135話 グォウライ事変⑤俺のレベルは
俺とニャハルの魔力が高まり、影響を受けて玉座の間の壁や床に亀裂が入る。
それだけでなく床は剝がれて一部が宙に浮かぶ。
さすがに【神越えの実力者】が戦うと周りへの影響が大きいようだ。
「よし」の掛け声と一緒に両手を合わせて玉座の間を包む結界を張る俺。
それからジャッジャと手の形を中指と人差し指を合わせた形で上下左右最後に斜めに動かす。
上半身だけで踊る様に見える所作だが結界を張った後俺とニャハルが戦いやすい様に部屋を異次元に転移させたのだ。
見ればニャハルはノルトを光に変えて自分の中に収める。
「マスターに危害は及ぼせないからにゃ」
ニャハルも戦いの準備ができたようだ。
これでお互いが思い切り戦える状態になった。
▽
俺の念動力を手をクロスさせて耐えるニャハルの体に魔力が絡みつく。
俺の手から伸びた魔力を俺は両手で一氣に引っこ抜く。
ニャハルは空中にあげられた後で地面へ思い切り叩きつけられるのだ。
『アベル流投刃剣』を回収する魔力の応用法だ。
〈親愛なる隣人〇パイダーマンのウェブ〉と同じか、もしくは〈伸縮自在の愛 (バンジー〇ム)〉である。
「ウルル……。ブガァアア!!!」
獣人状態のニャハルの体が膨らんだかと思うと一瞬で奴は50メートルの本性の大化け猫に変化する。
そのまま前足の一撃で押しつぶされる俺。
「にゃ? 分身! おまけに【金縛りの術】付与済みのトラップ分身にゃ」
その通りだー。
本体の俺はニャハルのしっぽに魔力でくっついた後、ロープを使って滑るターザンの要領でニャハルに氣づかれずにしっぽを下って本体に向かっていく。
「ニンバーーース来ーーーい!」
俺の声でニャハルは「アベルはしっぽに居るにゃ」と振り向くが、ガラ空きとなる喉元へ空間から現れた黄金の飛竜【フライング・ニンバス】が噛みつく。
「おのれーたかがワイバーン如きがーにゃん」
うっとうしそうに首を振るニャハルの脳転へ背中を駆けてきた俺は『エンデ・ジ・エンド』を直接叩きつけた!
ズドゥンと重い音が響きニャハルの頭はがくんと落ちて地面に叩きつけられる。
あまりに一方的な戦いに中にいるノルトはイライラしてニャハルにきつく当たる。
「クソ猫の役立たずめ。まともに戦えていないじゃないか。
同じ【神越え】でどうしてクソ猫だけ押し負けるんだ。卑怯だぞ」
ノルトの言う卑怯の意味がわからないが、言えば通ると勘違いしているようだぜ。
「教えてやるよ。ニャハルがやられる理由はノルトお前を体内に入れて守っているからさ、俺が転移したこの異次元は致死性の毒で満たしてあるんだ。
とは言え【神越えとその使い魔】には毒が効かないように設定してある。
だからここへ転移した時にニャハルはマスターのお前を毒で死なさない様に体内に入れたのさ。
体内のノルトを守るために魔力を使い続けているニャハルは弱体化を余儀なくされているんだよ」
まぁ1ターンすれば魔力は全快するが、マナに働きかければの話で、そうさせないように攻撃を緩めないのが俺。
異次元に転移したのはこの状況になると考えて早々に嵌めてやったんだが、自分でもいい策とは思えないね。
悪役がやる策だよ。
俺の頭に〈封神演義の王天〇の『俺って格闘するタイプじゃねんだよなぁ』〉が浮かぶ。
同時にヒトやオウそれから【永夜の夜明け】が言う「嘘ばっかり言って、格闘も得意じゃないか」が浮かんだけどさ。
「にゃマスターはニャアが守るにゃ、あんな奴にマスターへ手は出させないにゃ」
ニャハルは体を回復させながらうわごと。
と言うよりは決意だろうぶつぶつと同じ言葉を繰り返す。
待ってなよ俺がすぐにお前を元に戻してあげるよ。
「なあにがマスターを守るにゃだっ!お前が弱いからこの後俺はタイセイにやられるんだよ!! バカ猫が守れてねえんだよぉ、なにが【神越えの実力者】だ完全にハズレだぜ。
【魔法の暗示】で洗脳するならタイセイの方だったわ!」
「!? マスタァー、にゃんでひどい事言うにゃ。
ニャアは奴にかなわないかもしれないけど、一生懸命戦ってるにゃ。それが戦士に……」
「それが戦士に向ける礼であり言葉か、ノルト貴様は戦いの場にいる事すら場違いなクズだぜ」
ノルトのあんまりな発言に怒りの言葉が出る俺。
俺からニャハルを奪い戦士に向けてはならない言葉で彼女を汚した悪党に怒りが湧く。
「ニャハルすぐに助けてやるからね。ノルト一つ教えてやる【神越え】は目で見れば相手のレベルがわかるんだ。
レベルは大神が12000でニャハルのレベルが50000だ、もっとも【神越え】は全員50000前後のレベルがあるんだけどね。
さてアベルのレベルだけど〈マックスパワーつまり、全力の半分も出せば【神越え】を宇宙のチリにできるんだ〉」
「なん……だと!」
驚くノルトに〈とっておきのダメ押し〉をする俺。
「〈俺のレベルは100000です〉普段はかなり抑えて戦ってるけどさ。
ノルト、お前が〈初めてだよ俺の大切な者をここまでコケにしたお馬鹿さんは〉」
直後に全魔力と闘氣を解放した俺はニャハルの頭に渾身の右正拳を打ち下ろす。
拳はニャハルに傷をつけずに中のノルトだけを撃ち抜いた。
▽
この後異次元から玉座の間に戻ると
ニャハルの中からノルトを取り出し、ニャハルの暗示も解いて彼女を元に戻した。
後で聞いた話によれば俺がレベルを解放した瞬間にムンドモンドが震えるような感じになったとアーガシアとミラルカから聞いた。
アベルが最初から全力を出さなかった理由は、全力だとゴブリンの体が耐えられないからです。ある程度時間が立つと動けなくなります。
それと対神越え相手に同レベルで策を使って、どの程度戦えるかを実験しています
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