136話 魔王タイセイの裁き~正果~
「あいたた、やっぱり小妖精の体だと全力で戦うのは無理があるね」
「〈何故普段はフルパワーを使わないのか? わかっていますよ。全力を使うと、アベルさんの体そのものが耐えられない〉からですよね」
ナメック星に現れた伝説の、超サイ〇人の説明台詞をありがとうねハジメ。
「にゃあ~マスターごめんにゃ、それとニャアを助けてくれてありがとうだにゃ」
ニャハルは俺と【使い魔の契約】を結び終えた後は、ずーっとこんな感じでベタベタ俺に触れてくる。
頬ずりしたり後ろから抱き着いたりと激しいアプローチは止む事がなく時々頬にだが、ちゅっちゅと軽いキスを受ける。
何だろう? 獣人種の親愛表現にしては行き過ぎている氣がする。
もしかすると俺が最近わかるようになった恋愛感情をニャハルは、俺へ向けているのではないだろうか。
なんてね、俺なんかを好く物好きがあらわれるわけないだろう。
自慢じゃないがアベルは子供の頃は村八部の上をいく、村全部にされていた女だからな。
それだけに俺は俺を好きになってくれる人は真摯に大切にしようと思うのだ。
柄じゃないのはわかっているさ。
「事情があるから許すが、駄猫はアベル殿にくっつきすぎではないか」
「アベル殿の前ですから、我が君の心の広さを見せましょう、ニャハル様の心情を思えばしょうがないですよ」
とガニメデがアーガシアをなだめる。
グォウライ城の玉座に座る俺の周りを固める形でハジメ・ガニメデ・ポウレン・アメシス・ミラルカ・メーレ 〈ついでにシャウ〉という、【ななつのくに】の王が勢ぞろいしている。
その俺達の前にはニャハルに引っ掻かれ顔に傷を作るノルトと、四天王が縛られて地べたに座っている。
理由はもちろん【ななつのくに】の加盟国であるグォウライの乗っ取りを計画した。
言い換えれば【ななつのくに】に宣戦布告をした、愚か者を罰するためである。
普段の勇者アベルなら旅の途中で倒した敵を許す事もあるが、国が絡めばそうはいかない。
理由はひとつ。犯罪者を許すと他国に示しがつかないからだ。
つまりはこうなる。
敵を倒す→罰を与えずに敵を許す→【ななつのくに】は甘い、これならいくらでもつけいれられるぞ。
今は無理でも【ななつのくに】を倒して財と技術とその全てを手にいれてやる。
悪循環を生んでしまうわけだね
だから俺が魔王の内は信賞必罰をしっかり行う。
功績のある者は必ず賞し罪人は必ず罰する、と言う賞罰をちゃんとすればトウ・ダーラが他国の侵略から守られる。
誰にも俺のトウ・ダーラは汚させないぜ。
アンダルシアに統治を任せているとはいえ国を治める魔王として、国民は俺が守るのである。
ノルトの部下は一度殺してから蘇らせた。
死の痛みを味合わせてから国外へ放逐する。シャウは奴らを『悪党窟』へ流刑する事を望んだが、一度罰を与えているので流刑にすれば二重罰になるため俺が「やりすぎだ」と却下する。
〈かの審判の神も『ダブル・ジョパディ』は駄目って言ってたからねハワーッ〉。
まぁ俺の罰を甘いと感じたのかミラルカが
「うちの盟主様が君達のような馬鹿にでも、温情を掛けてくれる優しい人でよかったね。
でもこの『一度だけ』だ。
お前達の行いは【ななつのくに】全ての国を敵に回す侮辱だからね。
次はないぞ、貴様らが同じ行為をした場合トウ・ダーラ魔王が許しても僕が許さない」
「「他の五つの同盟国王もミラルカと同じ意見だ。
今の発言はイフマナス王だけでなく、【ななつのくに】の総意だと肝に命じておけ」」
俺の甘い部分を他の王がフォローしてくれている。
勉強になるなぁ、あれができる様になるぞ。
そう固く心に誓う俺。
四天王とかいう雑魚もといノルトの部下は
「はっはいぃい~~~。お許しをぉ~~〜」
、と情けない悲鳴を上げて逃げて行った。
しかし四天王か。
かっこいい響きだよね? うちでも採用するか。
ちょうど火の魔剣が四振りあるし、何かイベントでも起こすかな?
さてノルトの処罰だけど、俺は怯えるノルトの頭に手を置いて……。
▽
俺はトウ・ダーラへ帰ってきた後城でアンダルシアに、今回のグォウライで起きた事を話している。
アンダルシアは「私の目が行き届いておらず申し訳ございません」、と謝るが彼女のせいではない。
ニャハルのドッペルを置いて安心しきっていた俺の認識の甘さが原因なのだ。
だからさっそく改善策を出して、同じ事件が起こらないようにする俺。
・【情報収集部門】の中に『魔王の目』という部門を創り各国に配置する。
国に不審な動きがあれば、すぐに森四郎→シャッテン→アンダルシア→タイセイの順で報告させる
・【神越えの力】で開発した新術〈暗示無効障壁(精護堅固鏡反衝)〉により、俺の使い魔への暗示はできなくさせる。
もし〈暗示〉だけでなく洗脳系の魔法や技それと術を使った場合、同時に仕込んだカウンター罠の〈アベルの大魔法〉が敵をやっつけるようになっている。
ちなみに精護堅固鏡反衝という名前だが、元々はアベル・スーパーデンジャラス・バリケードというかっこいい名前だったのだがアーガシアが、「アベル殿のネーミングはかっこ良すぎて皆には理解できまいなのじゃ。
うむ。こ、ここはわしが考えよう」、と言われて今の名前になった。
かっこ良過ぎるのがいけないのかなぁ。
とは言えこの術は俺の神越えの力で作ったため他の神越えでも破れない、破るには俺と同等の10万レベルが必要だからである。
「さすがソンクウ様です」
両手を前で合わせながらはにかむ彼女が眩しくて、氣づくと手でアンダルシアの頭を引き寄せてキスする俺。
いかん衝動に駆られてやってしまった。
情けなく顔を背けていると、彼女に再度熱いキスを受けるのだ。
「むぅー。ふぐっ、むんー」
「あぁ我が君よろしいのですね? このまま二人は〈ゴールしてもいいよね?〉ですね」
何が? キス以上に何かあるの? 俺の上着へとアンダルシアの手が伸びた時に
「嬢ちゃん邪魔するぜー」
「姫様この度は助けていただき感謝します」
「ちっ」
カロットとアメシスが部屋に入り、アンダルシアは舌打ちしながら残念そうに手を引っ込める。
助かった~じゃなくて
カロット達はノルトの様子を見に来たのだ。
そのノルトだけど大きなガラス瓶の中には土の上を這う芋虫がいる。
これが罰を受けて芋虫に転生したノルトである。
あの後俺は【神越えの力】でノルトを芋虫に変える罰を与えた。
救済措置としてノルトが芋虫の人生を終えるまでに、反省して真人間になれば人間に戻れるようにしてある。
まぁ同盟国の王達はそれでも「甘い、優しい処罰」なんて言ってたけどさ。
そういえば前世で罪を犯したために来世で正果を得る旅に出た、坊様と石猿、豚、河童が西へ旅する物語が異世界のニホンコク (正しくはガイコク由来だね)にあったな。
何だったっけ?
魔王としてかつてミラルカがする様に敵を罰したアベル、各国の王からするとまだ甘い様子。
国家乗っ取りを考えたノルトでも人間に戻れる道を用意しましたから、そう思われても仕方がないです。
ようやく恋愛感情が芽生えたアベルは「あ、この人俺が好きかもしれない」というレベルにいます。
アベルを好きな人が報われる日は来るのでしょうか
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