123話 コンノ・ココナの生涯①
旅行中だった。
トンネルに入るバスの中で流行りのアニメの呪文を唱えた時、コンノ・ココナは異世界『ニホンコク』からムンドモンドへ召喚された。
どこかの無責任極まりないハイエアと違い、呼び出した神は身寄りのないココナに問う。
すなわち元のニホンコクに戻るのか、このムンドモンドで生きるのかである。
不思議に思うココナは、「帰らせるのならなぜうちを召喚したのか」を聞くと、時たまに手違いで召喚されるケースがあるらしく、タカノ・テイイチの場合はこのケースに当てはまる。
▽
ココナは神から異世界人が授かる天恵とこの世界の知識をもらい、天界からムンドモンドの地面に降り立つ。
帰っても何があるわけでもない彼女は、この世界で楽しく生きようと決めたのである。
小説や物語の知識があったココナは、それらしく生きようと思い、それまで「うち~です」から「私~じゃ」という、博士を意識した言葉で話すようにした。
いわゆるロールプレイと言うやつだ。
金を得るためにギルドで登録して基本ソロでクエストを受けるが、仲間募集など困っているパーティーがいたら積極的に入るようにしたし、向こうから声を掛けられた時は、ココナは信用できないパーティーを除いて入った。
何事も経験だし、面白い話も聞けるからお得なのじゃ。
話で聞く竜王はこちらから会わないように避けた方がよさそうじゃの。
あった途端に「ぐはは竜の敵の人間め! これでも喰らえ」などと、まぁ竜種が人間種と敵対してるのかは知らぬが、バトルになるのは嫌じゃもん。
詳しく聞くと竜王は女性の冒険者、それも剣士を見ると執拗に追いかけてくるらしい。
「bルドノオオオオ」と悲しげな声で鳴くのだとか、誰か探してるのかもしれないのじゃ。
クエストをこなしながら力をつけたココナは独学の限界を感じてルーの魔法学院で魔法を本格的に習う。
在学中に作ったマジック・ガンは大変評判が良く、在校生全員が持つ人氣アイテムになる。
だが、ココナは不満があるらしくさらに攻撃力と強度を高めようと
ココナは思い立つその日のうちに魔法学院を
「学ぶ事は無くなったのじゃ」
「ココナ君。そんな、もう一年学院に居てもいいでしょう」
そう言って、沢山の教師に惜しまれながら卒業した。
ルーヴァンは独自に転生法を開発するために【魔法使いの島】にこもっていたため、二人が出会う事はなかった。
ココナは技術を吸収することに貪欲で次はドワーフの鍛冶技術に目をつける。
ドワーフの親方はヒゲモジャの面倒見が良い職人だ。
娘のミコットは当初ココナを警戒していたがすぐに仲良くなった。
なんだか猫みたいじゃな、と思ったりしなかったり。
ミコットはこの時の体験により人間種に興味を抱き、将来エワ-ド王国へ行く事になるのだがそれは別の話である。
その後ココナは錬金術師から学んだ錬金学と組み合わせて、マジック・ガンを改良した紺野式護身銃と、ムンドモンド初の個人の魔力ではない【マナを動力源】とする。
ゴーレム、紺野式一郎太壱号を開発する。
これは覇権戦争後に【カノン】と【禁忌ゴーレム】と呼ばれる物である。
▽
この頃になるとココナは、はっきりと自分のやりたい事を自覚する。
それはゴーレムを造る事である。
想像して必要なパーツを作り、組み立てて完成させる。
「これじゃ。想像したものを組み立てて創造するゴーレム作りが最高にたまらぬ。わしのロールプレイの博士像にピッタリじゃし。わしは残りの人生を、ゴーレム造りに捧げてくれるわー」
ココナは高らかに草原で大きく宣言した後で、ココナの評判を聞き「弟子にしてください」とついてきた何人かとこの地に『居場所』を作る事にする。
後に【ゴーレムの聖地】と呼ばれるラビレム村はこうして誕生した。
ココナは制限を作らずに人の受け入れをした事で、年々村のゴーレム職人の数は右肩上がりで増え続けており
村ができてから、5年経つ頃には全村人がゴーレム職人となっていた。
ラビレム村は栄え方こそ中規模に見えるが実態は違う。
ココナは開発量産した護身銃と、紺野式ゴーレムを他国へ売却する事で一財産を築いており、この資金はすべて新ゴーレムの開発に使われる。
改良されたゴーレムは取引のある国に再度売却されて新たな金を生む。
ココナはこれを繰り返す事で、ムンドモンド中の金をラビレム村にかき集めており、ココナの総資産は他国で「小さい国の10や20は買える」、と噂されるまでになっていた。
実際の話
宝石産出国のカラットを上回る利潤がココナ製のゴーレムにはあったため、彼女は没する時まで資金で困る事はなかった。
またココナは知らぬ事だが、魔王イフマイータが「はじまりの勇者」に討たれた事でイフマナス周辺の国家はこの機に、魔族を根絶するための兵器を求めていた。
そして目についたのが今までのムンドモンドになかった
超高性能のゴーレムというわけだ。
ただし人間達の『魔族根絶の企み』は、イフマイータの【孫娘の覚醒】と言う敵対する人間種に、悪夢ともいえる災厄を生み出す事になる。
ココナの生きる時代に、未曾有の大戦争が起きる。
その足音は少しづつ彼女に迫っていた
ココナはアーガシアの噂は聞いてますが、本人が会いに来るまで出会うことはありませんでした。
出会いは最悪です、下手すればココナはそこで死んでたかもしれませんから
現在ではアーガシアはココナを【我が友】と言ってます。 何があったのでしょう