「マジックアイテムの名前は俺に任せてよ、すごくいい名前がニホンコクの漫画にあったんだ。
そいつをもじって使わせてもらう。
いいかい? その名もどこへもドアだー」
「やめなされ、危険なネーミングはやめなされ」
「アベルさんはドヤってしてますけど、青狸えもんのどこで〇ドアですよね?」
片手を掲げてもう片方の手を腰に置き話す、俺の名付けはニホンコクの異世界人である、ココナとハジメに却下されてしまう。
こんなにふさわしい名前はないと思うんだが、色だってピンクに塗ろうと思ってたし。
まぁ二人が言うならいろいろ危険なのだろう、どこへもドアの名前は取りやめにする俺。
大人として分別があるところを異世界人に見せるとしよう。
それにラーニングで〈空間移動〉の新魔法として習得させてもらったし。
この〈空間移動〉はドア枠を俺の魔力で補っており、その中をくぐるだけで、いつでもどこでも転移ができる。
〈一番近い例えは裏お伽Tの怨爺の技かな。〉
うーんイメージが悪いね。
俺とハジメとココナはこの後話し合い移動扉は正式に【ディメンションドア】と名付けられる。
無難な名前と言わざるを得ないね。
俺的には「ワープゾーン」でどお? そう名前案を出したのだが、異世界人の二人は
「「お、おう」」
と引きながら言い、ハジメが
「<そ、それはまたの機会に>」などと特戦隊隊長が言う喜びのダンスを断る、宇宙の帝王様の発言をするのだった。
どうやら『ワープゾーン』は前にアーガシアが俺に言うように、かっこよすぎる名称らしいぜ。
いいのさ二人にはまだ早かったんだねと思う俺なのだ。
▽
午後からディメンションドアの技術を普及しに、各国を回る視察に出る俺は最初のカラットに到着する。
つれてきたメンバーだが俺〈使い魔のニャハルとニンバス〉、ゲートをドアに変換するためのルー、ケシ太郎である。
ちなみにグォウライへ行く時の様に、全員が【召喚転移の指輪】を装備している。
俺の場合は指輪ではなく両腕に緊箍、言い換えると金の輪をはめている。
この大きさにしたのは中にある魔力が俺にあわせられるからだ。
〈召喚転移〉の他に〈魔力回復〉とか〈大魔法〉などの魔法を多数仕込んだ仕様になっている。
欲を言えばトウ・ダーラの幹部全員に装備させたいのだが、魔力量が大きすぎて装備者の体をむしばむ恐れがあるらしく、今は俺専用の装備になっている。
「こんなのを平然とつけていられる、アベル殿は恐ろしいのぅ」
とはアーガシアのセリフである。
いやいや何故俺から、オウとヒトとサンは無言で離れていくんだい。
アベルちゃんの心が傷つくぞ。
レベルが俺だけずば抜けているとはいえ俺は俺なのだからいくらなんでも化け物のように扱われるのは嫌だぜ。
「ケシ太郎待ってたぜ~~、姫さんもお帰りなさい」
アメシスの九魔王将の一人であるフローラは言いながらケシ太郎へガバッと抱き着いていた。
それにしてもフローラが名前を呼ぶ順番は、最初がケシ太郎とはね。俺はついでか。
「嬢ちゃんよく来たな、宴の準備がしてある。今日は泊まっていけるんだろう?」
「やぁカロットおじさん、急に来て悪いね。泊っていけるよ、というよりはさぁ」
俺は言うや視界の端に移るカラット国の露店で商品を見ている小妖精の夫婦を見る。
父さんと母さんだ。
二人は朝から「カロットのやつが呼んでいるから」とカラットに先回りしていた。
つまりカロットは父さんと母さんをカラットに招く事で、両親を心配する俺の懸念材料を消しておいたのだ。
元グォウライ王の気配りというか手腕は見事だな。
ふわっと俺を包むように抱きしめながら、ニャハルは「ニャアはあれができるように勉強するにゃ」と真剣な顔をしている。
その意気だよニャハル。
「ようこそいらっしゃいました。
【ななつのくに】盟主にして我が君、魔王タイセイ様。
我がカラットは貴女様の国も同然。いくらでも滞在なさってください」
カラット王の出迎えは俺を正面に向かえて、そのアメシスの周りを他の九魔王将が左右に分かれて彩りを添えている。
フローラもちゃっかり居るのは、さすがと思った。
しかし全員が俺に頭を下げる光景は何時までも慣れないのだ。
そう言えばミラルカとヒトが来ているらしいし、のんびりしようかな
アベルが着ける金の腕輪は〈召喚転移〉の指輪と同じルーヴァンとハジメ、アーガシア製です。
指輪は転移だけでなく魔法なら一つ入れておけるのです、アベルの腕輪はアベルが注文してアーガシアが拵えました。
わしでもつけるのは無理じゃとアーガシアは、アベルの体を心配しましたがアベルは平氣でした。あとヒトとミラルカは旅行でカラットに来ています
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