132話 グォウライ事変②俺も経験者だからよくわかる
グォウライ国の首都にある冒険者ギルド【キンカビョウ/金華猫】に三人組が滞在している。
猫の獣人と小妖精が二人で、世界的に見るとサポート種を二人連れているのは珍しいと言えるだろう。
だが世界でもトウ・ダーラの小妖精はサポートだけでなく、戦闘もできる事実を知る者は限られている。
ソンクウとセンセキとニャハルは、グォウライの異変を探るために人を待っているのだ。
俺がアーガシアと開発した【召喚転移の指輪】で呼び出した【情報部門】の者が、情報収集を終えて戻るまでギルドで待機している。
どうやら戻ったようだぜ。
ちなみにこの指輪で召喚できるのは一人だけで、召喚者は任意で元の場所に転移で戻れる。
召喚と返還に大きく魔力が必要なために一回しか、使えないのがネックだ。
まぁ魔力を補充してやれば何度も使えるのだが、現在の技術だと専門の設備まで戻らないと魔力の補充ができなかったりする。
今回俺と母さんとニャハルの分を、三個だけ持ってきたので一個を消耗したから、残り二個になる。
つまりあと二回だけお助けキャラを呼べる訳だね。
話を戻して俺が呼んだ『森四郎』が俺に報告する。
「ご報告申し上げます。現在のグォウライ国は、カロット様がドッペルにつけた家臣団が幽閉されています。
同時にカロット様とアヤナ様・ガネット様・アメシス様はグォウライ城の、上方部屋に収監されています」
背筋を正して淀みなく報告を終える、森四郎の手を俺はとる。
「ご苦労様。お前を呼んで良かったよ、まさか俺が知りたい家臣団とカロットおじさんの情報を、二つとも調べて来るとは思っていなかったからさ。
危ない思いもしただろうに、後の歴史家は言うだろうね
『魔王タイセイに過ぎたる者在り、【情報部門】の闇森四郎』てさ」
「はっ! お褒めいただき光栄です。
魔王タイセイ様のための我らですので、使い潰す氣でお声をお掛けください!」
俺の手を解かぬように、細心の注意を払う森四郎の目には涙がうっすらと滲んでいた。
おまけに無表情だが上氣して顔が赤くなっている。
森四郎は無表情に見えて感情はちゃんとあるのだ。
まるで〈初期の花澤三〇/〇ットン〉のように。
「いやぁ~顔と反対に感情豊かなお嬢さんだな。ウチのを氣に入ったのなら嫁に来るかい?」
お母さん急に何を言い出すんですか。
ほらせっかく召喚した森四郎が、「あわわわわ、しっ・失礼します」て帰っちゃったじゃないか。
まぁ知りたい情報は知れたからグォウライ城に乗り込むとするか。
俺は母さんと、この国で面が割れてはまずいので大きな丸いサングラスをつけさせたニャハルを、連れてギルドを出ようとする。
その時
「待ってくれ! あんた達が城に行くなら伝えておきたい情報がある」
三人が振り返ると、なんと死んだ顔で飲んだくれている冒険者のみなさん、それとギルド長が期待の眼差しを向けている。
俺が情報を得るためギルドに入った時の態度とは大違いだ。
余談だが情報を求めてギルドに入る
→飲んだくれて会話にならないし、何か諦めたような雰囲気だ
→仕方がないから森四郎を使って情報を集めさせる。
こういう経緯があった。
森四郎の腕を疑うつもりはないが、彼女はあくまで外部の人間である。
地元民しか知らない情報があるだろう。
俺はカウンターまで行くと
「あんたらは『俺達なら成功する』と期待をかけて声を出したんだろう、話してくれないかい俺は昔からの性分でね。
【困っているなら助けるに否はない】んだ。」
笑顔でそう告げる。
▽
…
…
………よくわかった。
・一年前からニャハルのドッペルは、グォウライに来た外部の魔法使いの影響で暴走している。
それまで家臣と手を取り善政を敷いていた、名君は魔王に変貌する
・魔法使いはドッペルに【神越えの力】で結界を張らせ、自分に逆らう人間はドッペルの力で操り人形に変えたらしい
・こうして国を乗っ取られた民草は、町を巡回する兵士が怖くて外にも出られない状況で 、(多人数でいると国家反逆罪で連行される)
多分そうする事で決起を起こさせなくしているな
・ギルドの冒険者は元グォウライ王カロットと一緒に反乱軍を結成して、ドッペルに立ち向かうが破れる。
カロットおじさんとアメシス達が冒険者をかばい、交換条件で冒険者だけ解放される
・冒険者は根こそぎ立ち上がる氣力をなくして、ギルドで飲んだくれる。
↓〈時代が泣いている〉しかし救世主が登場 (今ここ)
「魔法使いは外から4人の部下を呼び寄せてドッペルが作った、【城を守る結界の宝玉】を与えているのです。
部下達はドッペルの力で装備を一新。おまけに体も強化されていて俺達では敵わないんですよ」
ギルド長は涙を流し拳を握りながら熱く語った。
よほど悔しいのだろう、その体はワナワナと震えている。
とりあえず行動するかな、城の結界を破るのは簡単だけどその魔法使いとやらに正攻法で、絶望を与えてやる。
魔王タイセイの配下に干渉すればどうなるのかを刻み込んでやらないとね。
改めてギルドを出ようとするとギルド長が聞いてくる。
「この国をお救い下さい! ええっとそういえばお名前は」
「アベル。俺はアベル・ジンジャーアップルだ」
「アベルって確か?」
「同名の別人だろう」
周りがザワザワして俺の耳にそんな内容が聞こえる。
大騒ぎになる前にギルドを出よう。
だが
「おいらはカロットのツレの魔王センセキだ。
この獣人の娘はオリジナルのニャハル王でそこの娘は正真正銘の【ななつのくに】の頂点、魔王タイセイだぜ」
俺は時間が止まった様に固まるギルドから足早に出る。
その後ろから「ええ~~~っっ!!」と悲鳴に似た声が木霊する。
▽
母さんに何で正体をばらしたのかを聞くと
「トウ・ダーラは異変に氣付いているのと、彼らは見捨てられていないと、彼らに思わせられるだろ。
絶望の人々には希望が必要なんだよ。
とはいえ、僕はソンクウに許可をもらえばよかったね。すまない」と言う
絶望の人には希望が必要か。
確かにそうなんだよなぁ
カロット達が外部に連絡を取れなかったのはドッペルが神越えの力で妨害しているからです。
実はアベルがしたようにマジックアイテムを使えば外部と連絡ができたんですが、氣づかないままカロットはドッペルと対決することになります
面白かった次も読みたいと思われた読者さま
下の
☆☆☆☆☆を押して
★★★★★に変えてください
彦馬がよろこびます