10話 困った人は見過ごせねえよ
「いやいや大兄貴の育成能力って実際すごいもんすよ。こいつら程度じゃ負ける気しねえもん」
「口はいいから手を動かせ、格下と思って気を抜くなよ」
「は~い」
中央都市リペルからの依頼で、近隣の野盗連合二千人をやっつける最中なのだ。
「あたたたた、ほぁたーー!」
ヒト三郎はそうのたまいアベル流の斬撃を飛ばす技を連発する。
ただの作業と化した野盗退治はこうして幕を下ろすのだった。
【レベルが上がり神々からの祝福を授けます ちからまもりすばやさが70上昇 体力魔法力が1000上昇しました。戦闘技術が一定に達しました、これにより未完の奥義をうてるようになります】
リペルで報酬を受け取る時俺達は町の子供に話しかけられる。
「傭兵さんたち、つよそうやっぱり中央の兵隊さんなの?」
「違うよ。俺達は、東のゴブリン村の傭兵さ」
「ふ~ん。そんなに強いから僕は、てっきりお祭りに出るのかと思ったよ」
お祭りって何だい? そう思ったが自分が人間種であった時、人類側に祭りがあったのだ。
魔族にも同じ習慣があってもおかしくないと、納得した。
まあいいや、気を取り直して、
「二人とも、せっかく中央まで出てきたんだ。このままリペルで美味いもんでも食って帰ろうよ」
「オウー」
「おっいいっすねえ」
二人は快諾し俺達は、さっそく飯屋へと向かうのだった。
▽
「お許しください。まだ小さい子供でございます」
「ならぬ子供がしたことは親であるうぬの責任だ! 祭りにそなえて新調したマントに泥がはねたではないか!」
都市の往来が激しい道でこんな一幕が展開されている。
しかし道を行く人々は親子を助けることはなくみな知らんぷりだ。
いや正確に言うと見てはいるのだが、誰もがわが身に災難が降りかからぬようにする。
ある者はうつむき、またある者は親子とは違う方へと顔をそむけ足早に去っていく。
周りから助けられなかった親子から有り金を巻き上げた男は喜色満面に顔をゆがめ歩き出した。
額は禿げ上がり頬骨はごつごつしてお世辞にもかっこいいとは言えない顔。
反面その体は鍛え上げられ、その五体には自信がみなぎっている。
この男こそソンクウたちが住む小魔界トウ・ダーラ国を支配する魔王ジクリコウの軍事力の魔王将のひとりなのである。
その権力は魔王に次ぎ、官憲といえど手を出すことはできない。
すべての魔王将がこの男のように下衆といわけではないのだが。
人の心がみな同じではないように、実力に見合わぬ下等な心。
それがこの男の生き様なのであった。
魔神の分身。
魔王イフマイータが『はじまりの勇者』に討たれて千年がたつ世界は、魔族の国も人間種の国と国交を持つ国々は多く。
法の整備もしっかりとされるように移行している。
しかし前言したように相手は魔王に次ぐ権力者なのだ。
町を守る憲兵たちは目の前の横暴にはがみするほかないのだった。
━━━そんな一幕を目撃した白いゴブリンがいた。
▽
ちょっとしたことに結構時間を喰ってしまった。
オウとヒトには先に行ってろと言っといたけど……。
「兄貴こっちだよ」
オウ次郎が大きく手を降っている。
「すまないね。オウ次郎は店の前で待っててくれたのか気が利くなぁ。ヒトの奴はさきに食ってそうだけどな」
俺はそういうとにひっと意地悪く笑った。
「遅れた理由? 食いながら話すよこの町でもう一仕事していくぞ。俺はそういう性分なんだ。困った人と性根が腐ったくずは、見過ごしちゃあいけねえよ」
そうだ。どんなことでも『仕方がない』で割り切れるのなら、俺は千年前に旅に出ていないし魔王と戦っていない。
飯屋レッドシュリンプ亭に入るとヒトの奴がたのんだ料理がずらーっと並び当人は手を付けていない。
俺を待っていてくれたみたいだ。
「兄貴おつかれさまです。大兄貴遅いっすよ何してたんすか? どうせ俺が先に手を付けてるとか思ってたんでしょ?」
「俺はそんな小さい女じゃないぞ(するどい)。ちょっとした野暮用でなオウには話したけどめし食ったらもう一仕事していくぜ」
弟も俺の様子に気が付いたようだった。
「へえー、姉ちゃんを怒らせるなんてよ。どんな悪党だよ」
「人を困らせる馬鹿だよ。久しぶりに火が付いた気分だぜ」
「姉さんおこると怖いからなあ。人死にになりそうだったら止めるからね」
外では見せない、プライベートでの様相を見せながら三人は料理を平らげる。
好物のエビフライを口に入れた俺は特に顔をほころばせている。
「でも相手は魔王将だろ? 姉ちゃんの今の立場でいえば雲の上の人じゃん。手ぇだして大丈夫なの」
「ヒト三郎君愚問だぜ。そんなことを気にしていたら俺は『はじまりの勇者』なんてよばれてねーぜ(フンス)」
「オウー」
「そうでした、そうでした」
両親にも話はしていないのだが弟二人には、こっそり俺の前世と転生のことを話している。
発端はヒトの奴がゴブリンなのに、何で王家流が使えるのか? それとアベル流ってなんだよとしつこく聞いてきたからだ。
根負けしたのである。
俺の出自を聞いた二人は驚き、ヒトなんかは両手をあげてガッツポーズまでしていた。
その際の、
「一緒にいれば成功確実じゃん、俺のサクセスストーーリーー万歳!」
という叫びとそれを聞いたオウ次郎のドン引きした顔は忘れられそうもない。
困った人話見過ごせない、この性格はアベルの最初の出会いに起因してます。うん意味不明ですね
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