131話 グォウライ事変①異変
俺はグォウライ国にいる。
実は今回が初めての訪問になるのだが、今まで仲間を迎えに行ったり部門を創ったりと忙しかったので、後回しになっていた。
それというのもグォウライには俺の分身と言える、【使い魔ニャハルのドッペル】を置いているため安心しきっていたのだ。
それがいけなかった。
「母さんは家でゆっくりすればいいのに、父さんが心配するぜ。
グォウライは少し視察して、ニャハルの【影武者ゴーレム】を置いて帰るだけなんだからさ」
「カカのやつは心配性だからな―。おいらはおいらの自慢の娘が、どんな王様をしているのかを見たいだけだよ。
邪魔はしないから氣にしないでくれよな。なにしろ世界中を十魔王将とカロットでまわったが
色々な国で新興勢力【ななつのくに】と、その盟主(魔王)タイセイは噂になっていたからな」
大国すら加盟国にする【ななつのくに】の盟主。トウ・ダーラの魔王タイセイ。
その人柄は穏やかであるが、攻撃する者には容赦がなく
生半可な覚悟と中途半端な攻撃を仕掛ければ、
タイセイの怒りは紅蓮の炎となって愚か者を焼き尽くすんだとか。
なんだか大袈裟に言われている氣がするね。
そもそも俺から攻撃はしていないし(この点はミラルカと一緒、まぁ絶対ではないけど)
戦争を仕掛けてくる国は、魔神と戦う時の邪魔が入らないように滅ぼすか、傘下にしているだけだ。
それだって俺は魔神を倒せば【ななつのくに】には必要ない国だから解放するし、戦死した者は後で全員、【神越えの力】で生き返らせるつもりだ。
だいたいだよ、俺はトウ・ダーラを攻撃するけどトウ・ダーラは俺を攻撃しないでなんて、たわ言が通るわけがない。
言っている奴がいるならそいつは、正氣を失った馬鹿だろう。
〈ギ〇スを使う王子は「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」〉、と言っているがその通りだと思う。
▽
高い城壁に囲まれたグォウライの出入り口の門番に手を上げて通ろうとすると
「グォウライ国は、現在入国禁止となっております」
そう言われ槍で行く手を阻まれる俺。
「にゃんにゃ? おいおい、お前マスターを知らないのかにゃ」
「末端の兵士のようだね。いいかいおいらはカラットのセンセキでこっちはトウ・ダーラのソンクウだ」
「知らんな! それがなんだ、お前らは国外の人間だろう」
ふむ
この兵士がたまたま俺達を知らないのかと周りの兵士を観察するが、どうやら全員がこの兵士と同じ意見のようだ。
「外国から来たけどグォウライ王ニャハルと、面識はあるんだぜ。
俺達は【ななつのくに】のタイセイ様からニャハル王へ贈り物をしに来たんだよ。
【影武者ゴーレム】というんだけど、事前に通達は行っているはずだぜ」
しかし兵士から返ってくる言葉は「知らない」という、俺からすれば違和感しかない物だった。
それどころか兵士はイライラして俺達を攻撃しようとする。
グォウライ含む【ななつのくに】の兵士は全て、トウ・ダーラで訓練を受けさせている。俺の顔を知らない者はいないし、【神越えの実力者】二人と魔王センセキを相手に、勝てないレベルの差を感じ取れない弱卒でもない。
明らかにグォウライで異変が起きている。
兵士は居座る俺に苛立ちながら槍を振り上げる
「いい加減にしろ。国王様からタイセイも贈り物の件も知らぬと念話が届いたぞ。これ以上居座るなら痛い目にあわせてやる」
「うわぁああ~~~、逃げろ~~~」
慌てて逃げだす俺。
兵士の目からは怪しい三人組が企みを見抜かれて逃げた様に映っただろうね。
入口から離れて兵士の目が届かない所まで来た俺と母さんとニャハルは、地面をけって飛びあがり城壁の上に着地する。
それと同時に〈幻影〉を使い、俺達の姿は兵士には見えなくさせる。
さて
「やっぱり異常事態が起きてるみたいだね」
「にゃあ~」
「おいらも鍛えているけど念のために、ソンクウとニャハルに来てもらってよかったぜ。
あの子たちが心配だ」
実は今回グォウライに来たのは視察と【影武者ゴーレム】の他に理由がある。
それと言うのもカロット王と十魔王将の何人がグォウライへ行ったきり、帰ってこなくなったと母さんから相談を受けたのだ。
念話での連絡もつかないため、確認しに行こう、とこう言う訳である。
そして入り口の兵士の様子から異常事態発生と判断したのだ。
潜入は成功したので行動するとしよう、そう考え足を動かした時
「またカカのやつを、心配させちゃうなぁ~~」
母さんが頭をポリと掻きながらつぶやく。
何があっても俺が貴女を守るさ。
あの時と違って俺の手が届く範囲で、貴女を二回も死なせたりはしないよ!
胸の炎は優しい光を放っている、そんな氣がする
トウシンの前世はアベルの母親エラリオです。
エラリオはわざと弱く転生したせいで死んだこともあり、次の転生先のトウシンは強くなるように設定して転生しました
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